
©RALLYPLUS
2月28日から始まるラリー三河湾でシーズンが開幕する今季の全日本ラリー選手権。JN-1クラスでタイトル奪還を狙うラリーチーム・アイセロが、今年から支援を受けるSPKの本社(大阪市福島区)を訪問。ダイハツ工業とSPKとの協業でモータースポーツ活動を展開するD-SPORT Racing Teamの殿村裕一監督、ラリードライバーの相原泰祐(ともにダイハツ工業)が、チームアイセロのドライバー、ヘイキ・コバライネンと牧野太宣監督とともに座談会を行った。
アイセロは昨年、実戦デビューとなったトヨタGRヤリス・ラリー2を投入したが、コバライネンはシーズンインを前に上行大動脈瘤の開胸手術を受けたことで序盤の5戦を欠場。田口勝彦を代役としてドライバーに起用し、新型マシンのデータ収集に努め、第6戦からのコバライネン復帰に備えた。25年は、開幕戦からコバライネンがGRヤリス・ラリー2で参戦し、JN-1タイトル奪還を目指す。
一方、D-SPORT Racing Teamはラリーを中心にモータースポーツ活動を行っており、2022年、2023年のWRCラリージャパンでは、ダイハツ・コペンGRスポーツでJR3クラスに参戦し2連覇を飾っている。昨年のWRCジャパンでも、豊田スタジアムのスーパーSSを伝えるWRCの公式ライブ中継で、公式コメンテイターが「このKカーは、まさに日本のクルマ文化!」と、コンパクトながらキビキビと走る姿を絶賛していた。
座談会では冒頭、それぞれが今シーズンに向けての意気込みを語った。コバライネンは「昨年はシーズンの半分しか出られませんでしたが、今年は通常通りにフル参戦に戻るので、目標はタイトル奪還に向けて争うことです。そのための準備もできています。自分の体力は万全で、たくさんトレーニングもしています。新しいマシンを投入してくるライバルもいるので戦いはさらに激しくなると思いますが、自分たちのチームもあらゆる部分を見直してこれまで以上にいい走りができるように整えています」と語った。
牧野監督も「ラリーチームアイセロは、ヘイキ選手と一緒に活動を始めて8年目になります。 アイセロは、自動車だけに関わってる企業ではなくて自動車産業のみなさんにお世話になりながら仕事をしている会社のチームです。自動車産業をより盛り上げて、クルマ好きの方を増やしたいという気持ちで活動しています。去年は、ヘイキ選手は前半は思うようにラリーに出られなかったのですが、今年は自分たちがラリーを楽しみながら、皆さんにも楽しんでいただいて、そして最終的にいい結果が残ったらいいなと思って活動しますので、ぜひ皆さんに応援していただけるとうれしいです」と意気込みを明かした。
殿村監督は「3年目の今年も、TGRラリーチャレンジからWRCラリージャパンまで、軽自動車を中心に参戦します。日常のお客様の道でクルマを鍛えながら、クルマをより良くしていく視点で引き続き活動をしていきます。モータースポーツを通しての活動はダイハツとしても、SPKさんとD-SPOPT Racing Teamという発展した形でタッグ組んで3年目になります。SPKさんとしては、アフターパーツを鍛えるというところで、ラリーで開発したパーツをすぐにお客様に届けられるよう、毎戦毎戦で改善を繰り返して、いいクルマ作りの知見に繋げられるように頑張ります。そして、 今シーズンを通して毎戦で改善した結果をWRCラリージャパンに盛り込む予定なので、応援よろしくお願いします」と今季の抱負を語った。
その殿村監督からは、昨年からGRヤリス・ラリー2を走らせている牧野監督に向けて
「コペンでWRCに3年ぐらい出ているのですが、こんな小っちゃいクルマで出てるの? なんて思われるかと思っていたら、FIAなど海外の方からは、コペン、出てくれてありがとうという感じに受け取ってくれて。裾野が広がる感じがする、ダイハツにラリー5みたいなクルマも期待したい、ということも言っていただきました。ラリー2を使っていてやりやすさのようなことは感じますか?」と、将来の広がりも期待できるような質問が。
牧野監督は「FIA規定車両の存在意義として思うのは、やっぱり参加しやすい。僕らのような素人チームでもきちんとラリーに参加できるのは、あのような規格品のクルマがあるからです。でも、かなり高額。いま、全日本ラリーに出ているクルマのなかでは、ラリー2車両が一番高い。その車両で、最上位のJN-1というクラスに参加していますが、やっぱり一番、期待するのは、若い子たちに世界に 向けての道を提供してあげたい。そういう道を開いてあげるという意味でも、ぜひ、より参加しやすいカテゴリーの規定車両を作っていただけると、すごくありがたいです。コペンも、海外でもすごく人気出てきていると思いますし、必ずしも軽自動車である必要はないと思うんです。技術を活かしていただいて、いろいろとやっていただくと、よりローコストで道が開けるのではないかと思います」と期待を込めて答えた。
さらに「今シーズンからSPKさんにご協力をいただくことになり、レーシングギアなどとても重要なアイテムを提供していただきます。ドライバー、コ・ドライバーの命を守る重要なツールなので、その側面をご協力いただけるのは、大変ありがたく思います。お互いに、より良くなっていくということで技術的なフィードバックをさせていただくなと、活用していただけたらと思います」とアイセロとしての決意も語った。
殿村監督は「SPKさんと協力して活動しているなかで、D-SPORT Racing Teamとしては、我々が先行して開発して参戦した車を、ユーザーの皆さんにも乗っていただいて、そのフィードバックしていただくっていうところにステップアップしてきたと思うので、これからも、みなさんが笑顔になるようなクルマを作って、みんなに乗っていただいてフィードバックをいただければと思います」
「新しいクルマも期待していただく声も挙げていただいていますが、自分たちはとにかく裾野を広げることが役割なので、何かしらはやっていきたいと思っていますので、少しずつ進んでいくことになるかと思いますが、これからもぜひご期待いただきたいと思います」と今後の展望を語った。
この日は、TGRラリーチャレンジに参戦したコペンGRスポーツも展示。そのドライバーズシートに座ったコバライネンは「ヤリスも小さいけど、これはさらに小さいね! 座ってみた感じは、ヤリスとはまったく違うし、コペンは昔ながらのスタイルだね。でも、もちろん、ラリーカーのフィーリングは感じられるし、特にサスペンションはラリーカーらしさを感じるよ」と感想を伝えた。
そんなコバライネンに、殿村監督から「どんなライトウェイトのスポーツカーがあったら、乗りたいと思いますか?」質問すると
「若い時は、日産GT-Rのロードカーに乗っていたから、ダイハツGT-Rなんてどうかな(笑)。やっぱりラリー2マシンが欲しいから、スポイラーとかつけてサイズをちょっと大きくしてWRカーみたいにしてみたらどうだろう」と、コバライネンはワクワクした顔で答えてくれた。
今シーズンの活動について相原は「ラリー三河湾では、東京オートサロンで展示したダイハツ・ミライースで出ます。あの時の外装デザインは完成ではなく、今シーズンは走りながら外装デザインも含めて、ちゃんといいクルマになっているかという、改善活動を進めていくのが今年の狙いです。マシン的には、ダウンフォースと冷却の部分を、しっかり改善していきます。元々、イベントでお客様から、4人乗りのMTターボはないのか、という声をたくさんいただいたので、ラリー三河湾に向けて作ってみたんです。それを走らせてみたら、すごく話題になって。東京オートサロンではカラーリングをしていない車両を展示したのですが、横にラリー車を展示していた理由は、今シーズンはそれをラリーで鍛えていきます、という意志を示したからです。全日本ラリーは、オープンクラスにスポット参戦ですが、いろいろなラリーに出て鍛えていこうと思います。また、XCR北海道スプリントカップにダイハツ・ロッキーで参戦して、4WD制御の勉強とか、荒れた道、過酷な道でどうなるかということも確認しています。全日本のラリーカムイ、ラリー北海道は、XCR部門で参戦を予定しています」と意気込みを語ってくれた。
今週開催される全日本ラリー選手権開幕戦ラリー三河湾、ラリーチーム・アイセロはトヨタGRヤリスでJN-1クラスに、D-SPORT Racing Teamはダイハツ・ミライースでオープンクラスに登場する。今シーズンもそれぞれのクラスで、気持ちが沸き立つような走りを期待したい。