この週末に開催されているWRC開幕戦ラリーモンテカルロを、カレンダーへの昇格を目指しているラリーUSAの主催者チームが視察。凍ったステージやモナコの華やかな景観の中で開催されているWRCラウンドを訪れている。ラリーマネージャーのスチュワート・ウッドが、ラリーUSAのWRC参戦計画についてRALLY PLUSの取材に語った。2026年のWRC開催を目指す候補ラリーは、米国南東部テネシー州チャタヌーガを拠点とする。
ウッドは「WRCの候補イベントとして開催されるラリーの拠点となるのは、チャタヌーガ。豊かな歴史と観光スポットを持つこの街は、WRCの開催都市として申し分ない」と自信を見せる。
「ステージは主にポーク郡の、美しい風景の中で行われる。ステージはテクニカルで低速のグラベルで、距離は10~16マイル(約16〜26km)となる見込み。場所によってはリズミカルな林道があり、コーナーが多いためドライバーとコ・ドライバーにとって試練になるだろう。ほとんどは、近くにある『テイル・オブ・ザ・ドラゴン(Tail of the Dragon)』のグラベル版のような性格。テイル・オブ・ザ・ドラゴンは11マイル(約18km)で300以上のコーナーを持つ有名な峠道だ」
一方、ラリーUSAのディレクター、パトリック・スベルビルケは、WRC初開催の年を明確に約束することはできないとしている。
「カレンダー昇格に至るまでには、一連のステップを踏まなければならない。その中には、2024年6月に3日間にわたるイベントの開催が含まれており、ここでサービスパークとステージの質の高さ、そしてギャラリーステージなどが試される。そして2025年の大会では、観客の収容人数を増やし、ステージを追加する予定だ。必要なステップが完了次第、WRCイベントに向けて活動を続けていく」とスベルビルケは現状を説明してくれた。
2024年6月14〜16日に開催されるテネシー・ラリーUSAは、米国の国内ラリー選手権に相当するアメリカン・ラリーアソシエーション(ARA)の公認イベントだが、地方イベントとなり選手権ポイントの対象にはならない。
ラリーUSAのクラーク・オブ・ザ・コース、アンドリュー・フリックは、WRCが開催されるとすれば、日程は3月くらいになるだろうと語っている。
「WRC開催は、初春になる。大雪の可能性は低いが、道が冷えていて、標高の高い場所では凍ることもあるかもしれない。林道を通しての標高差は、かなり大きい」
WRCイベントの成功のカギを握るのは、支援と財政的なバックアップだ。ウッドは、テネシー州や、テネシー州チャタヌーガとポーク郡の地域観光局が非常に協力的であることに言及した。
「彼らは資金面でも人材の面でも、非常に協力的だ。また、ナッシュビルで開催されるインディカーレース、ミュージック・シティ・グランプリとも素晴らしいパートナーシップを結んでおり、2024年のレースでラリーのデモンストレーションに向けて取り組んでいる」とウッド。
米国では40年近くもWRCラウンドが開催されていないこともあり、主催者は世界有数のモータースポーツを米国に復活させようと意気込んでいる。何が彼らを突き動かしているのか。メディアディレクターのウェスリー・ヒルに聞くと「米国でのWRCラウンドは、1988年以来開催されていない。ラリーUSAは、その状況を変えることを目標にしている」と答えた。
「アメリカ人がテネシーのグラベル路を疾走するラリーカーを見れば、WRCなんて競技は今までどこでやっていたのだろうと不思議に思うことだろう」
(Matt Jelonek)