WRC第12戦セントラルヨーロピアンラリー(ドイツ/チェコ/オーストリア、ターマック)は、10月20日、SS15〜SS18の走行が行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamはエルフィン・エバンス/スコット・マーティンが2位でフィニッシュ。勝田貴元/アーロン・ジョンストンはパワーステージで勝利を飾ったほか、スーパーサンデーでもトップに立ってポイントを加算。トヨタは、マニュファクチャラーズタイトル連覇の可能性を最終戦ラリージャパンまで残した。一方、首位でこの日を迎えていたセバスチャン・オジエ/バンサン・ランデがSS17で、6番手につけていたサミ・パヤリ/エンニ・マルコネンはSS15で、それぞれラリーリタイアとなっている。
(以下、チームリリース)
WRC 第12戦セントラル・ヨーロピアン・ラリー デイ4
エバンスが総合2位でフィニッシュ
勝田はスーパーサンデーを制し総合4位を獲得
10月20日(日)、2024年FIA世界ラリー選手権(WRC)第12戦「セントラル・ヨーロピアン・ラリー」の最終日デイ4が行われ、TOYOTA GAZOO Racing World Rally Teamのエルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(GR YARIS Rally1 HYBRID 33号車)が総合2位で、勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)が総合4位でフィニッシュしました。なお、セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(17号車)と、サミ・パヤリ/エンニ・マルコネン組(5号車)は、リタイアとなりました。
セントラル・ヨーロピアン・ラリーの最終日デイ4は、ドイツ南東部バイエルン州カルプフハムのサービスパークを起点に、ドイツ国内で2本のステージを、ミッドデイサービスやリモートサービスを挟むことなく各2回走行。4本のステージの合計距離は54.08kmでした。デイ4のステージは全体的にドライコンディションでしたが、いくつかのコーナーはインカットにより掻き出された土や泥が舗装路面に広がり、非常に滑りやすい状態でした。
デイ3終了時点で、総合2位のオィット・タナック(ヒョンデ)に5.2秒差をつけて首位に立っていたオジエは、デイ4オープニングのSS15でコースオフ。10秒程度を失い総合2位に後退しました。続くSS16では勝田が今大会2本目となるベストタイムを記録し、オジエは1.5秒差の2番手タイムに。その結果、タナックとの差を1.5秒に縮めました。オジエは逆転を期してSS17に挑みましたが、泥で滑りやすくなっていたコーナーでクルマが大きくスライドし、木に激突。残念ながらリタイアとなってしまいました。
そのSS17では、エバンスがベストタイムを記録し、総合2位に順位を上げました。また、3番手タイムの勝田はSS17で総合4位にポジションをアップ。そして迎えた最終の「パワーステージ」、SS18で勝田は大会3本目となるベストタイムを刻み、最大となる5ポイントのボーナスを獲得しました。さらに、日曜日のみの合計ステージタイムによって競われる「スーパーサンデー」も制し7ポイントを追加。日曜日に得られる最大ポイント、12を手にしました。一方、エバンスはパワーステージを3番手タイムで走破。スーパーサンデーでも勝田に次ぐ2位となり、前戦ラリー・チリ・ビオビオに続く、今シーズン5回目の総合2位でセントラル・ヨーロピアン・ラリーを締めくくりました。
エバンスと勝田の貢献により、TGR-WRTはマニュファクチャラー選手権でメインライバルのヒョンデよりも、2ポイント多く獲得することに成功。ポイント差を17から15に縮め、チームと勝田にとってのホームイベントである次戦ラリージャパンに、逆転タイトルの可能性を残しました。
今回がGR YARIS Rally1 HYBRIDでのターマックラリー初戦だったパヤリは、デイ3終了時点で勝田に次ぐ総合6位につけていました。しかし、残念ながらデイ4最初のSS15でコースオフを喫し、リタイアとなりました。次戦ラリージャパンでパヤリは、当初の予定通りGR Yaris rally2でWRC2カテゴリーに出場します。そして、2位以内でフィニッシュすれば、2024年のWRC2タイトルを手にすることができます。
なお、今大会にGR Yaris rally2で出場したチェコのドライバー、フィリップ・マレス(ACCRトヨタ・ドラーク)はWRC2カテゴリー2位、総合8位でフィニッシュしました。
ヤリ-マティ・ラトバラ (チーム代表)
エルフィンと貴元が、特に今日、非常に素晴らしい結果を残してくれたことを嬉しく思います。彼らの貢献によりチームはチャンピオンシップ争いに残ることができました。当然ながら、セブは非常に落胆していました。彼は今回も非常に速かっただけに、不運なアクシデントに見舞われたのは非常に残念でした。それによって多くのマニュファクチャラーズポイントを失うかもしれないと覚悟しましたが、最終的には貴元とエルフィンのおかげでライバルとの差を2ポイント縮めることができました。次戦ラリージャパンで1-2フィニッシュし、日曜日にフルポイントを獲得すればタイトルを守ることができるので、全ては我々次第です。今大会では、特に貴元の活躍を嬉しく思います。休養を経てカムバックした彼は我々の期待通りに戦ってくれました。必要な時には慎重に走って自信をつけ、日曜日はごく自然にパフォーマンスを発揮しました。一方、サミに関してはターマックでパフォーマンスは常に進化していました。今朝はほんの少しのミスにより大きな代償を支払うことになりましたが、それも学習プロセスの一部ですし、彼の次の目標は日本でWRC2のタイトルを争うことです。
エルフィン・エバンス (GR YARIS Rally1 HYBRID 33号車)
私たちにとっては決して悪い週末ではありませんでした。スコットと私はこの週末もっとも多くのポイントを獲得したクルーなので、それについてはある程度満足するべきでしょうし、チームにとっても良いことです。たしかに、ステージで常に素晴らしいタイムを記録していたわけではありませんが、力強く戦えた時もありましたし、全体的にはかなり安定していた週末だと思います。所々で小さなミスはありましたが、最終的に総合2位でフィニッシュできたのですから、それなりに満足すべき結果だといえます。マニュファクチャラーズポイントに関しては、今日は残念ながら少し取り逃してしまいましたが、それでも決して悪くはないですし、少なくともまだ戦いは続いています。ラリージャパンに向けては全てがオープンな状態にあります。
セバスチャン・オジエ (GR YARIS Rally1 HYBRID 17号車)
今日の出来事に関して、チームに本当に申し訳なく思っています。最後から2本目のステージで、木々の下を通過する最初のコーナーの路面は我々の予想以上に泥だらけでした。その結果アンダーステアを出してしまい、コーナーアウト側の木にぶつかってしまいました。ルートノートクルーは我々よりも前にそのステージを走るチャンスがなかったため、その情報は私のペースノートに記されていませんでした。しかし、それは言い訳にはなりません。なぜならステアリングを握っていたのは私自身であり、他のドライバーたちは同じミスを犯さなかったからです。今は非常にがっかりしています。この週末我々はいい結果を残せたはずなので、特にチームに対しては申し訳ない気持ちです。この3戦は、間違いなく速さはありましたが、それを結果に繋げることができませんでした。エルフィンと貴元のお陰でチャンピオンシップを獲得できるチャンスはまだあるので、ラリージャパンでも自分たちのベストを尽くして戦います。
勝田 貴元 (GR YARIS Rally1 HYBRID 18号車)
この2ヶ月間、苦しい時もチームが一生懸命サポートしてくれたことに感謝しています。非常に厳しいシーズンを過ごしてきたので、ここでいい仕事をしなければならないというプレッシャーはありましたが、スーパーサンデーとパワーステージでフルポイントを獲得し、総合4位でフィニッシュすることができたので良かったです。ドライビングもクルマのフィーリングもとても楽しめるものだったので、このような結果でラリーを終えることができて本当に嬉しいです。まだあと1戦、ラリージャパンが残っているので、もちろんチームとともに全力で臨みます。私たちは決してあきらめないですし、プッシュし続けます。
サミ・パヤリ (GR YARIS Rally1 HYBRID 5号車)
今日最初のステージのコーナーで少しワイドになってコースを外れ、残念ながらいとも簡単に横転してしまいましたが、それは自分のミスです。悔しいですし、チームに申し訳なく思います。この経験から学び、何が起こったのかを理解して、今後もっと改善しなければなりません。しかし、そこまでは自分たちにとって本当に素晴らしいものでした。毎日とてもクリーンな走りができていましたし、週末を通して確実な進歩がありました。クルマのフィーリングはとても良く、いくつかのステージでは良いタイムを記録しましたし、そして何よりも、多くのことを学びました。Rally1カーで出場した3戦は本当に素晴らしく、自分にとっては夢が叶ったようなものでしたし、とても楽しかったです。そして今は、ラリージャパンのWRC2でベストを尽くすことを楽しみにしています。
セントラル・ヨーロピアン・ラリーの結果
1 オィット・タナック/マルティン・ヤルヴェオヤ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) 2h37m34.6s
2 エルフィン・エバンス/スコット・マーティン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +7.0s
3 ティエリー・ヌービル/マーティン・ヴィーデガ (ヒョンデ i20 N Rally1 HYBRID) +39.8s
4 勝田 貴元/アーロン・ジョンストン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID) +1m21.0s
5 グレゴワール・ミュンスター/ルイス・ルッカ (フォード Puma Rally1 HYBRID) +3m41.9s
6 ニコライ・グリアジン/コンスタンティン・アレクサンドロフ (シトロエン C3 Rally2) +9m17.6s
7 オリバー・ソルベルグ/エリオット・エドモンドソン (シュコダ Fabia RS Rally2) +9m34.1s
8 フィリップ・マレス/ラドヴァン・ブチャ (トヨタ GR Yaris rally2) +11m41.5s
9 ミコ・マルチャック/シュイモン・ゴスポダルチク (シュコダ Fabia RS Rally2) +12m10.6s
10 カイエタン・カイエタノビッチ/マチェイ・シュチェパニャク (シュコダ Fabia RS Rally2) +12m20.3s
R セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID)
R サミ・パヤリ/エンニ・マルコネン (トヨタ GR YARIS Rally1 HYBRID)
(現地時間10月20日17時30分時点のリザルトです。最新リザルトはwww.wrc.comをご確認下さい。)
第12戦 終了時点でのドライバー選手権順位
1 ティエリー・ヌービル 225ポイント
2 オィット・タナック 200ポイント
3 エルフィン・エバンス 185ポイント
4 セバスチャン・オジエ 166ポイント
5 アドリアン・フォルモ− 146ポイント
6 カッレ・ロバンペラ 114ポイント
7 勝田 貴元 102ポイント
8 ダニ・ソルド 44ポイント
9 サミ・パヤリ 41ポイント
10 グレゴワール・ミュンスター 37ポイント
第12戦 終了時点でのマニュファクチャラー選手権順位
1 Hyundai Shell Mobis World Rally Team 526ポイント
2 TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team 511ポイント
3 M-Sport Ford World Rally Team 267ポイント
次回のイベント情報
WRC次戦は、11月21日(木)から24日(日)にかけて、日本の中部地方で開催されるシリーズ最終戦「ラリージャパン」です。WRCカレンダー復帰3年目となる日本ラウンドは、今年も愛知県豊田市の「トヨタスタジアム」にサービスパークが置かれ、愛知県と岐阜県でターマックステージが行われます。ラリージャパンのステージは全体的に道幅が狭く、ツイスティなコーナーが連続します。また、11月末は落ち葉が多く、例年降雨もあるなど、場所によっては路面が非常に滑りやすくなるのが特徴です。