トヨタ・ガズーレーシングWRTは、1月23日〜26日にかけてモナコ、フランスを舞台に開催される今季のWRC開幕戦ラリーモンテカルロ(アイス&ターマック)に、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン、セバスチャン・オジエ/バンサン・ランデ、勝田貴元/アーロン・ジョンストン、サミ・パヤリ/マルコ・サルミネンと5台のトヨタGRヤリス・ラリー1をエントリーする。今季からフル参戦に臨むパヤリ/サルミネンは、TGR-WRT2からのエントリーとなり、固定のカーNoは5を選択した。
またWRC2部門には、今季からGRヤリス・ラリー2にスイッチするオリバー・ソルベルグがエントリー。TGRのWRCチャレンジプログラム2期生の小暮ひかると山本雄紀も、初めてモンテカルロ参戦に挑む。
(以下、発表リリース)
WRC第1戦ラリー・モンテカルロ プレビュー
2025年WRC開幕戦ラリー・モンテカルロに
5台のGR YARIS Rally1で参戦
TOYOTA GAZOO Racing World Rally Team(TGR-WRT)は、1月23日(木)から26日(日)にかけて、モナコおよびフランスで開催される、2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)第1戦「ラリー・モンテカルロ」に、エルフィン・エバンス/スコット・マーティン組(GR YARIS Rally1 33号車)、カッレ・ロバンペラ/ヨンネ・ハルットゥネン組(69号車)、セバスチャン・オジエ/ヴァンサン・ランデ組(17号車)、勝田貴元/アーロン・ジョンストン組(18号車)に、TGR-WRT2からのエントリーとなるサミ・パヤリ/マルコ・サルミネン組(5号車)を加えた、合計5台のGR YARIS Rally1で参戦。WRC最古の歴史と伝統を誇るラリー・モンテカルロで、今シーズン最初の優勝を狙います。
2025年のWRCは、スペイン(カナリア島)、パラグアイ、サウジアラビアという3つの新イベントがカレンダーに加わり、ラウンド数は昨年までの全13戦から14戦に拡大。例年どおり、モナコとフランスを舞台とするラリー・モンテカルロで長いシーズンの開幕を迎えます。
冒険に満ちた新しいシーズンは、Rally1車両のレギュレーションにも大きな変更があり、これまで3シーズンに渡り組み込まれてきたきたプラグイン・ハイブリッド・ユニットが搭載されないことになりました。その結果、車両の規定最低重量は従来の1260kgから1180kgへと大幅に引き下げられ、プラグイン・ハイブリッドによるブーストがなくなることと、吸気リストリクター径が36mmから35mmに絞られたことによるパワー低下を補完。昨年までと同様のパワーウェイトレシオを維持できるようになりました。また、単一サプライヤーとして、ハンコックが初めてWRCトップカテゴリー車両にタイヤを供給することも大きな変更点です。
スポーティング・レギュレーションについても重要な変更がありました。日曜日の最終総合順位に対して与えられるポイントが復活し、昨年までの土曜日終了時点での順位に対し付与されていたポイントは廃止されました。ただし、日曜日のみの合計タイムによって競われる「スーパーサンデー」と、最終ステージのみの順位に対してポイントが与えられる「パワーステージ」は継続となり、これまでと変わらず、日曜日もエキサイティングな戦いが続くことになります。なお、日曜日の最終順位に対して与えられるポイントは、1位から10位までに25-17-15-12-10-8-6-4-2-1。スーパーサンデーとパワーステージは、いずれもトップ5に対し5-4-3-2-1ポイントが与えられます。
2024年シーズン最終戦ラリージャパンでの優勝と、チーム一丸となって達成した逆転劇により、TGR-WRTは4シーズン連続となるマニュファクチャラーズタイトルを獲得しましたが、2025年も総力をあげてタイトル防衛に臨みます。GR YARIS Rally1と改名されたクルマについては、引き続き100%持続可能な非化石燃料を採用し、サスティナブルなモータースポーツ活動を推進します。また、プラグイン・ハイブリッドユニットによるブーストが得られなくなったことで、エンジンに求められる特性が変わったため、2025年車両ではエキゾーストシステムとカムシャフトを変更。さらに、ギヤレシオを見直すなどしてパッケージの最適化を図り、クルマの改良を推し進めました。
ドライバーおよびコ・ドライバーのラインナップは、2024年シーズンからさらに強化。7戦へのパートタイム出場ながら4勝を飾った2022、2023年の世界王者ロバンペラが、ハルットゥネンと共に全戦出場にカムバックします。また、エバンスとマーティン、勝田とジョンストンも全戦に出場。2024年、10戦に出場し3勝を獲得したオジエとランデは、2025年もパートタイムの出場となりますが、開幕戦ラリー・モンテカルロには前人未到の大会10勝目を目指しエントリー。ロバンペラ、エバンスと共にマニュファクチャラーズポイント獲得ドライバーとして挑みます。モンカルロでの勝田は、TGR-WRTの4台目として彼ら3人を支え、5台目のGR YARIS Rally1は若手のパヤリに委ねられます。2024年のWRC2にGR Yaris Rally2で挑みシリーズチャンピオンに輝いたパヤリは、かつて組んでいたサルミネンとのコンビを復活。新たに設けられた「TGR-WRT2」から、初めてトップカテゴリー車両で全戦に出場し、新チームのマニュファクチャラーズポイント獲得にも挑戦することになります。なお、パヤリの車両のリバリーはブラックとホワイトに塗り分けられますが、これはWRCの最高峰を目指す若手ドライバーにチャンスを与えるという、TGR-WRTの姿勢を表わすものです。
2024年にパヤリと最後までWRC2の王座を競ったオリバー・ソルベルグは、2025年のWRC2タイトルを獲得することを最大の目標に、クルマをGR Yaris Rally2にスイッチ。昨年、パヤリを王座に導いたプリントスポーツから、WRC2の7戦にエントリーします。ただし、その7戦以外にもソルベルグはGR Yaris Rally2で出場。彼にとってはWRC2登録外イベントとなりますが、開幕戦ラリー・モンテカルロでクルマへの理解をさらに深めることになります。また、ソルベルグと同じようにWRC2登録外イベントとなりますが、TGR WRCチャレンジプログラムの小暮ひかると山本雄紀も、GR Yaris Rally2で初めてのラリー・モンテカルロに挑みます。
厳寒期のフレンチアルプスの山道が舞台となるラリー・モンテカルロは、基本的にはターマック(舗装路)イベントですが、舗装路面が氷や雪に覆われたステージも多くあり、天候も変わりやすいため、WRCの中で最も過酷なイベントのひとつと言われています。路面の状態が変わりやすいためタイヤ選択も非常に難しく、ドライ用、ウエット用、雪道用のスタッドレスタイヤ、金属製のスタッド(スパイク)が埋め込まれたスタッドタイヤなど、様々なタイプのタイヤが用意されます。
前年と同様、ラリーの中心はフランス南部ギャップのサービスパークとなり、ラリーの開幕を華やかに祝うセレモニアルスタートはモナコ中心部のカジノ広場で行われます。木曜日の午後モナコを出発した選手たちは、遠く離れたギャップのサービスパークを目指しながらデイ1として3本のナイトステージを走行。競技初日から、路面凍結の可能性もある合計54.16kmの夜間ステージと対峙することになります。金曜日のデイ2は、ギャップの東側と北側のエリアで、ミッドデイサービスを挟んで3本のステージを各2回走行。土曜日のデイ3も同様のフォーマットで行われ、ギャップの西側エリアで3本のステージを各2回走行します。なお、そのうちSS11/14の「オスロン/ルクーボー=ジャンサック」は完全な新ステージとなります。最終日となる日曜日のデイ4は、早朝ギャップのサービスパークを出発した後、木曜日の夜にSS1とSS3として走行した2本のステージを再走。その後、有名なチュリニ峠のコーナーを含む最終のパワーステージ、SS18「ラ・ボレーヌ=ベジュビー/ペイラ・カヴァ」を経て、モナコでフィニッシュを迎えます。4日間で18本のステージを走行し、その合計距離は343.80km。リエゾン(移動区間)も含めた総走行距離は1629.37kmが予定されています。
ヤリ-マティ・ラトバラ(チーム代表)
2024年シーズンが終わったばかりのような気がしますが、今、私たちは多くの新たな側面を持つ新しいシーズンに向けて準備を進めています。ハイブリッドユニットが搭載されなくなり、重量が低減されたことにより、私たちはクルマの最適化とセットアップの適切なバランスを見つけるため一生懸命努力してきました。私自身もこの新しいパッケージのクルマを運転する機会がありましたが、パワーが減少したにもかかわらず、パフォーマンスは以前とほぼ同等で、クルマはむしろ俊敏になったように感じました。また、新たなタイヤサプライヤーであるハンコックの参入も歓迎します。このような様々な変化にドライバーたちがいち早く適応し、限界までプッシュできるようになることを期待しています。ラリー・モンテカルロはコンディションが変わりやすいことから、タイヤ戦略の面でも最も難しいイベントです。テストでは降雪など様々な天候を経験しましたが、ラリーでは常に驚くような出来事に遭遇します。強化された今年のラインナップにより、我々のドライバー達がこのイベントと、チャンピオンシップでトップ争いに加わることができると確信しています。Rally1でフル参戦する初めての年となるサミには、以前の貴元と同じように、セカンドチームからエントリーしてもらいます。これにより、マニュファクチャラー選手権争いでも新たな展開がもたらされるでしょう。今大会での彼のメインターゲットは完走と経験を積み重ねることですが、一年を通して成長し、進化してくれることを期待しています。
エルフィン・エバンス(GR YARIS Rally1 33号車)
新しいシーズンを迎えるにあたり、自分の目標はいつも通り勝利のために全力を尽くすことです。2025年も我々のチームは強力ですし、私自身のターゲットはラリーで勝ち、選手権タイトル獲得のために戦い続けることです。新しいタイヤサプライヤーが参入し、テクニカルレギュレーションもいくつか変更されたため、すべての路面に適応し、学ばなくてはなりませんが、それは誰にとっても同じことです。できる限りベストな仕事をして、可能な限り準備を整える必要があります。ラリー・モンテカルロは、使用できるタイヤの選択肢が最も多いイベントですが、テスト時間が限られているため、すべての異なるコンディションでタイヤを試すことは不可能です。いつだって非常に難しいラリーですので、コンディションに上手く適応し、適切なタイミングで正しい判断を下すことがこれまで以上に重要になるでしょう。
カッレ・ロバンペラ (GR YARIS Rally1 69号車)
このチームの一員としてWRCのフルシーズン参戦に復帰するのは素晴らしいことです。一年を通して準備を進め、タイトル獲得を目指して戦うのは、また異なるフィーリングです。昨年は各ラリーで速さを発揮しましたが、今年は一年を通してより一貫性を高めて戦う必要があります。ラリー・モンテカルロは常に、シーズンの開幕戦として非常に難しいイベントです。これまで、自分にとっては決して得意なラリーではありませんでしたが、それでもそこそこ良い結果を残すことができていました。クリーンにラリーを戦い、多くのポイントを獲得してシーズンをスタートすることができたら幸いです。新しいタイヤサプライヤーを迎えるというのは、かなり大きな出来事です。なぜなら、誰もがすべてのコンディションでタイヤについて学ばなければならず、モンテカルロでは、できるだけ早くクルマに自信を持てるようになりたいからです。
セバスチャン・オジエ(GR YARIS Rally1 17号車)
ラリー・モンテカルロに向けて準備を進めていると、いつもワクワクします。また、TGR-WRTとの関係をさらに一年継続できることを嬉しく思います。この素晴らしいチームで走ることを、私は今でも楽しんでいます。このチームで過ごす年月は、私のキャリアの中で最長ですし、今年はさらに楽しく走れることを期待しています。クルマのパワーが低く抑えられ、重量が軽くなり、新しいタイヤが導入されたことにより、シーズン序盤は分からないことだらけですし、チームとドライバーにとっては、誰がもっとも上手く適応できるかを競う、新たなチャレンジになります。何度スタートを切っても、このラリーは決して簡単には感じられません。私は常にリスペクトを持ってチャレンジし、ある種の恐怖心を持ってこのラリーに臨んでいます。なぜなら、予測不可能な状況に直面することは明らかだからです。他のラリー以上に、リスクの管理に重点を置く必要があります。
勝田貴元(GR YARIS Rally1 18号車)
新たな期待をもって臨む、新しいシーズンが始まります。今年の自分の一番の目標は、これまでと同じレベルの速さを保ちながらも、より安定した走りをすることです。昨年は自分にとって苦しいシーズンでしたが、チームの大きなサポートを実感し、苦しい状況をどのようにして切り抜けるかなど多くのことを学びました。間違いなく、その経験が自分を強くしてくれたと感じていますし、今年はその経験を活かす年です。モンテカルロは、コンディションの面で最も難しいラリーのひとつなので、たった一日だけのテストで全ての準備を整えるのは困難です。レギュレーション変更に伴う、今までとは異なるバランスに適応するベストなセットアップを見つける必要がありますが、クルマとタイヤのフィーリングは全体的に良好です。
サミ・パヤリ(GR YARIS Rally1 5号車)
Rally1車両で臨む初めてのフルシーズンを前に、非常に良いフィーリングを感じています。昨年、その一端を経験しましたが、今から開幕が本当に楽しみです。新しいレギュレーションの導入や新しいタイヤサプライヤーなど、誰もが慣れなければならない新たな要素もありますが、それは興味深く、とてもエキサイティングなことです。これまでのところ、テストでのフィーリングは非常に良好です。今年最初のラリーとなるモンテカルロでは、とにかく良いフィーリングでフィニッシュラインに到達することが目標になるでしょう。もしコンディションが良いようならば、昨年時々実践できたように、ペースを上げることも可能かもしれませんが、上位を争うためにはもう少し経験を積む必要があると思います。