TOYOTA GAZOO Racing(TGR)のフィンランドファクトリーが、日本のメディア向けに初めて公開された。チーム代表のトミ・マキネンが所有する「Tommi Makinen Racing Oy(TMR)」の施設をベースとするファクトリーは、彼の故郷であるプーポラにあり、今年7月に新しいオフィス棟が完成。現在はフィンランド、ドイツ、エストニア、アメリカ、スペイン、日本など、世界各国から集まった約120名ものスタッフが働いている。
新たなオフィス棟の1Fにはマーケティング部門やファイナンス部門、チーム首脳陣の部屋が置かれ、吹き抜けになった2Fは、今回撮影が許されなかったデザイン/エンジニア(R&D)部門のオフィスとなっている。まだ完成半ばで外壁の塗装もされていない状態だったが、すでにオフィスとしては機能している。ラリーフィンランドのフィニッシュ翌日ということもあり、エンジニアの多くは休日を取っていたものの、ロジスティクス担当スタッフが今後のラリーに向けて忙しく働いていた。
かつてTMRがグループNやR4マシンをプレパレーションしていたファクトリー棟では、ラリーフィンランドを走り終えたトヨタ・ヤリスWRCのオーバーホールがすでにスタート。各パーツが外され、入念な点検作業が行われていた。さらに次戦ドイツに向けた準備、スペインに向けたラリーカーのアッセンブリ作業も進められている。
ヤリスWRCはフランスの生産工場からホワイトボディが届くと、4週間をかけてボディの補強、ロールケージ、空力ボディパーツ、基本的なコンポーネンツが組み込まれた「ベースシャシー」を製作する。そこから各イベントに合わせた仕様に3週間で組み上げられ、実戦へと送り込まれる。今シーズン、各ドライバーが使用できるWRカーはそれぞれ3台となっており、合計9台のヤリスWRCが製作されるという。
TGRでエンジニアを務める川村倫隆は「現在、ヤリスWRCはターマック仕様もグラベル仕様も関係なく『ベースシャシー』を使用しています。今の時点ではまだ、最終戦までのマシンをすべて完成させているわけではなく、エンジニアリングのスケジュールによって、それぞれのベースシャシーの投入時期を入れ替える可能性もあります」と、マシンの製作状況を説明してくれた。
ファクトリーの敷地にはかなりの余裕があるため、マキネンは今後施設をさらに拡張、サテライトチームを立ち上げる可能性も明かしてくれた。
「新たなオフィスを建設し、R&D部門に快適なスペースを用意することができた。まだ、土地には十分余裕があるし、この施設をさらに拡大する可能性もある。たとえば、セカンドチームを作ることもあるかもしれない。トヨタは若い日本人ドライバーをトレーニングしているし、いつかは彼らにもWRカーに乗ってほしいからね。それがマシンの開発やチーム全体の成長にもつながるはずだ。今すぐではないが、近い将来にそういった意味でチームを大きくすることは考えているよ」