ホンダは、6月28日に米国コロラド州で開催される「パイクスピーク・インターナショナル・ヒルクライム」のマシン「Electric SH-AWD with Precision All-Wheel Steer」の写真とメカニズムを公開した。
参加クラスは賞典外となるエキシビジョンクラスで、カーナンバーは901。公開された写真はハイブリッド車のCR-Zがベースのようだ。前後のフェンダーは拡幅され、リヤフェンダー前部には冷却用と思われるインテークを配置している。フロントバンパーのカナードや目を引く大型リヤウィングなど、空力面での工夫も見て取れる。しかし最大のポイントは車名にもなっている技術のようだ。
ホンダによれば、車名の「Electric SH-AWD」は、4つのモーターを四輪それぞれに駆動力を自在に制御するというもの。ホンダはすでに、4輪の駆動力を自由に制御する技術「SH-AWD」をレジェンドで実用化しているが、レジェンドがフロントをエンジン、リヤをツインモーターで駆動させるのに対し、今回のマシンでは4輪を個別にコントロール。プラスのトルク(駆動力)のみならずマイナスのトルク(減速力)もそれぞれ四輪で制御することで、コーナーでは車両が自ら内向きのヨーモーメントを発生させることが可能となり、従来のSH-AWD以上のかつてないオン・ザ・レール感覚をもたらすとしている。
車名に刻まれたもうひとつの技術「Precision All-Wheel Steer」は、後輪のトー角度を左右独立で制御できる電動アクチュエーターを装備し、 コーナリング時などはドライバーが行きたい方向に導く感覚や、直進時などは走行安定を保つ制御システムだ。プレリュードに搭載された「4WS」という技術があったが、それをさらに現代のマシンで、日常のみならずレースシーンまで含めて進化させたものと考えていいだろう。これらの技術が完成すれば、かつてない安定感とスピードでコーナーを駆け抜けることができるようになる。
ホンダは今回のパイクスピーク参加について、4輪R&Dセンターが進めている“理想の操縦安定性”と車を操る“FUN”の追求という、研究開発テーマの確認の一環であるとコメント。研究施設のテストコースより過酷な条件下でデータを収集し、技術の到達度を確認するとともに、若手技術者のチャレンジの場として位置付けているという。
ドライバーはすでに発表済みのとおり、全日本ジムカーナ選手権などで活躍しているレーシングドライバーの山野哲也が務める。開発段階から関わっているであろう山野のドライブで、技術者たちの挑戦がどのように結実するか、注目だ。なお、パイクス参戦のため、全日本ジムカーナ第5戦スナガワラウンドは欠場となっている。