大御所WRCメディア、マーティン・ホームズが、長年の経験に基づく独自の視点で切り込むMartin’s eye。今季全13戦で構成されるWRCは、第7戦ラリーイタリア サルディニアでシーズンの折返しを迎える。史上稀に見る混戦模様となっている今シーズン、2017スペックWRカー元年の中盤までをホームズが分析する。
WRCが新たに導入した2017年規定のWRカーは、見事な滑り出しを見せた。新スペックのマシンによって、これほどまでにドラマチックで見応えのあるシリーズになろうとは、誰が予想しただろうか。4チームすべてが接戦に絡んでいく展開は、どのモータースポーツ・プロモーターにとっても夢が叶ったようなもの。フォルクスワーゲンの電撃撤退という落胆を経験した後であれば、なおさらの心境だろう。
現在のこの状況は、プロモーターにとっても、ファンにとっても、そしてこのスポーツにとってもいいことだが、このマシンを走らせるチーム、そして資金を投じている人々にとっては、どう受け止められているのだろうか。そこで、シトロエン、ヒュンダイ、Mスポーツに、これまでWRカーを走らせてきたこれまでのシーズンと2017年に違いはあるのか、意見を求めた。
初期段階のデザインワークが終了したところで、新型マシンへの作業の中で予想外の技術的な困難は発生したのかを尋ねた。基本的な回答は、どのマシンも開発の初期からコンペティティブで基本的に信頼性が得られていたというもの。新しい技術は、現状は採り入れていない。次に、信頼性が得られた今、将来のWRカーはどのような方向に向かっていくと予想しているか。ここまでのところ重要視されているのは、ドライバビリティとサスペンションの動きを最大限に高めることだが、必然的に他の側面も徐々に精査されていくことになるだろう。基本的に一致したのは、7年ぶりにWRカーに採用されたセンターディファレンシャルシステム。ここが最も未知の領域であることは、明らかだ。
そして最後に、新しいマシンの外観が、ラリーのプロモーションに貢献しているか。 新規定マシンは、テレビの視聴者からもスペクテイターからも絶大な支持を得ているが、選手権のプロモーション活動については、まだまだテコ入れが必要な状況だ。3チームすべてが同意したのは、新デザインの4台のうち、3台は実に素晴らしい外観であるということ。ヤリスは、やや劣ると……。サービスパークで感じられる充実感という意味では、80年代前半と違い、新規定はうまくいっているようだ。当時はグループB規定が発表されたばかりで、「エボリューション」という決まり文句がモータースポーツ界で流行りだしたが、その後、下降の一途を辿ったのはご存知の通りだ。(Martin Holmes)