ダカール2024は1月19日、サウジアラビアのヤンブーでフィニッシュを迎え、カルロス・サインツ(アウディRS Q e-tron E2)が優勝。46回目の開催となったダカールの歴史の中で、電動ドライブトレーンのマシンが初めて勝利を飾るという歴史を刻んだ。
現在61歳のベテランであるサインツは、革新的な電気ドライブトレーンと効率的なエネルギー・コンバーターを組み合わせたRS Q e-tron E2の開発においても重要な役割を担ってきた。今回のダカールでは、コ・ドライバーのルーカス・クルスとともに、サウジアラビアを舞台に繰り広げられた2週間にわたる戦いで、身に付けたスキルを存分に発揮し貫禄の走りを披露した。後半は、チーム・アウディ・スポーツのチームメイト、マティアス・エクストロームとステファン・ペテランセルのサポートを受けながら勝利を目指した。
「アウディや、アウディのファン、そして母国の仲間のためにも、最高にうれしい」とサインツ。
「自分にとって、この勝利が持つ意味は大きい。ダカールの勝利は4回目だが、それぞれ違うマシンだった。チームは、ダカールでは初めてとなる大変特別なコンセプトのマシンを開発した。アウディだけが、このリスクを背負う勇気を持っていた。歴史を作ることができて、うれしい。それに、今回は今まで経験した中で最も厳しい大会だった。自分の家族も、アウディファミリーのみんなもここに来ている。自分を信頼して実現させてくれたアウディや、ロルフ・ミクル(アウディ・スポーツ代表)、スベン・クワント(Qモータースポーツ代表)に感謝したい。そして、たくさん支えてくれたマティアス、エミル、ステファン、エドアルドにも感謝している。素晴らしい勝利だ。このクルマは本当に特別。この勝利を楽しみたいし、この先の数週間は自分の将来について考えるつもりだ」
2位には、20年前にこのサインツとダカールで競い合ったグレゴワール・ド・メビウスを父にもつ29歳のギヨーム・ド・メビウス(トヨタ・ハイラックス・オーバードライブ)が入った。サウジアラビアでのダカールで、30歳以下のドライバーがアルティメイトクラスのポディウムに上がるのは、ド・メビウスが初めてだ。
「ポディウムに上がれるなんて、予想したこともなかった。いつも夢に見ていたが、今回の目標には入っていなかった」とド・メビウス。
「2位でフィニッシュにいられるなんて、信じられない気分。チームに感謝しているし、たくさん支えてくれた家族や友人にも感謝を伝えたい」
悲願の初優勝を目指したセバスチャン・ローブ(プロドライブ・ハンター)は3位でのフィニッシュとなり、ダカールではこれで5回目のポディウムとなった。
「15日間、勝利を目指して戦いたかったが、ダカールはいつもサプライズの連続。今回もあちこちでチャンスを逃したので、ポディウムに立ててうれしいよ」とローブ。
「ステージ11では、もう家に帰るしかないと思ったが、ラリーを続けてまたポディウム争いができた。今回、アウディ勢はとても強い戦いをしてラリーを攻略して、3台が揃ってフィニッシュした。正直、彼らに立ち向かえると思えなかったので、何の後悔もない。必死に挑んだし、昨日は2位を逃したが、フィニッシュできたのだから結果としてはそう悪くない」
一方、前回覇者のトヨタ・ガズーレーシング勢には、トヨタGRダカールハイラックスEVO T1Uを駆るドライバーが揃って厳しい大会を経験する形となった。ポディウム圏内につけていたルーカス・モラエスは、前日のステージ11で後退。2009年にダカールを制しているジニール・ドゥビリエと最高峰クラス初挑戦の21歳、セス・キンテロは、2週間の中でクリーンに走ることがなかなかできなかった。
ダカール3連覇を目指したナッサー・アル‐アティヤ(ハンター)は、大会後半は連発するメカニカルトラブルにも苦しめられ、ステージ9の後にリタイアを発表している。
ダカール2024 カー部門 最終結果
1 C.サインツ(アウディRS Q e-tron E2) 48:15:18
2 G.ド・メビウス(トヨタ・ハイラックス・オーバードライブ) +1:20:25
3 S.ローブ(プロドライブ・ハンター) +1:25:12
4 G.シシェリ(トヨタ・ハイラックス・オーバードライブ) +1:35:59
5 M.プロコップ(フォード・ラプター) +2:16:43
6 G.ボッテリル(トヨタGRダカールハイラックスEVO T1U) +2:40:33
7 G.ドゥビリエ(トヨタGRダカールハイラックスEVO T1U) +2:50:26
8 B.バナガス(トヨタ・ハイラックス・オーバードライブ) +2:57:01
ランドクルーザー300GRスポーツで市販車部門に参戦したチームランドクルーザー・トヨタオートボデーは、500号車の三浦昂と501号車のロナルド・バソが1‐2フィニッシュで部門11連覇を飾った。ヤンブーのフィニッシュには、日本からトヨタ車体の木村健取締役・執行役員、本多篤チーム代表もかけつけ、チームメンバー全員と15日間の健闘を讃えあった。
「知っている限りでは一番ハードなダカールラリーだった。それをクリア出来たことは自信になったし、進化も感じられた。これまでは(昨年他界した)ナビのローランに助けられてきたが、今回はちゃんとできたと彼に伝えたい」と三浦は大会を振り返った。
HINO600シリーズで参戦した日野チームスガワラは、トラック部門6位でのフィニッシュを果たし、2019年の9位以来となる一桁順位をマークした。チームにも、フィニッシュには日野自動車脇村誠CTOが駆けつけてチームの健闘を讚えた。
最終ステージでは、走行中にタイヤ空気圧調整装置のエア配管が外れたと語るドライバーの菅原照仁は「修理のため10分くらい停車した。今回の結果は当初の目標どおり。エンプティクオーターでの燃料トラブルは残念だったが、直してからはしっかり走れました」と一定の満足を見せた。