2025年のダカールは、競技最終日となる1月17日、シュバイタ~シュバイタ間をループするステージ12(134km)の走行が行われ、ヤジード・アル-ラジ(トヨタ・ハイラックス)が、TGR南アフリカのヘンク・ラテガン(トヨタGRダカール・ハイラックスEVO)との激戦を制してアルティメイトクラス総合優勝。サウジアラビア人として初めて、ダカールを制する偉業を達成した。コ・ドライバーのティモ・ゴットシャルクは、南米、サウジアラビア、それぞれで開催されたダカールで1勝ずつをマークしたことになる。
「今日はたくさんの記録を破った。ダカールを勝った初のサウジアラビア人となったほか、ワークスチームを抑えての勝利は25年ぶりだ」とアル-ラジは喜びを見せた。
イベントの大半で首位に立っていたラテガンは、わずか4分届かず2位でのフィニッシュとなった。
「首位に立っていた時間は長かったし、本当にいいレース運びだったのに、わずか数分差で優勝を逃したのは、かなり受け入れがたい。心底ベストを尽くした。チームは、自分たちがこの走りができるようにマシンを整えるために、まさに信じられないような働きをしてくれたんだ」とラテガンは悔しさを見せたが、4度目のダカール挑戦で初めてポディウムに上がって見せた。
3位にはMスポーツ・フォードのマティアス・エクストロームが、フォード・ラプターT1+のデビュー戦でポディウムフィニッシュを飾った。エクストロームににとって、ダカールでの自己ベストのリザルトとなった。
「アルティメイトクラスでポディウムに上がったのは初めてで、本当にいい気分。自分たちにとって、すごくチャレンジングなラリーになった。優勝を目指してベストを尽くして戦ったが、今年は届かなかった」とエクストロームは一定の満足を見せながらも悔いを残した。
6度目のダカール制覇を目指しダチア・サンドライダーでの初参戦に臨んだナッサー・アル‐アティヤは、一週目の48クロノステージとマラソンステージでのタイムロスが響き、4位でのフィニッシュ。それでも、プロドライブが走らせるサンドライダーに初のダカールでのステージウインを奪取した。アル‐アティヤは今季は、世界ラリーレイド選手権でも4連覇の偉業に挑む。
「トラブルが発生した日が1日あったが、それがなければいい優勝争いができただろう。ここからは、世界選手権が非常に重要となる。次のレースはアブダビが舞台ですべて砂地なので、自分たちに有利だ」とアル‐アティヤ。
5位には、アルティメイトクラスに初挑戦した米国カリフォルニア出身のミッチ・ガスリーJr.(フォード・ラプター)が大健闘。
「アルティメイトクラスの初年で総合5位は、優勝したと同じような気分。上位はレジェンドドライバーばかりなので、信じられないような気持ちだし、すでに来年のことを考えるとワクワクするよ」とガスリーJr.は喜びを語った。
ガスリーJr.と同じ、レッドブル・オフロード・ジュニアチーム出身、TGRのセス・キンテロ(GRダカール・ハイラックスEVO)もトップ10フィニッシュ。22歳の若さで今回が5度目のダカール参戦となったキンテロは、一週目にステージウインもマークした。
「完全に満足できるダカールではない。学びの年でもあり、成長の年でもあった。ステージウインもマークしたが、あちこちで不運にも見舞われた」とキンテロ。
TGRのチームメイト、ブラジルのルーカス・モラエスも、ステージウインをマーク。厳しい日もあり、14位でのフィニッシュとなったが、ステージ12ではステージウインでイベントを締めくくった。
「今回のダカールではトラブルにも見舞われ、たくさん成長することができた。総合順位は期待していたものではなかったが、シャンゼリゼステージを勝ってフィニッシュできたことはよかった」とモラエス。
昨年2位に入ったギヨーム・ド・メビウス(ミニ・ジョン・クーパーワークス・ラリー)も今年は浮き沈みのある大会となり、2週目はステージウインで滑り出したが、砂丘で苦戦。18位でのフィニッシュとなった。
「全体として、いい走りをたくさんできたので、そのことを記憶に残したい。次のレースは来月のアブダビなので、より強くなれるよう全力を尽くす」とド・メビウスは世界ラリーレイド選手権に向けての意気込みを語った。
ダカール2025最終リザルト
1 Y.アル-ラジ(トヨタ・ハイラックス) 52:52:15
2 H.ラテガン(トヨタGRダカール・ハイラックスEVO) +3:57
3 M.エクストローム(フォード・ラプター) +20:21
4 N.アル‐アティヤ(ダチア・サンドライダー) +23:58
5 M.ガスリーJr.(フォード・ラプター) +1:02:10
6 M.セラドーリ(センチュリーCR6) +1:12:04
7 J-C.ヤコピーニ(トヨタ・ハイラックス) +1:57:47
8 J.フェレイラ(ミニ・ジョン・クーパー・ワークスラリー) +2:15:57
ランドクルーザー300GRスポーツをベースとしたラリーカーで市販車部門(FIAストッククラス)を戦うチームランドクルーザー・トヨタオートボデーの三浦昂/ジャン・ミッシェル・ポラト組の500号車とロナルド・バソ/ジャン・ピエール・ギャルサン組の501号車は、部門1‐2フィニッシュ。市販車部門12連覇を達成した。
三浦は「市販車部門12連覇を果たすことができてほっとしています。来年は車両規則の変更が予定されており、このランクル300で走るのは今回が最後になります。3年間お世話になった車両に最後は感謝の気持ちを込めて丁寧に走りました。難易度が高まるラリーに対し、今回は走破性を向上させて臨みましたが、それによりトラブルが出た際もメカニック陣のおかげで走り続けることができました。また、ここで勝負という時に集中できたのはレースや他カテゴリーなど色々な経験が活きたのだと思います。応援いただいた皆さまからのメッセージやコメントが本当に励みになりました。たくさんのご声援、ありがとうございました」とコメント。
角谷裕司監督は「11年間監督をさせていただいて色々なことがありましたが、今年は今までで一番大変でした。たくさんのトラブルを乗り越え、市販車部門の12連覇を達成できたのはチームメンバーの総合力です。また、チームを支えてくださったすべての方に感謝申し上げます。ありがとうございました」と感謝を語った。
HINO600シリーズでトラック部門に参戦する日野チームスガワラの菅原照仁/染宮弘和/望月裕司組は、前日、トランスファーのトラブルにより舗装のリエゾン上でストップし救援を待っていたが、24時頃にビバークに到着。メカニックが夜通し修復に臨み、無事に最終日のスタートを迎えた。修復されたトランスファーによりパートタイム4WDとして走行したこの日を走り切り、部門13位でフィニッシュした。
菅原は「今回の参戦にあたり、ご支援や応援をしてくださった方々に感謝申し上げます。最後のSSはそんな気持ちで走りました。色々なことがありましたが、トラブル対応では寒いなかメカニックさんたちが頑張ってくれたりと、チーム全員にとって良い経験になったと思います」とイベントを振り返った。