ボディ幅の拡大とエアロパーツの解禁によって、グループBを思わせる迫力ある外見を手に入れた新規定のWRカー。全5回の連載でお送りする特別企画「WRカー講座」の第4回目となる今回は、55mmワイド化されたボディまわりのディテールを詳細にチェックする。
これまでのWRカーはベース車が小さなBセグメントであったこともあり、ステージを走る姿にも“大人しい”印象がつきまとっていた。しかし、新規定のWRカーでは、同じBセグメントながら大型のエアロパーツとワイドボディ化によってその印象は大きく変化している。Mスポーツのマルコム・ウィルソンをして「グループBなみにセクシーなクルマ」と言わしめた新WRカー。かつてのグループBマシンのスタイルを最新の空力理論によりアップデートした外観の迫力は、大きな進化を遂げていると言っていいだろう。
まずは各WRカーの公表されているディメンションを確認しておきたい。ベースとなった市販車の全幅(参考値)とともに下表にまとめた。
トヨタ・ヤリスWRC | フォード・ フィエスタWRC | ヒュンダイi20 クーペ WRC | シトロエンC3 WRC | |
---|---|---|---|---|
全長 | 4085mm | 4130mm | 4100mm | 4128mm |
全幅 | 1875mm | ← | ← | ← |
ベース車 ※参考 | 1695mm (+180mm) | 1720mm (+155mm) | 1730mm (+145mm) | 1740mm (+135mm) |
ホイールベース | 2511mm | 2493mm | 2570mm | 2540mm |
車両重量 | 1190kg | ← | 1200kg | 1190kg |
フロントフェンダーに着目すると、最も幅の狭いオーバーフェンダーを持つ(=ベース車の全幅が広い)シトロエンC3 WRCは、フロントフェンダー上面にエアアウトレットを設けている。一方、最も幅の広いオーバーフェンダーを持つ(=ベース車の全幅が狭い)トヨタ・ヤリスWRCでは、オーバーフェンダーの上面にルーバー状のデザインが施されている。
フォード・フィエスタWRCのリヤフェンダー前には、ブレーキ冷却用のエアインテークが設けられるとともに、気流を整えるための2枚の大きなフィンを装備している。トヨタ・ヤリスWRCのサイドシル前端は空力を意識した複雑な形状となっている。
ヤリスのサイドドアの厚みにも注目したい。FIAは新たに発泡フォーム入り衝撃吸収サイドドアの導入を義務化した。そのスペースを確保するため、ヤリスWRCやヒュンダイi20クーペはドアの厚みを外側に増して規定をクリアしている。特にヤリスWRCは目立つ形状をしており、サイドビューの迫力アップにひと役買っている。
最終回となる次回は、新WRカーの迫力ある外見に隠された真のコンセプトについてお送りする。
2017WRカー講座 インデックス
第1回 WRCトップカテゴリーの歴史と2017年新規定の狙い
第2回 新規定WRカーの見えない進化、エンジン&駆動系
第3回 2017年のWRCはグループB以来のエアロパーツ大解禁
第4回 迫力と安全性を両立するワイドボディ化 – このページ
第5回 迫力の外見に隠された巧妙なコンセプト