2015年もいよいよ年の瀬が迫って参りました。皆様、本年のお仕事は済みましたでしょうか? ラリプラ編集部は28日が仕事納めでしたが、なんとラリプラ208GTi日記のまとめをしていない!
新城ラリーを速報として報じてしまったため、すっかりこちらの「日記」の方をおろそかにしてしまっておりました。楽しみにしてくださっていた皆さん、大変申しわけありませんでした…… m(_ _)m
というわけで遅ればせながら、RALLY PLUS/プレイドライブ/RALLYPLUS.NETの読者の皆様に、あらためてラリプラ208GTiの活動報告とともに、チラッとウラ話も披露させていただきます!
■リザルトだけでは分からない、ラリー参戦裏話
今年も我々RALLY PLUS編集部は、WRCに、APRCに、JRCにと突っ走って参りましたが、なかでも新しい試みだったのがプジョー208 GTiによる全日本ラリー参戦です。
当然、編集部としてのラリー参戦など初めてで、まさにゼロから。といっても、車両の製作やサービスなどはキャロッセ、各種パーツも多くの企業にスポンサーになっていただき、なんとかスタートにこぎつけました。
マシンはプジョー208 GTi。2015年の車両規定から行くと、1.6リッターターボで車重も軽い208は、実は日本のラリーで相当イイセン行くんじゃないかということでチョイス。
車両準備がギリギリになってしまい、ほぼシェイクダウン状態で迎えた開幕戦唐津は、並みいるライバルを相手にいきなりの4位! それも、まさか初戦から「(4位で)よく頑張ったね」ではなく、「(4位で)残念だったね」と言われるなんて、誰が予想したでしょうか? 実際、唐津では後半まで3位に食い込んでいて、最後の最後で逆転を許してしまったというラリー展開。208 GTiのラリーでのポテンシャルは、ここで不安から期待に変わりました。 そして、続く第2戦久万高原ではなんとクラス優勝! もちろん楽勝なんてことはありません。FIAのグループR規定という、いわばラリー専用のコンプリートカーのアバルト500ラリーR3Tに見事なまでにやられ、さすがに勝てないかと思ったところで相手のハプニングにも助けられての優勝でした。ですが、デイ1にはドライブシャフトを折ってしまうトラブルもあったり、まさに満身創痍での勝利。この時の「ドラシャ、どこが折れたの?」というメカに対する柳澤選手の「フロント!」という迷言は、おそらく後世に語り継がれていくことでしょう。この時点で一時的にですが、柳澤宏至選手/中原祥雅選手がポイントリーダーに立つこともできました。この辺りで、208 GTiの有利な点と弱点が見えてきました。リヤのスタビリティの高さは、高速ステージでは安定するものの低速ステージではクルマを動かしにくくなる。エンジンの電子制御はほとんど見られなかったのですが、高温になってくるともしかするとエンジン補正も入るかも……ということも分かってきて、グンと開発が進みました。
そうして挑んだ第3戦若狭も健闘はしましたが惜しくも4位。オープニングのSS1でのトラブルからスタートし、挽回を目指した結果の殊勲の4位でした。各種ブッシュ類の改善や軽量化など、徐々に熟成も進んでいきました。フォルクスワーゲンが1年間シュコダ・ファビアS2000でテスト参戦していたのは、こういった各部の初期トラブルを洗い出すためなんですね。実戦を戦ってみて初めて、ベース車両の問題の洗い出しの大切さを痛感しました。 続く第6戦モントレーは2015年の大会中唯一、いわゆるSタイヤが禁止され、市販ラジアルタイヤでの勝負。高崎市に本拠を置くキャロッセにとっても、群馬出身の柳澤選手(&カントク)にとってもホームラリーです。SS1ではいきなりクラストップ&オーバーオールでも好タイムをマークし、来場者を驚かせた208 GTiでしたが、徐々に順位を下げていきデイ1を2位でフィニッシュ。そして逆転を期したデイ2では『お約束(?)』のロールオーバーも経験しました。見た目にはそれほどひどくなさそうに見えたのですが、実際にはなかなかにお財布に厳しい状況でした……。実はこの時点ではまだチャンピオンの目があり、柳澤選手はラリー北海道にプロトン・サトリアネオで参戦したのですが、残念ながらリタイアに終わりました。もしかしたら、ここでの成績次第で以後のラウンドでライバルに与えるプレッシャーの大きさも変わり、すべての展開が変わっていたかもしれませんね。
そうして、大掛かりなマシンの修復を経て挑んだ最終戦新城。ここはまさに208 GTiの1年間を振り返る、最終試験のようなラウンドでした。ツイスティなSSとハイスピードなSSを擁するラリーで、なかなか思うような走りができずに最終的には5位。しかし、特に地元勢が強いと言われるこのラリーでは価値ある5位だったと思います。プジョー208 GTiというクルマのポテンシャルの高さは、この1年間での好成績に如実に表れていると思いますが、実はラリーカーだけでなく、普段編集部で取材のアシに使っていたノーマルの208 GTiからそれは感じていました。低回転からのトルク、うまく路面の凹凸をいなしつつ、高速道ではピタッと安定するいかにもヨーロッパな味付けのサスペンション、2ドアですがリヤシートの広さも特筆すべきポイントです。マニュアル車がほとんどない昨今、非常に貴重な勝ちも狙えるモータースポーツベース車両だと思います。
■今年も、ラリーの巨匠に感謝
輸入車の新車でのラリー参戦、SSベスト、優勝、マシントラブル、ロールオーバー、そして一時的ではありますがランキングトップも経験するなど、本当にありとあらゆるラリーの要素を、わずか1年で取材体験させていただきました。
クスコ・レーシングの皆さんと1年間帯同して強く感じたのは「勝てなきゃ意味がない」という強い思い。どんな状況でも常に勝つことだけを考えて、ギリギリまで頑張ってくださいました。1年目とか、初めてのクルマとか、素人の監督とか(笑)、そういうことは一切関係なく、全員が勝利に向かって戦うことの力強さを感じました。
また、そもそもパーツなどほとんどない208 GTiというクルマでラリーに参戦できたのは、各方面から支えてくださったスポンサーの皆様がいたからこそです。
素性の良い車両を世に送り出してくださったプジョー・シトロエン・ジャポン様、純正オイルの安心感で常に安定した高性能オイルを提供してくださったトタル・ルブリカンツジャパン様、抜群のグリップ力&戦闘力で優勝を後押ししてくださった横浜ゴム様、ホールド性の高いシートでクルーの安全と最適なポジションを実現してくださったブリッド様、未知のマシンのストッピングパワーを適切に実現してくださったウィンマックス様、軽さと強さとカッコよさでホイールから足元を支えてくださったアイ・アール・エス様、いつも時間がない中で素晴らしいデザインを短期間に仕上げていただいたYODA RALLYING様、ラリーに必要な各種装備をサポートしていただいたROSSO Racing様、そしてマシンのプリペアやメンテナンスだけでなくロールケージ、サスペンション、デファレンシャルなどのパーツでもご協力いただいたキャロッセ様……サポートいただいたすべての皆様のおかげで、無事に1年を終えることができました。 さらに好成績を残すことができたのは、いつも飄々としていながら速さを見せてくれるドライバーの柳澤宏至選手と、それを隣で支える大ベテランの中原祥雅選手あってのものでした。渡部さん、熊崎さんをはじめとするクスコ・レーシングのメカニックの皆さんの迅速なサービス、WRC仕込みの戦略を常に考えてくださった石井さんがあればこそ、1年間を戦い抜くことができました。そして最後に、ラリーの会場で、SNSやメールなどで、ラリプラ208 GTiを気にかけ、「いいね!」を押していただき、武井/石城両監督を応援してくださったラリーファンの皆様にも、御礼申し上げます。
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2015年のラリープラス・クスコレーシング・ラリーチームによるプジョー208 GTiのラリー活動はこれで終了となります。来年以降もRALLY PLUSとしてきっと、また楽しい企画で皆さんとラリーを楽しめればと考えています。
そのアイデアのひとつが「RALLY PLUSメンバーズ」という会員制サービス(告知)。RALLY PLUS年間4冊+カレンダーをお届けし、イベントなどでも様々なメリットが受けられるこのサービス、2016年1月末までのお申し込みとなっておりますので、ぜひお申し込みください!
では、2015年もこれにて閉幕です。
今後ともRALLY PLUS/プレイドライブへの応援、よろしくお願いいたします!
皆様、良いお年を!