2018年全日本ラリー選手権第6戦「2018 Sammy ARKラリー・カムイ」は、7月1日(日曜日)、競技最終日となるレグ2に設定された4SSを走行。前日を2番手で終えていた新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI)が首位に浮上し、同じく2位に浮上した勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)に10.6秒差をつけて勝利を飾った。前日首位の鎌田卓麻/市野諮(スバルWRX STI)は3位で、スバル勢が表彰台を独占した。
この日はORCHID (22.91km)とKNOLL(7.84km)の2SSを2ループする構成。今大会最長となるORCHIDは、舗装区間の距離も長く、今回最大の山場と見られているステージ。この日のラリーエリアは朝から雨に見舞われウエットコンディションとなった上に、柔らかいグラベル路面は雨に濡れた泥が覆い、リタイアが続出するサバイバル戦となった。
JN6クラスは、前日を首位鎌田に5.1秒差で終えていた新井が、この日最初のSS8で鎌田を5.8秒先行する2番手タイムを叩き出し、この時点で首位に浮上。すると続くSS9でもステージウインを連取し、一気に後続を引き離しにかかる。しかし、タイム的には好調に見える新井も「ORCHIDは中途半端な走りをしては全然ダメ。危なくて心が折れそうになった。もう1本のKNOLLはフカフカで、2ループ目は轍が掘れてしまうんじゃないかな。残り2本のSSはセッティングがどうのこうのではなく、心の持ちよう」と警戒を見せる。その言葉通り、このSS9では、鎌田が石に引っかけてパンク。30秒以上をロスし、ここで優勝争いからは脱落してしまった。替わって2番手に上がった勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI)は、2ループ目のORCHIDも1ループ目と同じくベストタイムをマーク。一方の新井も4.7秒差のセカンドベストでペースをコントロールすると、最終SSでは再びステージウインを重ね、2位の勝田に10.6秒差を付け優勝を飾った。逆転優勝を飾った新井は「(鎌田)卓麻も(勝田)ノリも速いので、前みたいに簡単に勝てないなと思った。すべてを全開で走らないと勝てない。同じ走りをしても、速いところと遅いところの差が出てくるので、クルマのセッティング面でもその辺りを何とかしないと。でも、3連勝で、後がラクになるね」とタイトルに向けての手応えを語った。
JN5クラスは午後のセクションから波乱の展開となり、前日をトップで折り返した小濱勇希/馬場雄一(シトロエンDS3 R3T MAX)がSS10でコースアウトしてリタイアするという番狂わせが発生する。また、2番手を走行していた川名賢/保井隆宏(シトロエンDS3 R3 MAX)もこのSSでスタックし、4分以上タイムをロス。さらに最終SSでサスペンションを破損してリタイアしてしまう。結果的に、SS10でトップに浮上し、最終的にはクラス唯一の完走を果たした横嶋良/木村裕介(プジョー208 R2)が逆転優勝となった。「午後は、昨日からモヤモヤしていたことが分かってきました。次戦(いわき)までテストする時間があるので、しっかり対策して、福島は序盤戦からライバルにプレッシャーをかけられるように頑張っていきたいと思います。まだまだR2のポテンシャルを発揮できていない部分があるので、次戦でもポテンシャルを発揮できるよう頑張りたいと思います」と満足を見せた。
JN4クラスは、前日首位の上原淳/漆戸あゆみ(ホンダ・シビック type Rユーロ)がこの日最初のステージをベストタイムでまとめて2番手関根正人/草加浩平(スズキ・スイフトスポーツ)との差を25.7秒に広げると、その後はペースをコントロール。11.1秒のギャップを残して、クラス優勝を飾った。クラス2位は、この日2本のステージでベストタイムを奪った関根が入賞。この日最初のSSで3番手に浮上していた山本悠太/北川紗衣(トヨタ86)が、そのままポジションを守り切って表彰台に上がった。前戦に続いての2連勝となる上原は、「1ループ目のステージはだいたい勝つことができたので、2ループ目を抑えていくことができました。最後の2本は大人の走りだと自分で自分をほめたいです(笑)。この勢いで、ラリー北海道までいきたいですね」とベテランの貫録を覗かせた。
JN3クラスは、SS8のロングステージで前日首位の天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ)がベストタイムをマークするが、続くSS9では「(ウエット)タイヤがこのステージに当たった」という大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT)が天野に7.6秒差をつける奮闘を見せてくらいつくが、この時点で天野との差は43.6秒差。残る2SSは天野がステージウインを連取し、最終的に大倉との差を1分40秒に広げて優勝を飾った。初日3番手の松倉拓郎/猿川仁(マツダ・デミオ)は、前日からのポジションをキープして3位に入賞。天野は「思った以上に大倉選手が速かったことと、自分のミスもあって思うようにタイム差がつけられなかった。特にKNOLLはタイムが拮抗。3速と2速のシフトチェンジが多いので、シフトチェンがないCVTの有利さも出ているのだと思う。去年も同じような傾向が出ていた」と状況を分析した。
長﨑雅志/秋田典昭(トヨタ86)と明治慎太郎/北田稔(トヨタ86)の一騎打ちとなっていたJN2クラス。3.7秒の僅差でこの日を迎えたが、この日のオープニングステージとなるSS8で明治がコースオフしてリタイアとなり、その後は長﨑のひとり旅となった。優勝の長﨑は、「SS8の途中で明治選手が止まっているのがみえたので、そこからは完走ペースに切り替えて、完走を目標に置きました。初めて全日本に挑むシーズンなので、その中でもクルマと相談しながらいろいろな走り方など試し、今後の糧になるよう勉強しながら走りました。初日をトップで終えて明治選手にプレッシャーになった点が勝利に繋がったと思います」とラリーを振り返った。
激戦となったJN1クラスは、この日最初のステージとなるSS8で前日首位の古川寛/廣田幸子(スズキ・スイフトスポーツ)が、初日2番手の須藤浩志/新井正和(スズキ・スイフトスポーツ)に7.1秒差をつけるベストタイムを叩き出すと、続くSS9でも11.2秒差をつけて、初日は3.5秒だった須藤との差を21.8秒に広げる。「2日目は走り方を変えた」という須藤は、「当たっていなかったみたい。走りを変えたことで勝敗が付いてしまった感じ」と、ここでポジションキープ宣言。結局、残る2SSも古川がステージウインを重ね、28.7秒差をつけてクラス優勝を火ざっら。2位は須藤、3位には、前日4番手から追い上げた小川剛/藤田めぐみ(ホンダ・フィット)が食い込んだ。
全日本ラリー選手権第7戦の舞台は、全日本戦2年ぶりの開催となる福島。拠点を前回までの棚倉町周辺から、いわき市小名浜地区を拠点に開催される。ステージはこれまでのラリーで使用されてきたステージが多く、各クラスとも僅差の接戦が繰り広げられることが予想される。「MSCCラリー in いわき2018」の会期は、8月23日(金)〜26日(日)。
2018 Sammy ARKラリー・カムイ 正式結果
JN6-1 新井敏弘/田中直哉 スバルWRX STI 1:22:20.8
JN6-2 勝田範彦/石田裕一 スバルWRX STI +10.6
JN6-3 鎌田卓麻/市野諮 スバルWRX STI +55.8
JN5-1 横嶋良/木村裕介 プジョー208 R2 +9:20.5
JN4-1 上原淳/漆戸あゆみ ホンダ・シビック type Rユーロ +9:29.8
JN3-1 天野智之/井上裕紀子 トヨタ・ヴィッツ +10:59.6
JN1-1 古川寛/廣田幸子 スズキ・スイフトスポーツ +11:43.3
JN2-1 長崎雅志/秋田典昭 トヨタ86 +15:52.5