[更新日]:
2012年03月07日
【赤龍ブログ2】われら「NMWRT」
我々のようなノーマネー・ワールドラリーチームは
何から何まで自分でやらなけれなりません。
自分でやらなきゃ誰がやる? という状態なので、
特に海外でのラリー参戦は大変です。
WRCチームの皆さんはロジスティックス担当がすべて計画を立て、
選手たちは現地へ飛行機で飛ぶだけ。
現地に行けばラリーカーが魔法のように待っているし、
ラリー後の車両の輸送もまったく心配せずに、お家に帰る。
う〜ん羨ましい!
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今回はクルマを購入した時点ですでにドラマが始まっていました。
ドライバーのJASONがオレゴンでゴルフを引き取り、
そのまま彼が住むサンフランシスコまで自走したのですが、
そこはすでに旧車と呼んでもいい86年モノ。
スロットルレスポンスがおかしい、ブレーキもリーク気味、
ギヤレシオはともかくシフトフィールがおかしい、
さらにパワー不足でとってもスロー……と、問題が山盛り。おまけにスケジュールもキツく、4日後にはテキサスの一番南端に位置するラレードという国境街に車両を運ばないとWRCに間に合わない!
ちなみにサンフランからラレードまで片道3,000kmコースです……。そして、JASONがゴルフの調整をするために自宅の周辺を走っていると、エンジンから白煙が……。
やっぱりというかなんというか。原因はヘッドガスケットのブローでした。かなりシンプルなエンジンだということは分かっていましたが、僕らはふたりともフォルクスワーゲンは触ったことがない。
しかも、ラリーカーはあと3日でテキサス到着がマストというヘビーな状況。
ひとまず、自分が住むラスベガスまでクルマをトレーラーで引っ張り、
ヘッドガスケットはラスベガスでなんとかするというプランになりました。
ラスベガスのあるネバダ州はカリフォルニアからテキサスへの通り道ですし、
時間がないので少しでもテキサスに近づいておきたいという理由がひとつ。
そしてラスベガスならば、誰か良いメカニックがいるだろうという淡い期待もありました。でもふたりとも考えが甘かった……。
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ラスベガスはキラびやかなイメージですが、
決してロスやニューヨークのような大都市ではなく、
どちらかというと砂漠の田舎町なんです。
そんなところに、フォルクスワーゲンを知るスペシャリストは
存在しなかったのでした……。早朝から携帯のメモリーに入っている知り合いみんなに
「VWいじれるショップ知らない? VWマスター誰かいない?
紹介して〜」とかけまくるも、良い反応は一切なし。
諦めかけていたところ、
ネットで見つけたヨーロッパ車リペアショップの紹介の紹介で、
とある男の情報をキャッチしました。
「VW専門ショップをこれから始めようとしているヤツを知っている。
この番号に電話してみな」とのこと。その相手はSCOTTという名前の兄ちゃんで、
ゴルフMKI ラビットのドラッグレースカーを所有しているといいます。
正直、半信半疑の思いで電話してみると
「ああ、いいよ。いま新しいガレージに引越ししているところだ。
まだワークショップには電気も来ていないけれど、
エンジン見てやるからクルマ持って来いや」と素晴らしい回答が!神はいましたよ……。
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彼のショップ名はBLACK SHEEP(ブラックシープ)。
ラスベガスの繁華街の西側に位置する、
フォルクスワーゲンとアウディを専門とする奇跡のショップでした。
まだ正式オープンしていませんが、
彼の得意中の得意はMKI/MKIIゴルフとのこと!「ヘッドガスケットなんて目隠ししてでも交換できるゼイ」
80年代のワーゲンのことはなんでも知っていると言います。
ちょっと見た感じがコワい兄ちゃんではありましたが、
話してみるととってもナイス。
一瞬でゴルフの問題点を突き止め、ヘッドガスケットだけでなく
インジェクターの不調も直し、ブレーキも交換するなど、
さすがプロの手際です。
結局、まる一日かけてチューンしてくれ、
ゴルフはラリーで十分戦えるスーパースペックになりました。
作業が終わったのは夜10:30。
最後は公道でガンガン走ってシェイクダウン。
かなり力強いゴルフが誕生した瞬間でした。昨年のダッジ・ネオンよりも速い感触。
これでやっとみんなにラリーカーをネオンから「アップグレード」したぜぃと威張れそうです(笑)。