今季から世界戦に昇格したFIA世界ラリークロス選手権は5月3日、ポルトガルのモンテグラレで初シーズンが開幕。前身となるヨーロッパ選手権で1年間の修業を積んだペター・ソルベルグ(シトロエンDS3スーパーカー)は、昨年は一度も恵まれなかった勝利を、世界戦昇格の記念すべき初戦でつかんだ。
ペターは、ラリークロスでも世界戦の「ハリウッド」だった。2003年のWRCタイトルに続く2つめの世界王者の座を目指し、世界戦昇格シーズンにマシンを新作して臨んだソルベルグ。開幕ヒートでは、ヨーロッパ選手権を2度制している強豪、ティマール・ティマラザノフ(プジョー208スーパーカー)に続く2番手につけた。
しかし第2ヒートでは、最初のコーナーでこのティマラザノフとクラッシュ。ティマラザノフはこのアクシデントにより一度は失格裁定をを受けたものの、抗議が受け入れられ訓戒にとどまった。一方、ソルベルグはこの結果、初日の競技を終えて、総合10位に後退してしまう。
それでも、ソルベルグはあきらめなかった。破損したスロットルケーブルを修復して臨んだ日曜日に行われた第3、第4ヒートを連覇。進出した12名が6名ずつに分かれて戦うセミファイナルでも、自身が登場したSF2で勝利。さらにここではティマラザノフがファイナル進出を逃す番狂わせもあった。
そして、世界戦初のファイナルに登場したソルベルグは、同郷ノルウェーの新鋭、22歳のアンドレアス・バックラッド(フォード・フィエスタSTスーパーカー)と激しいバトル。序盤はリードを握れなかったソルベルグだったが、引き離されずに食いつき、最終的に2.4秒差で逆転、トップフィニッシュを飾った。
「とにかく、何て言ったらいいか分からない気分だよ」とペター。「ラリークロスを始めてから、どん底に落ちたこともあったけど、今は天にも昇るようだ。きっとこの気持ちは、いつまでも忘れない。0からチームを作り始めて、すべて自分たちでやってきた。眠れない夜が続いたことも、今はすべてが報われた。声を大にして言いたいね。とにかくハッピーだ!」
「マニュファクチャラーからのサポートがなく、このチームにはとてもつぎ込んできた。目標だった最初の優勝を今季さっそく果たすことができたのは、すべてのパートナーたちと、大切なファンのみんなのおかげ。心から感謝しているよ」
なお、ソルベルグと激戦を繰り広げたバックラッドは、モンスターエナジー・スーパーチャージアワードを受賞。チームメイトのレニス・ニッティスと共に、フォード勢がポディウムの両端を独占した。
元F1チャンピオンのジャック・ビルヌーブ(プジョー208スーパーカー)は、燃料圧トラブルで、セミファイナル進出を逃したが「ラリークロスの手始めとしてはまずまずだったし、計画通りにはいかなかったが、学ぶことも多かった」とコメント。
ラリークロス選手権では、予選の4ヒートの合計順位によるインターミディエイトポイント、セミファイナル、ファイナルでは各順位に準じたチャンピオンシップポイントが阿多えらられる。ソルベルグは、計29ポイントを獲得して首位に。2位には24ポイントでニッティス、3位はSF2で2位に入った昨年の米国グローバルラリークロス選手権(GRC)王者、トーマス・ヘイッキネン(VWポロ・スーパーカー)が21ポイントで続いている。
世界ラリークロス選手権第2戦は、5月24−25日、英国のリッデンヒルで開催。