Mスポーツ・フォードは、2024年にWRCのフル参戦ドライバーを務めてきたアドリアン・フルモーがチームを離脱することを発表した。フルモーは、5年にわたってMスポーツ・フォードで参戦を続けてきたが、Mスポーツはフルモーの移籍発表を受けて、その間に見せてきた努力や真摯な取り組み、成長を賞賛するコメントを寄せている。
若手ドライバーの育成に定評があるMスポーツ。フルモーのキャリアは、成長、回復力、成功の物語であり、将来のドライバーにとってモデルケースのひとつとなるだろうと伝えている。フルモーは2017年にラリー参戦を開始し、フォードのマシンでWRCや国内戦レベルのイベントに挑戦してきた。2018年、フォード・フィエスタR2Tで母国フランスのジュニアタイトルを獲得すると一躍注目を集め、2019年にMスポーツ入りを果たした。
この年、開幕戦ラリーモンテカルロでWRCデビューを飾ると、フォード・フィエスタR5で即座に見事なパフォーマンスを披露し、いきなりWRC2部門2位でのフィニッシュを達成。さらにWRCウェールズでも部門ポディウムに上がり、WRCの成長株として一目置かれるようになった。
2020年は新型のフィエスタ・ラリー2をドライブすると、再びモンテカルロでWRC2部門を2位でフィニッシュ。エストニア、トルコでも部門ポディウムに上がったほか、ERCでも最終戦カナリアスで同選手権で初めての勝利を飾った。
2021年にはWRCクロアチアにフォード・フィエスタWRCで参戦すると、トップカテゴリー初参戦でありながら総合5位と衝撃のリザルトを残したフルモー。この年はWRCケニアで、初めてのステージウインもマークした。
2022年はラリー1マシンでフル参戦の機会を得て、この年からコ・ドライバーにアレクサンドル・コリアを迎えた。2023年はラリー2マシンに戻り、スキルと自信の立て直しを図り、英国ラリー選手権で5勝をマークしてのタイトル獲得を果たしたほか、WRC2ではWRCフィンランドとWRCセントラルヨーロッパで部門優勝を飾った。
仕切り直してラリー1でのフル参戦に挑んだ2024年は、WRCモンテカルロを5位でフィニッシュすると、WRCスウェーデンで自身初のWRCポディウムに上がった。さらにグラベルのWRCサファリ、WRCポーランド、WRCフィンランドでも表彰台に上がると、最終戦WRCジャパンではターマックイベントでの初ポディウムフィニッシュも達成し、あらゆる路面を通じて安定した強さを示した。
フルモーのこれまでのキャリアは、未来の才能を育て成長させるというMスポーツの献身を見事に表現しており、ラリー界において若手ドライバーにステップアップの機会を与えることの価値を浮き彫りにするものだとMスポーツは自負する。
Mスポーツのチェアマン、マルコム・ウィルソンは「アドリアンの今年の活躍には本当に感銘を受けたし、ラリー界の未来のスターのひとりであることを示してくれた」とフルモーを賞賛する。
「これまでのキャリアで直面した困難にもかかわらず彼が見せてきた気概と決意は賞賛に値する。そして、こうした経験を通して、以前よりも強くなって戻ってきた。彼の成長を促してきたことのひとつは、アレックスとの関係だ。 このコンビは、キャリアの次の段階にともに挑むのに最適だと信じている。ふたりは、何年もMスポーツのチームにとって不可欠な存在であり、チームのみんなが寂しくなると感じている。彼らが将来、どのような活躍を見せてくれるのか楽しみにしている」
苦楽をともにしてきたMスポーツ・フォードのチーム代表、リチャード・ミルナーは「アドリアン、アレックスと活動することは、間違いなく喜びだった。特にこの2年間、真のプロのアスリートとして成長していく姿は本当に見応えがあった。今年、5回のポディウムをともに喜べたことは本当に特別なものだったし、チームのみんなも自分も、彼らがいないことを寂しく思うだろう。最後に、ふたりには心から敬意を表したい。彼らは努力と決意によってこのチャンスをつかんだのであり、ふたりの物語の次の章に実にふさわしいステップだ」
WRCドライバーとして成長してきたチームを離れる決意をしたフルモーは「2018年の終わりにMスポーツに加入した時は、本当に若手で、メカニックとして新しいラリー2マシンを担当していたが、様々なカテゴリーで優勝や表彰台を収めて、いま別れを告げようとしている。このチームでは本当に多くのことを学ばせていただいた。特にマルコムは、自分のキャリアや成長をいつも気にかけてくれた」と感謝のコメントを寄せる。
「2017年から始まった自分のラリーキャリアにおいて、すべてMスポーツ・フォードのマシンをドライブしてきたし、チームには本当にお世話になった。ここまでのキャリアは山あり谷ありだったが、いつも、世界で最も過酷なスポーツに打ち込む家族のような存在だった。たくさんの思い出を一緒に作ったマルコムやチームのみんなに感謝している。これはお別れではないから、またね」