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2025年もWRCフル参戦続行の勝田貴元「もう大丈夫と言われた時は泣きそうになりました」

©Naoki Kobayashi

2025年もWRCフル参戦が発表されたトヨタ・ガズーレーシングの勝田貴元。正式に続行が決まったのは、絶対完走が命題だったラリージャパンのパワーステージを走り終わった後だったという。苦しい時間を経験したシーズンと、来年への取り組み方を語った。

「今シーズンは、スピードを結果に繋げられなかったと強く思っています。結果的に復帰戦となったセントラルヨーロッパラリーが一番ポイントを獲得しているのですが、実は全ステージプッシュしたわけではなくて、前半はマネージしながらプッシュできるところでプッシュして、最終日にちょっと予想しなかった事態になって全ステージをプッシュせざるを得なかったんですけど、そんな状況になった時にちゃんとプッシュして、その結果、一番ポイントが獲れたんです。トム(ファウラー)とも話しましたが、来年はセントラルヨーロッパのように、多少は我慢するところも出てくるかもしれないけど、そういった戦いをしていけば自信もついてきて、チャンスが来た時にプッシュすれば勝てるスピードはあるんだから、無理しなくていいよ、と言ってもらいました」

「今年は、すぐにでも勝たないとチームに残れなくなるっていうくらいに思っていたのですが、エンジニアのメンバーがすごく期待してくれていたことにビックリしました。本当に親身になって支えてくれて、自分が焦りに繋がっていた、ということに今回気づけたので、あとはそれを徐々に結果につなげて、勝てるところで勝てるようなスピードを発揮して勝負に出たいと、今はそんな風に思っています」

「ラリージャパンでミッションが完了できなかったら、走れなくなるかもしれないと言われていた、という話はシリアス以外の何ものでもありません。ラリージャパンは絶対完走だったので。ラリーって、そんなに簡単に完走できるものではありません。下位カテゴリーより遅いスピードで走れば完走できるかもしれませんが、それでも何か起こる時はやっぱり起きる。トップカテゴリーのスピードっていうのも、実際にカテゴリーを経験したドライバーでなければその域は分からなくて、自分もようやくここに来て、この次元で今走ってるんだっていうのを理解できてきている部分がありますが、そこをヤリ‐マティは一番理解してくれてて、一番長く、ずっとエンジニアとして見てきてるトム・ファウラーとかケビンなどのメンバーが、僕が苦しんでる時にサポートしてくれてるっていうのはすごく強くて。そんななかで、今回のジャパンは、自分も個人的には自信もあったので持っているパフォーマンスを全部発揮して優勝したいという思いがありましたが、やっぱりチームとしてプロの仕事として、今回はマニュファクチャラーズ争いも接戦で、まず1台はフィニッシュしなきゃいけないし、何か起きたら、完走できなかったら来年はないと、それはもう強く言われていたので。でも、トロトロ走っただけでもいけないし、すごく見極めが難しかったですね。だから、すごくきつかったです」

「その状況のなかでのスピンは、かなりヒヤっとしました。道に沿った形でスピンしたので大丈夫だなと思ったんですけど、その時は頭をよぎるものはありました。何が起こるか分からないのがラリーだから気をつけなきゃいけないけど、気をつけすぎたらチームをサポートできない位置になってしまうのが、今のこのカテゴリーなので。だから、普通に全開でプッシュしてる方がよほど楽というか。そういった意味で、糧になったというか、すごく勉強になった一週間、強くなれた気がします」

「ジャパンでは、日曜日に入っても様子見でしたが、(オィット)タナック選手がクラッシュしてしまって。自分は友だちとしては残念なのですが、チームとしてはそれに救われてチャンスを得たので、その後の、昼のサービスで行っていいよと言われました。ただ、行っていいけど帰ってきて、だったので(苦笑)。ちょっと難しいものがありました。“絶対完走”に変わりはなかったので、自分の走りもちょっとぎこちなかったような気がしました」

「今後のアプローチは、間違いなく変わると思います。この最後の2戦も、明らかに自分の考え方が変わったと思っていて。チリに行かなかった時、みんなは自分にスピードがあることは理解しているからそれをあらためて見せる必要はないので、それを犠牲にしてでも安定して4番手、5番手で帰ってこれるかどうかっていうところを見ていた、と言われた時に、ギャップがすごかったんです。いかにカッレとセブの直後につけられるかを一番期待してくれていたのに、自分が焦りのためにできなかったのですが、自分の速さを理解してくれている、ということが理解できたことで、もう少し落ち着いてラリーを運べると思うので、そんなことを意識しながら、特に来年の前半戦を戦っていきたいと思います」

「ラリージャパンでは、母国ラリーですごく期待も感じていたのでプレッシャーも大きく、今だから言えますが、金曜日の昼くらいから、早く月曜日になってほしいと思ってました(笑)。でも、そんな精神状態の時に、ロードセクションですごくたくさんの人が、めちゃくちゃ応援してくれていたのは、すごく助けになりました。もう笑顔になんかなれないなと思った時に、子どもたちが手を振ってくれたりすると、やっぱり笑顔になっちゃうので」

「来季の続行が正式に決まったのは、最終日にフィニッシュして、パワーステージのポディウムに戻ってきた時です。絶対完走だったので、完走しました、はいって(笑)。『でも…、』なんてジョークまで言われましたけど、その時点で、よくやったって感じですね。最初、モリゾウさんに言われて、ヤリ‐マティもいて、もう大丈夫だからって言われて。その時は、ちょっと泣きそうになりました」

「でも、ファンの皆さんに表彰台を見せられなかったのは、すごく申し訳ないです。来年は、勝ちに行っていいよって言われるくらいの状況で帰ってきたいなと思っているので、1年間ちゃんと組み立てて戦っていきたいと思います」

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