ラトバラ「今シーズン、さらに勝利できる」 – RALLYPLUS.NET ラリープラス
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ラトバラ「今シーズン、さらに勝利できる」

©Naoki Kobayashi

トヨタのエースとして今シーズン、ヤリスWRCで戦うヤリ-マティ・ラトバラ。先日開催されたラリーフィンランドは、トップを快走しながらもマシントラブルでリタイアに終わったが、ラトバラの表情は明るい。ラリーフィニッシュ後、シーズン前半を終えた今の心境を聞いた。

ーー今シーズン、ここまでの戦いをどう評価していますか?
「正直、ここまで自分のベストシーズンになっていると思う。自分のドライビングは一貫してブレていないし、これまでになく高いレベルにあると実感しているんだ。だから、とにかくラリーに集中できている。今シーズンはタイトルのことをそれほど考えずに、開発を進めること、チームにマシンを持ち帰ることだけを考えて戦ってきたのが良かったのかもしれないね」

ーー参戦2戦目のスウェーデンで優勝したのは驚きでした。
「開幕戦モンテカルロでの2位、そして2戦目のスウェーデンで優勝と、チームはとてもいい形で滑り出すことができた。でも、メキシコとアルゼンチンではエンジンに問題が生じてしまった。とはいえ、タフなシーズンになることは、分かっていたことだからね。ニューマシンだし、最初の数戦は対応しなくてはならないことがたくさんある。それに、僕らはメキシコのような高地でテストするチャンスがなかった。高地でのテストはスペインで行ったんだけど、メキシコ戦の気温はテスト時と比較すると、5℃も高かった」

ーーヨーロッパでメキシコと同じコンディションを再現するのは難しいですよね。
「そうだね。ラリーと同じレベルの高地でテストするチャンスもなかったし、トヨタには前年までのデータもない。だから、安定して走らせるができなかったんだ。もちろん最善の結果を残せるようにベストは尽くしたよ。それもあって、最低限、メキシコで6位、アルゼンチンで5位という結果を残せた。ターマックのコルシカではポディウムも狙えた気がするけど、どうなんだろうな……」

ーーポルトガルは体調不良もありましたね。
「本当にがっかりしたよ。マシンはクーリングやサスペンションがかなり改善されて、ラリーもリードできた。それなのに自分が体調を崩してしまったんだ。今振り返ると、無理をせずにとにかく落ち着いて、自分の調子を回復させるべきだった。でも、僕はあのままドライブを続けてしまった。ラリーはフィニッシュしたけど、ドクターとケンカしたよ(笑)」

ーードクターストップがかかっていたんですね?
「彼らは走るのを止めさせたかった。でも、僕は『このままドライブして、ラリーをフィニッシュしたい』と言った。ラリー中、ひと晩病院で過ごして、次の日にラリーを続けたのは初めてだったよ(笑)。本当に悔しかったけど、病気はどうしようもない。その後のラリーでは、落ち着いてポイントを重ねられるようになったかな。シーズン当初よりも、高いレベルでドライビングができている手応えを感じているんだ。サルディニア、ポーランド、フィンランドでは、一貫性を持って、優勝争いできるだけのスピードを見せられているからね」

ーー特にフィンランドは悔しいトラブルでしたね。
「そうだね。ポーランド、フィンランドはトラブルが出てしまって、『なぜここで?』と、悔しい思いもあった。あれがなければ、選手権をリードできたかもしれない。ある意味、これは僕の夢でもあるからね。いいマシンがあって、着実にポイントを重ねていけば、タイトルを狙うチャンスが得られる。でも、この1年目は学ぶ立場のシーズンだし、こうしたことが起こり得ることも受け入れなくてはならない。それは分かっている。でも、やっぱり目の前にチャンスがあると、目指したくなってしまうものなんだ(笑)。だからこそ、ここまでしっかり上位をキープできている今シーズンは、自分のベストだって最初に言ったんだよ」

ーーシーズンが始まる前の時点で、今の状況は想像していましたか?
「去年の年末のことを考えれば、最高の状況だよね。あの絶望感を思えば、トヨタと契約して、プロドライバーを続けられているということが、何よりも重要なことなんだ。もちろん、トヨタでテストが始まった時点では、僕も含めて、チームの誰もが今年勝てるとは思っていなかった」

TOYOTA

ーーシーズン中に、ここまでヤリスWRCが進化した理由はどこにあるのでしょう?
「3人のドライバーからのいいフィードバックがあって、それに対してエンジニアが対応しやすい体制が理由かな。それにチーム全体のモチベーションが高く、それが結果につながった。僕らは『車輪が回っている』と表現するんだけど、チームに好循環が生まれていて、それが予想よりもいい結果につながっているんだと思う。シーズンが始まって以来、エンジン、サスペンションが格段に改良されたし、軽量化も果たすことができている。こうしたことすべてがラリーには重要なんだ」

ーーヤリスWRCの長所はどこにありますか?
「ステアリングフィールだね。あと、ブレーキフィーリングが素晴らしい。最初のテスト段階から、ヤリスのストレートでのブレーキングは素晴らしかった。それはしなやかな足回りが生み出していると思う。それにコーナーでのステアリングフィーリングは常にドライバーのコントロール下にある。あとはジャンプの着地だね。とてもスムーズで、ヤリスWRCの強みになっているよ」

ーーエンジンについてはいかがですか?
「とても気に入っているよ。TMGはとてもいい仕事をしてくれていると思う。青木(徳生)さんは、ドライバーのコメントに耳を傾けてくれるし、いつも謙虚に改善を求めて取り組んでいる。エンジンフィールを、僕のリクエストしたようにしてくれるんだ。僕らにとって、彼らエンジンエンジニアはかなり強力な武器になってると思う。ラリー中はTMGのスタッフがたくさん来ていて、たくさんフィードバックを集めて、それに沿うように常に改良してくれているからね」

ーー逆にヤリスWRCのウィークポイントは、やはりターマックになりますか?
「コルシカやモンテでは、まずまずの走りができた。でも、もっとテストが必要だね。フィンランドではターマックテストを行う機会がない。この点については、まだまだ時間をかける必要がある部分だと思う。次は、初めて挑むドイツが待っている。そういう意味で、まだターマックイベントにおける様々な洗い出しは終わり切っていない。ターマックでのサスペンションの改良などは、まだ未知の部分を残しているからね。でも、小さな弱点だよ」

ーーフィンランドでテストを行えることが、ヤリスWRCにとって大きなアドバンテージになっているのでしょうか。
「フィンランドにファクトリーがあるネガティブな点は、選手権を転戦する際にロジスティックス(移動)が難しい点だ。ヨーロッパのどの地域からも遠いからね。逆に一番ポジティブな点は素晴らしいグラベルのテストコースがたくさんあること。例えば、FIAに申請するテストエリアを、フォルクスワーゲンはドイツに申請していた。ほとんどがターマックだから、当然ターマックでの進化は進む。逆に僕らはフィンランドのグラベルロードを使えるのが大きな強みになる。トヨタはフィンランドでスピードを気にせずにテストをすることができる。もちろん、この点がターマックでの小さな弱点にもなっているけれどね」

TOYOTA

ーー今シーズンは、ユホ・ハンニネン、エサペッカ・ラッピと、フィンランド人3名のラインナップですね。
「素晴らしい雰囲気だよ。コミュニケーションが取りやすいしね。フィンランドでチームを作る事に成功したトヨタの決定を、僕は心からリスペクトしているんだ。それこそ、フィランド人3名でチームを組むことには反対もあっただろうし、マーケティング面を考えても、こういった決定は、決して簡単にはできない。でも、シーズンをここまで戦ってきて、日本サイドはフィンランドサイドと、とてもいいバッテリーを組んでいる。本当に素晴らしいよ。自分の気持ちを誰とでも共有できることで、僕自身のメンタルもかなり強くなった実感があるんだ」

ーー今回、ラッピが初勝利したことに驚きましたか?
「WRカーに乗り始めて以来、エサペッカのドライブはアメージングだよ。フィンランドで見せたスピードには、正直驚いた。ポディウムに上がれるかもしれないとは思っていたけど、優勝争いに絡んできたからね」

ーーラリーフィンランド2日目の走りに関して、あなたは「無理はしていなかった」と言っていました。それでも、あれだけベストタイムを連発していたんですか?
「そうだね。ヤリスWRCであのステージを走るのは初めてだったけど、あともう少し攻める余地はあると思う。さらに改良すべき箇所も分かっているし、それが改良されればもっとドライビングに集中できると思う。エサペッカは素晴らしい走りをしたけど、金曜日は無理をする必要はないし、フィンランドでは思ったほど走行順の影響は受けなかった。2日目は余裕を持った上でだけど、あれ以上のタイムは難しかったかな。トラブルに関しては、ステージで止まってしまった時は感情的になったけど、まだ学びの最中だし、仕方がないと思ってる」

ーー最後のパワーステージは狙っていましたよね?
「パワーステージは走行順が2番手で、最大限のパフォーマンスで攻めたけど、ベストを獲ることができなかった。シケインやジャンクションで砂利を履かなくてはならないので、ブレーキングが厳しくなるからね。でも、このラリーで僕が得た経験は、きっと次に活きてくると思う」

ーー今シーズンはあと何勝できると思いますか?
「ヤリスWRCに満足しているし、自信を持ってドライブできている。フィンランド、ポーランド、サルディニアでは、コンスタントに速さを見せることができた。ドイツはちょっと厳しいかもしれないけど、ポディウムを争えれば、とてもいい結果だと思う。そして、残りの3ラリー、カタルニア、ラリーGB、オーストラリアでは、絶対に優勝を狙いたい。今年中にあと1勝できたらいいと思っている」

ーー選手権争いも、まだ可能性があるのでは?
「ドイツでは走行順が4番手になる。その後は走行順が影響してくるラリーが続く。カタルニアもグラベルがあるからね。状況によっては、ちょっと泣きたくなるかもしれないけど(笑)、残りのイベントはまずまずの走行順になるはずだ。どうなるかな……? タイトル争いは、確かにまだ大きなチャンスを残していると思っているよ」

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