大御所WRCメディア、マーティン・ホームズが、長年の経験に基づく独自の視点で切り込むMartin’s eye。今回はラリーメキシコのパワーステージで、シケインを通過しなかったとして与えられたセバスチャン・オジエのペナルティについて考察を行う。
WRCメキシコ戦、パワーステージでシケインを恣意的に通過しなかったとしてSSタイムに対して10秒のペナルティが課されたセバスチャン・オジエ。この結果、パワーステージタイムで獲得できるはずだった4ポイントを逃しており、オジエとMスポーツ・フォードは裁定に対して抗議を行う意思を表明した。
この動きに関して、WRC関係者にはこの抗議を「非常に称賛できるもの」という声も挙がっているようだ。
「もし、このペナルティが通れば、ドライバーはミスをすることが許されるという考えがいいことに変えてしまうことになる。彼はアドバンテージを得たいと思っていたかもしれないが、それは外から見れば、純粋にアクシデントだったかもしれないとも言える。アクシデントに対して、ペナルティを与えることができるのだろうか?」
さらに、当該シケインを作る障害物が移動可能なもので作られていたために、ドライバーは障害物の位置が移動すれば同じラインを辿ることができないという基本的な不公平感も同時に存在している。さらに、そもそもステージ走行中に、障害物の位置がずれた際には、マーシャルが本来の位置に戻さなくてはならなくなる危険性も持っている。
ラリーGBで起きたユホ・ハンニネンのアクシデントでは、ヒットした干し草ロールがコースラインにまで侵入してしまった。一方でラリーフィンランドでは、動かすことのできない大型のトラクターがシケイン障害として置かれたことも物議を醸したが、この際は影響を受けたドライバーはいなかった。メキシコでのケースは、ペナルティが障害物に接触した全ドライバーではなくひとりのドライバーにしか与えられなかったという不公平もあった。
オジエのタイムの修正は、審査委員会の権限により公正を期すためにペナルティが加味されたものではなく、オジエのタイトルのチャンスにダメージを与えるために行われたという見方もあり、この責任はさらに上層部のスポーティング組織が担うべきものだ。
(Martin Holmes)