待ちに待った2025年FIA世界ラリー選手権(WRC)のシーズンは、1月22日〜26日にかけて開催される第93回ラリーモンテカルロで幕を開ける。
トヨタ、ヒョンデ、Mスポーツ・フォードのファクトリーチームが参戦する今季は、技術規定、公式タイヤサプライヤーの変更、カレンダーの拡大、ポイントシステムの刷新など、エキサイティングな要素が目白押しだ。
ラリーモンテカルロは便宜上、ターマックイベントとなるが、冬型の天候に見舞われることが多いため、純粋なターマックラリーになることはほとんどない。氷や時には雪になることもあり、グリップレベルが安定しないことも、山道で目の当たりにする厳しいタスクに拍車をかける。WRC公式タイヤサプライヤーをピレリから受け継ぐのは、ハンコック。全体的なグリップレベルは近年より若干低くなると予想されているが、これは2025年にドライバーが適応しなければならない多くの課題のひとつに過ぎない。ラリーモンテカルロでハンコックが供給するのは、Ventus Z215のソフトとスーパーソフト。さらに、スノータイヤのi*Cept SR20も、スタッドありとなしの両方が用意される。なお、カレンダーのこの後に迎えるグラベルイベントでは、Dynaproを発表する予定だ。
WRCの最高峰カテゴリー、ラリー1車両は、より軽量でシンプルになる。この規定が導入された2022年以降、これまでと同様に100%持続可能な燃料を使用するが、過去3年間に使用されてきたプラグイン・ハイブリッド・ユニットは廃止となる。規定変更の一環として、マシンの最低重量は1260kgから1180kgに引き下げられた。2024年と2025年のラリー1車両のパワーウェイトレシオを同等に保つため、エアリストリクターのサイズはが36mmから35mmに縮小された。
選手権ポイントの配分システムも、イベントの総合勝者が最も多くポイントを獲得できるように改訂されたが、日曜日に獲得できるポイント争いの機会も残されている。総合順位のトップ10に、25-17-15-12-10-8-6-4-2-1の配分でポイントが与えられるほか、日曜日単独の順位でのトップ5に5-4-3-2-1の配分で与えられる。さらにパワーステージでのトップ5も、5-4-3-2-1の配分でポイントを獲得できる。この結果、2024年は一戦で獲得できる最大ポイントは30だったが、ラリーで優勝し、スーパーサンデーでトップに立ち、パワーステージで最速タイムをマークすれば、35ポイントを獲得することができることになる。
今季のカレンダーは、昨年から一戦増えて全14戦に。スペインのカナリア諸島、パラグアイ、サウジアラビアで選手権初開催を迎える。パラグアイが加わったことで、2019年以来初めて、南米で2戦が開催される。ギリシャのアクロポリスラリーは、2005年以来初めて6月下旬に移る。昨年はERCラウンドとして開催されたラリーエストニアは、カレンダーに復帰。サウジアラビアは最終戦となり、3年間シーズンの締めくくりを務めてきたラリージャパンは、第13戦として開催される。
退任したミシェル・ムートンの後継として、FIA WRCセーフティデレゲートには、ニコラス・クリンガーが就任。クリンガーの前職である副セーフティデレゲートは、エストニアのプリット・プリイマギが引き継ぐ。
■モナコで2025シーズンローンチを開催
1月19日には、モナコのカジノ広場で2025年WRCのシーズンローンチイベントが開催され、FIAのモハメド・ベン・スレイエム会長、WRCプロモーターCEOのヨナ・シーベル、モナコ自動車クラブの代表がシーズン開幕を宣言した。
このイベントでは、ハンコックがWRC公式タイヤサプライヤーとして正式に紹介され、ラリーの新たな章が始まりを告げた。イベントのクライマックスでは、ラリー1を走らせるマニュファクチャラーとクルーが紹介され、その後、カフェ・ド・パリで招待客を招いてのフォーマルなドリンク・レセプションが行われた。
■エントリー状況
ヒョンデ・シェル・モビスWRT:ティエリー・ヌービルは世界タイトル防衛に臨むシーズン。ヒョンデi20Nラリー1にはカーNo.1をつけて、ヒョンデ・モータースポーツからの12年目の戦いに乗り出す。チームメイトは、オィット・タナックと、今季からヒョンデに加入したアドリアン・フルモー。
トヨタ・ガズーレーシングWRT:WRC8冠のセバスチャン・オジエは、ラリーモンテカルロは通算9勝と最多記録を誇る。2025年も4年連続でスポット参戦をプログラムを組んでいる一方で、昨年はスポット参戦に留めたWRC2冠のカッレ・ロバンペラは充電期間を終えてフル参戦に復帰する。エルフィン・エバンス、勝田貴元に加え、昨年、WRC2タイトルを獲得したサミ・パヤリがトヨタGRヤリス・ラリー1をドライブする。
Mスポーツ・フォードWRT:グレゴワール・ミュンステールは、ラリー1でのフル参戦2シーズン目に臨む。チームメイトとなるジョシュア・マカリアンは、モータースポーツ・アイルランド・ラリーアカデミー出身でWRC2からステップアップし、フォード・プーマ・ラリー1を駆る。
■サポートカテゴリー
人気が高まるラリー2マシンが対象のWRC2部門には、24台がエントリー。ニコライ・グリアジンは、シュコダ・ファビアRSラリー2に復帰する。ヨアン・ロッセル(シトロエンC3ラリー2)は、昨年シリーズ4位に入った。PHスポールには、フランスのターマックチャンピオン、弟のレオ・ロッセルが加入。グレゴワール・ミュンステールの弟、シャルル・ミュンステールは、ヒョンデi20Nラリー2でエントリーしている。
モンテカルロ優勝経験のあるフランソワ・デルクールを父に持つ17歳のエリオット・デルクール(オペル・コルサ)は、このモンテカルロでWRCデビュー。 昨年のモンテカルロでWRC3部門優勝を飾ったヤン・チェルニーは、WRC2部門に参戦。エリック・カミリ、ガス・グリーンスミス、ロベルト・ダプラなどと対峙する。
オリバー・ソルベルグは今季から、プリントスポーツのトヨタGRヤリス・ラリー2にスイッチ。今回はWRC2部門にはノミネートしておらず、選手圏外でのエントリーとなっている。
WRC3チャンピオンのディエゴ・ドミニゲスは、ラリーモンテカルロからタイトル防衛に臨む。ERC3チャンピオンのフィリップ・コーンは、WRC2にステップアップ。ラケーレ・ソマスキーニも、ERCからステップアップする。
WRCマスターズカップには、イーモン・ボランドがエントリーしている。
■ラリールート
2シーズン連続でギャップに拠点を構える今回のラリーモンテカルロは、チャレンジングなステージが計343.80km設定される。ラリーは1月23日、モナコのカジノ広場での伝統のセレモニアルスタートに続き、今年はナイトステージが3本・計54.16kmが設定される。アルプ=ド=オート=プロヴァンス県とオート=アルプ県を走るこの3本のうち、最長は21.18kmのFaucon-du-Caire/Breziers。Avancon/Notre-Dame-du-Laus(13.97km)は、現地時間の21時06分から走行が始まる。
24日金曜日はギャップをスタートした後、ギャップでの日中サービスを挟んで3SSを2ループする計107.34km。 この日最長のSaint-Maurice/Aubessagne(18.68km)から1日が始まる。
25日土曜日はドローム県を中心に、3本の新ステージを2ループする131.40km。La Motte-Chalancon/Saint-Nazaireは27.00kmとイベント最長ステージとなる。
最終日の26日日曜日は、ギャップをスタートした後、南部を走り、モナコでフィニッシュを迎える。名門チュリニ峠を上る La Bollene-Vesubie/Peira-Cavaがパワーステージに指定されている。
■ラリーデータ
開催日:2025年1月23日〜26日
サービスパーク設置場所:フランス・ギャップ
総走行距離:1629.37km
総ステージ走行距離: 343.80 km(SS比率21.1%)
総SS数:18
■開催選手権
WRC
WRC2
WRC3
■マニュファクチャラーズ選手権ノミネートドライバー
[ヒョンデ・シェル・モビスWRT]
ティエリー・ヌービル(#1)
オィット・タナック(#8)
アドリアン・フルモー(#16)
[トヨタ・ガズーレーシングWRT]
セバスチャン・オジエ(#17)
エルフィン・エバンス(#33)
カッレ・ロバンペラ(#69)
[Mスポーツ・フォードWRT]
グレゴワール・ミュンステール(#13)
ジョシュア・マカリアン(#55)
[トヨタ・ガズーレーシングWRT2]
サミ・パヤリ(#5)
■2024年ラリーモンテカルロ最終結果
1 T.ヌービル(ヒョンデi20Nラリー1ハイブリッド) 3:09:30.9
2 S.オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド) +16.1
3 E.エバンス(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド) +45.2
■近年のWRC開催でのウイナー
2024年 T.ヌービル(ヒョンデi20Nラリー1ハイブリッド)
2023年 S.オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド)
2022年 S.ローブ(フォード・プーマ・ハイブリッド・ラリー1)
2021年 S.オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)
2020年 T.ヌービル(ヒョンデi20クーペWRC)