WRCは5月30日〜6月2日、第6戦ラリーイタリア・サルディニア(グラベル)を迎える。この島で21回目の開催となる今回は、これまでとは違った内容の大会となることで話題を集めている。
主催者のイタリア自動車クラブは、FIAの全面支援と承認を受け、金曜日の午後に競技をスタートし、ステージ走行距離を短縮させるコンパクトなスケジュールを設定した。これは、WRCの魅力と見応えをさらに向上させるための継続的な施策の一環として、トライアル・フォーマットとして将来的にはほかのWRCイベントでも採用される可能性がある。
一方、今シーズンのWRCは、このサルディニアがグラベル7連戦の2戦目となる。今季ここまでの5戦で、2マニュファクチャラーから4人のドライバーが優勝を分けあっているほか、Mスポーツ・フォードもポディウムフィニッシュを2回獲得するなど、混戦模様となっている。
このサルディニアでは、ジュニアWRCも併催。Mスポーツ・ポーランドが製作するフォード・フィエスタ・ラリー3にピレリタイヤを履くワンメイクシリーズには、FIAラリースタードライバーのロメ・ユルゲンソン、テイラー・ギル、ホセ・カパロ、マックス・スマートも登場する。この4人は、FIA加盟の各クラブが主催する選考イベントを通じて、FIAが高く評価する才能発掘ドライバーに選ばれた。厳しいトレーニング・シーズンを経てジュニアWRCに進み、限定的な経験にもかかわらず、その大きな可能性を示し続けている。
サルディニアは、固い地盤にソフトでサンディなグラベルが覆う路面で、砂利掃除役の影響が大きいことが特徴。2ループ目は路面が荒れて、さらに試練となる。高速区間と低速区間が入り交じり、石が掻き出されることも多い。ダストが舞うことも、さらなる挑戦となる。
4WDマシンは、WRC公式サプライヤーのピレリタイヤを履く。ラリー1マシンがサルディニアで使用できるタイヤ本数は、シェイクダウンを含めて24。ピレリはスコーピオンKXのハードとソフトコンパウンドを供給。第1選択肢は、気温が高くドライ用のハードとなり、気温が低く湿ったコンディションではソフトがオプション選択肢となる。
■エントリー状況
ヒョンデ・シェル・モビスWRT:ポイントランキングで首位に立つティエリー・ヌービルはサルディニアでは通算3勝。オィット・タナックとダニ・ソルドも、それぞれ2勝をマークしている。タナックは前戦のポルトガルでは、ヒョンデ復帰後初めてポディウムに上がった。ソルドはサルディニアが、今季2度目のWRC参戦となる。
トヨタ・ガズーレーシングWRT:今季最初に2勝目をマークしたドライバーとなったセバスチャン・オジエが、レギュラードライバーのエルフィン・エバンス、勝田貴元とともにトヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッドをドライブする。
Mスポーツ・フォードWRT:今季ここまでポディウムに2回上がっているアドリアン・フルモーと、グレゴワール・ミュンステールがフォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1をドライブする。
■サポートカテゴリー
多くの台数を集めているWRC2部門は、サルディニアでも41台がエントリー。ヨアン・ロッセル(DGコンペティション、シトロエンC3ラリー2)がランキング首位に立っており、10ポイント差でオリバー・ソルベルグ(トクスポーツWRT、ファビアRSラリー2)、ニコライ・グリアジン(DGコンペティション、シトロエンC3ラリー2)が続いている。ソルベルグは、2004年に父ペターが制したこのイベントに出走するが、WRC2部門のノミネート外での参戦となる。
前戦ポルトガルでトヨタGRヤリス・ラリー2にWRC2初優勝を献上したヤン・ソランス、初めてポディウムに上がったジョシュ・マクリーン(トクスポーツWRT2、ファビアRSラリー2)は、引き続きこの部門にエントリー。ピエール-ルイ・ルーベ(トクスポーツWRT、ファビアRSラリー2)とテーム・スニネン(ヒョンデi20Nラリー2)は、ラリー1マシン経験者の強豪だ。ロベルト・ダプラは、ACIチーム・イタリアの若手育成プログラムの支援を受けて、ジュニアERCからWRC2にステップアップ。今回はシュコダ・ファビア・ラリー2 Evoをドライブする。フォード・フィエスタ・ラリー2勢の筆頭はペペ・ロペス。昨年のWRCチャレンジャー王者、カエタン・カエタノビッチ(ファビアRSラリー2)もエントリーしているほか、モータースポーツ・アイルランド・ラリーアカデミーから参戦する2023年のジュニアWRCチャンピオンのウィリアム・クレイトンは、タイトル獲得の特典を活用し、フォード・フィエスタ・ラリー2をドライブする。
イタリアのマウロ・ミーレは、WRCマスターズカップにノミネートしている。WRC3勢では、ジュバンニ・ロッシ(ルノー・クリオ・ラリー3)がエントリーの筆頭に名を連ねている。
■ラリールート
2023年に拠点となった東岸のオルビアから、今年のサービスパークは北西部のアルゲーロに移った。ルートも、昨年の19SS・320.88kmから比較して、今年は16SS・266.12kmと格段にコンパクトな設定となった。
1988年、1989年にミキ・ビアジオンのコ・ドライバーとしてWRCチャンピオンになったティツィアノ・シビエロが手がけた2024年のルートは、5月31日金曜日現地時間14時33分から競技がスタート。この日は、アルゲーロの北東部を走る2SSを、カステルサルドでのリグループを挟んで2ループする77.82km。いきなりラリー最長となる25.65kmのOsilo-Terguで始まるが、このステージの後半はすべて新しい道を使用する。
6月1日は4SSを2ループする149.00km。午前中にTempio PausaniaとTula Erulaを2回ずつ走行し、パッターダでのタイヤフィッティングゾーンを挟んで、午後はMonte LernoとCoiluna-Loelleを2ループする。Monte Lernoには、有名なミッキージャンプも登場するが、ステージ全体の距離は短縮されている。
最終日の日曜日は、2SSを2ループする39.30kmとかなり短い設定。Sassari-Argentiera(7.10km)の2回目の走行がパワーステージに指定されている。
■ラリーデータ
開催日:2024年5月30日〜6月2日
サービスパーク設置場所:アルゲーロ
総走行距離:1035.46km
総ステージ走行距離:266.12km(SS比率25.70%)
総SS数:16
■開催選手権
WRC
WRC2
WRC3
JWRC
■マニュファクチャラーズ選手権ノミネートドライバー
[トヨタ・ガズーレーシングWRT]
エルフィン・エバンス(#33)
セバスチャン・オジエ(#17)
勝田貴元(#18)
[ヒョンデ・シェル・モビスWRT]
ティエリー・ヌービル(#11)
オィット・タナック(#8)
ダニ・ソルド(#6)
[Mスポーツ・フォードWRT]
アドリアン・フルモー(#16)
グレゴワール・ミュンステール(#13)
■2023年ラリーイタリア・サルディニア最終結果
1 T.ヌービル/M.ウィダグ(ヒョンデi20Nラリー1ハイブリッド)3:40:01.4
2 E.ラッピ/J.フェルム(ヒョンデi20Nラリー1ハイブリッド)+33.0
3 K.ロバンペラ/J.ハルットゥネン(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド)+1:55.3
■近年のウイナー
2023年 T.ヌービル(ヒョンデi20Nラリー1ハイブリッド)
2022年 O.タナック(ヒョンデi20Nラリー1ハイブリッド)
2021年 S.オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)
2020年 D.ソルド(ヒョンデi20クーペWRC)
2019年 D.ソルド(ヒョンデi20クーペWRC)