アドリアン・フルモーは、開幕が目前に迫ったWRC最終戦ラリージャパン(ターマック)に、今季初めてラリー1で参戦する。今季は英国ラリー選手権でタイトル獲得に邁進し目標を達成したことが、ラリー1マシンでの活躍、ひいてはラリー1マシンでの参戦復帰ににつながると考えているようだ。
ラリー1マシンで苦戦した2022年はトップ10フィニッシュが3回に留まったフルモーは年末にラリー1のシートを失ったが、2023年はそのままMスポーツに残り、フォード・フィエスタ・ラリー2で英国ラリー選手権とWRC7戦でWRC2部門を戦った。英国選手権では、参戦した5戦すべてで勝利しての圧勝でタイトルを獲得している。
WRC2では、サルディニアで部門首位につけていたが最終ステージでクラッシュ。しかし、フィンランドではポディウムに上がった。セントラルヨーロピアンでは改良版のフィエスタ・ラリー2で参戦し、WRC2のポイント対象にはノミネートしなかったが、ラリー2マシン勢最上位でのフィニッシュを飾っている。
Mスポーツ・フォードで再びラリー1マシンでの参戦チャンスをつかんだ28歳のフルモーは、この機会を棒に振らないと決意を固めている。
「今年の初めに聞かれていたら、ラリー1に戻るのはいい選択だとは思わないと答えていただろうね」とフルモーは語る。
「でも今なら、もちろんイエスだと答えるよ。本当にポジティブな状態。すべてを高められたいいシーズンになった。自分のペース、ペースノート、それ以外の周辺のことすべてだ。ラリーへのアプローチに関しても、体力的にも精神的にも、すべてが成長できた。とても充実している」
ピエール‐ルイ・ルーベに替わってラリー1マシンでラリージャパンに参戦するという連絡は、マルコム・ウィルソン自ら電話で伝えたという。
「マルコムが電話をかけてきて、今シーズンの活躍を讚えてくれた。そしてジャパンでフォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1に乗ってほしいと言ってくれたんだ」とフルモー。
「いいシーズンを過ごしたご褒美のようなもの。本当に、本当にうれしかったよ。最高の機会だが、ラリー前にテストをする機会がないので大きなチャレンジになる。このラリーに出るのも初めてだが、楽しんで、いい形でシーズンを終えたい」
一方、Mスポーツ・フォードは第11戦ラリーチリの直後にオィット・タナックのチーム離脱が発表されており、フルモーは、ラリージャパンの参戦をラリー1のシート獲得につなげたいと考えているようだ。2022年の失速と総合成績の不振を考えれば、ナンバー1ドライバー相当の選択肢になることは難しいが、フルモーのポテンシャルはまだほとんど発揮されていない。
「ラリー1に戻ることが、今年最初の一番の目標だった」とフルモー。
「(来年)シートを得ることができるのなら、もちろんそのチャンスをつかみたいが、まだなんの話も固まっていない。そんなことが起こることを望んでいるけれどね。自分は、昨年よりも間違いなく成長している。2022年の序盤は、まだ尚早だったかもしれないが、今はこれまでにないほどラリー1をドライブするのにふさわしい状態になっていると言えるよ」
ラリージャパンでアレックス・コリアと組むフルモーは、今回が日本を訪れるのも初めて。イベントに関する知識は乏しく、最近はラリー1をドライブした時間も少ないことから、プレッシャーがかかることはないだろうという見方には賛成していない。
「ラリー1で参戦することになれば、みんながその実力に注目することになるのだから、もちろんそれはプレッシャーになる。でも、しっかり受け止めたい。ほかのみんなは1年を通してラリー1で走っているのに対して、自分は最後の一戦だけだし、このラリーのことも詳しくは知らない。自分ではコントロールのしようがない要素が多すぎるから、本当にパフォーマンスが出せるかどうかは分からない。もちろん、必死に努力するが、ほかのみんなと比較できるようなパフォーマンスを出せというのは、彼らに敬意を示していないことになる」
Mスポーツ・フォードのチーム代表、リチャード・ミルナーは、フルモーとコリアの復帰に「すごくうれしいよ。またラリー1に乗るチャンスをつかむのにふさわしいと思う」と語っている。
(Graham Lister)