大御所WRCメディア、マーティン・ホームズが、長年の経験に基づく独自の視点で切り込むMartin’s eye。今回は、ラリーモンテカルロ通算6度目の勝利を5連覇で飾ったセバスチャン・オジエにスポットをあてる。トリッキーなコンディションでの勝利の秘訣は、自身もあずかり知らぬところにあるのかもしれない?
セバスチャン・オジエがモンテカルロで6度目の勝利を飾ったことにより、セバスチャン・ローブが持つ通算勝利数7まであと1つに迫った。
この勝利について、評価は非常に幅広い。モンテカルロのマスターなのか、それとも運に恵まれているのか。運について言えば、今回も間違いなくオジエが強く引き寄せていた。最初のスピンがダメージなしにやりすごせたのは、わずかなミスが命取りになりかねないラリーでは、運に恵まれたとしか言いようがない。
2日目にディッチに滑り落ちた際も、周辺に手を貸してくれるスペクテイターがたくさんいたという幸運があった。彼のミスが内容とは真逆にハッピーに終わることは多々あり、そういう意味では彼のミスは、適切な場所で適切なタイミングで起きていることが多い。
そして、先頭走行を強いられる最初の2日間を終えると、次の日のラリーは雪に見舞われた。上位陣はリバースオーダーとなり、オジエの走行順はがぜん有利な位置となった。この日、オジエの秘めたる才能は最高潮に発揮され、タナックはタイムロスを喫し、オジエ自身は自分のタイムをコントロールするだけで済んだ。強靭なハートを持つオジエは、最終日に1分半つけているから心配する必要はないと言い聞かせたことだろう。この大差は、2番手で追うオィット・タナックに、挽回を思い留まらせるに充分だった。
運さえも味方につける真のチャンピオンが見せた、超越的な戦略だった。
(Martin Holmes)