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WRCのトップドライバーやマシンは、氷や雪に囲まれた氷点下のスウェーデンから一転、舞台をケニアの壮大なサバンナに移す。サファリ・ラリーケニアは、シーズン第3戦として開催される。
2年連続で3月の下旬に開催されるサファリ・ラリーケニアは、カレンダーのなかでも象徴的で壮観、要求が高く、予測不可能なラリー。19年の空白期間を経て2021年に選手権に復帰した際には6月に開催されていたが、昨年は伝統の3月開催に戻り、今年も引き続きこの会期が継続される。
グラベルイベントとして区分されるが、大雨は常に脅威であり、グリップの低い粘土質の道路やフェシュフェシュと呼ばれるきめの細かい砂は路面をたちまち泥風呂に変えてしまう。さらに、容赦ない岩が露出してくることも危険要素だ。水渡りや気温の高さもこのラリーの試練となり、クルーは頻繁にマシンをアタックモードから温存モードに切り替える。
首都ナイロビから90km北上した湖岸の町、ナイバシャを拠点とするラリーは、ケニアの国内選手権、FIAアフリカラリー選手権も併催され、地元のドライバーやチームがその腕前を広く見せつける絶好の機会にもなる。
■ハンコックはスタッドタイヤを供給
今年からWRCの公式タイヤサプライヤーとなったハンコックタイヤにとっては、初めて迎えるグラベルイベント。全4WD車両は、第一選択肢としてDynapro R213 WRC3、第二選択肢としてDynapro R213 WRC7を使用する。ラリー1マシンがイベントを通して使用できるタイヤ本数は、シェイクダウンを含め、28本となる。
■エントリー状況
トヨタ・ガズーレーシングWRT:ラリースウェーデンを制して選手権首位に立つエルフィン・エバンスを筆頭に4台のトヨタGRヤリス・ラリー1をエントリー。WRC2冠のカッレ・ロバンペラは、昨年のサファリの覇者。スウェーデンでエバンスに次ぐ2位に入った勝田貴元は、サファリではこれまで4戦に参戦して3回ポディウムに上がっている。サミ・パヤリは、初のサファリ参戦に臨む。
ヒョンデ・シェル・モビスWRT:ディフェンディングチャンピオンのティエリー・ヌービルは、アップグレードしたヒョンデi20Nラリー1で参戦したスウェーデンでは3位に入り、今季初のポディウムフィニッシュをマーク。サファリでの自己ベストは5位に留まっている。チームメイトのオィット・タナックとアドリアン・フルモーは、いずれもポディウムに上がった経験を持っている。
Mスポーツ・フォードWRT:ルクセンブルク出身のグレゴワール・ミュンステールは、ラリー1でのフル参戦2シーズン目。ジョッシュ・マカリアンはWRC2からステップアップして、今季からラリー1マシンでの参戦を始めたばかりだ。ギリシャ出身のジョルダン・セルデリディスは、今季2度目のWRC参戦を迎える。
■サポートカテゴリー
WRC2部門には16台がエントリー。母国スウェーデンで優勝を飾ったオリバー・ソルベルグ、サファリではWRC2部門優勝を2回経験しているカエタン・カエタノビッチは、今季からトヨタGRヤリス・ラリー2にスイッチしている。昨年、WRC2部門を制したガス・グリーンスミスは、今季もシュコダ・ファビアRSラリー2でエントリー。地元ケニアのハムザ・アンワールは、WRC3からステップアップして今回がWRC2部門デビューとなる。
元アフリカ王者のカラン・パテル、ケニア王者のカール・タンドも地元強豪。タンドは、WRCマスターズカップにノミネートしている。
ヤン・ソランスは今回が初のサファリ参戦。ディエゴ・ドミニゲスはこれまでに3回の参戦経験がある。いずれもGRヤリス・ラリー2をドライブする。パラグアイのファブリツィオ・ザルディバールは、このサファリから今季のWRC2参戦を開始する。
WRC3部門は、地元ケニア出身で下半身不随のニキリ・サシャニアと、インドのナビーン・プリギリアがエントリーしている。
またノンプライオリティドライバーでは、ケニアのティーンエイジャー、ティナシェ・ガティムがエントリー。コ・ドライバーは、母であるカロライン・ガティムが務める。
■ラリールート
サファリ・ラリーケニアは、3月19日水曜日のシェイクダウンはスリーピングウォーリアーの新ステージで行われた後、20日木曜日にはナイロビのケニヤッタ国際コンベンションセンターでスタートセレモニーを実施。引き続き、スーパーSS Kasarani(昨年とは逆方向)を走行。さらに今年はこの後に、8.27kmの新ステージ、Mzabibuを走行する。
ナイバシャのパルクフェルメを出た後、21日金曜日は、新設のイベント最長ステージ、Camp Moran(31.40km)を走行。続いて、距離を短縮して逆走設定のLoldia、Geothermal、Kedongを走行する。ナイバシャでのサービスを挟んでこの3本を2ループする。
22日土曜日は、ナイバシャ北部のエレメンテイタ湖周辺を走行する146.50kmの設定。今年はSleeping Warriorが短縮され、次のElmenteitaは距離が延長された。昨年は土曜日の最初に走行したSoysambuを加えた3本を2ループ。ElmenteitaとSoysambuは、昨年とは逆方向に走行する。
最終日の日曜日は、木曜日のMzabibuのリピートに続き、Oserengoni、Hell’s Gateを走行。サービスを挟んでOserengoniをHell’s Gateを再走する。Hell’s Gateの2回目の走行は、パワーステージに指定されている。
■サファリ・ラリーケニア アイテナリー
クリックしてItinreray_WRC_SafariRallyKenya_ver2-4.pdfにアクセス
■ラリーデータ
開催日:2025年3月20日〜23日
サービスパーク設置場所:ナイバシャ
総走行距離:1397.91km
総ステージ走行距離: 383.10km(SS比率27.4%)
総SS数:21
■開催選手権
WRC
WRC2
WRC3
■マニュファクチャラーズ選手権ノミネートドライバー
[ヒョンデ・シェル・モビスWRT]
ティエリー・ヌービル(#1)
オィット・タナック(#8)
アドリアン・フルモー(#16)
[トヨタ・ガズーレーシングWRT]
エルフィン・エバンス(#33)
カッレ・ロバンペラ(#69)
勝田貴元(#18)
[Mスポーツ・フォードWRT]
グレゴワール・ミュンステール(#13)
ジョッシュ・マカリアン(#55)
[トヨタ・ガズーレーシングWRT2]
サミ・パヤリ(#5)
選手権外でラリー1マシンでのエントリー
ジョルダン・セルデリディス(#9、Mスポーツ・フォードWRT)
■2024年サファリ・ラリーケニア最終結果
1 K.ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド) 3:36:04.0
2 勝田貴元(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド) +1:37.8
3 A.フルモー(フォード・プーマ・ラリー1ハイブリッド) +2:25.1
■近年のWRC開催でのウイナー
2024年 K.ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド)
2023年 S.オジエ(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド)
2022年 K.ロバンペラ(トヨタGRヤリス・ラリー1ハイブリッド)
2021年 S.オジエ(トヨタ・ヤリスWRC)
2020年 Covid-19によりキャンセル