プジョー 2008 DKR16は重心が低くワイドで、よりパワフル。重量配分が向上されたことで、前年型よりもドライビングがしやすくなっている。これらすべての要素が、ここまでの今回のダカールラリーで比類のないパフォーマンスを生み出している。
過去11勝と最もダカールで成功を収めたドライバーであるペテランセルは「これまで見たなかで、最も注目に値する変化だ」と語る。「このマシンは、昨年のマシンと比べることはできない。あらゆる点において、改良が施されている。今回のラリーが始まる前から昨年のマシンよりもコンペティティブであることは分かっていたが、実際に始まってみて、その強さはうれしいサプライズだった」今回のダカールに挑むまで、ローブは昨年のマシンでモロッコでテストを行ったほかは実戦を1回経験しただけで、比較できる要素はあまり持ち合わせていない。しかし、ダカールに来ると、ローブは経験が少ないにもかかわらず、すぐにペースをつかんだ。「多くのステージがWRCで走ってきた道と性格が似ており、そのことに助けられているのは事実だ」とローブ。「しかし、ラリーをリードするとはまったく予想していなかった。それよりも、今回は学ぶことが最優先。経験豊富な人々に囲まれて、本当に幸運だ。来週は、ラリーステージはかなり性格が変わってくるので、間違いなく自分にとってはよりトリッキーになるだろう」
その経験豊富なスタッフのひとりが、カルロス・サインツだ。53歳の今でもその速さにかげりはなく、競技前半でもステージタイム、区間タイムで痛快な結果を残している。「ここまでは良かったが、ラリーが終わるまでは結果を語ることはできない」と語るサインツは2010年にダカールを制している。「速さがあることは明らかだが、ダカールで最も重要な側面は安定感。その意味では、我々もまだマシンにトラブルを抱えている。この部分に関しては、まだやるべきことが残っている。それに、ダカールの2週目はとてもタフだ。まだ我々は、最も過酷な区間に行き着いてはいないのだ」
2輪部門で5回ダカールを制しているデプレも、4輪部門ではローブ同様、修業中の身。しかし、その成長は明らかで、ステージ5でターボトラブルに見舞われるまではトップ5でフィニッシュしていた。「トラブルを抱えたことは残念だったが、新型のマシンでは起こり得ること」とデプレ。「自分たちのペースにはとても満足しているし、特に昨年と比較すれば格段に成長できている。バイクから4輪へのスイッチは時間がかかること分かっていたが、今はその手応えをしっかりと感じている」
すべてのクルーは、ここまでの成果には誇りを持っていいだろう。しかし、この先には最大の難関が待ち受けていることも覚悟している。チーム代表のブルーノ・ファミンは指摘する。「1週目は、とてもポジティブな内容になったと言えるだろう」とファミン。「まず第一に、4台すべてが競技を続行している点だ。うち3台はトップ3を独占しており、プロローグ以外のすべてのレグでステージ勝利を挙げている。そして1-2フィニッシュ、さらには1-2-3フィニッシュも達成している」
「プジョー 2008 DKRの戦闘力を披露するという我々の第一の目標は、達成された。ここからは、次の目標を目指していく。できる限り多くのマシンをフィニッシュさせることだ。そのためには、大きなタイムロスにつながりかねないトラブルに対処しなくてはならない。シリル・デプレのマシンでは、1時間以上もロスを喫した。さらに、ラリーの後半は様相が一変する。ギャップはかなり大きくなるし、サンドでスタックしたりナビゲーションミスのリスクも高まる。いま築いているアドバンテージでさえ、もろいものだ。だから、自分たちのプランに専念し、ひとつひとつのステージをクリアしていくのみだ」