FR時代終わりに吹いた風
1987年、時代はグループA。ツーリングカーレースを制するべく誕生したM3は先達M1と同様、戦いのフィールドをラリーにまで広げた。水先案内人は、プロドライブのデイビッド・リチャーズ。時代が4WDターボへとシフトしていくなかでスペシャリストたちに操られツール・ド・コルスや欧州各国の選手権で名を上げていく。羊腸の隘路で見せた輝きは多くのラリーファンを虜にした。短期間ながら強い光を放った名車の背景を探る。
RALLY CARS GALLERY
ストリートのレーシングカー
BMWモータースポーツ社が開発したM3をラリーカーに仕立て上げたプロドライブ。6速ドグミッションとラリー用サスペンションで武装したそれはコルシカを筆頭としたターマックイベントを主戦場として4WDマシンのライバルたちを震撼させる速さを発揮した。今もプロドライブに保管されるM3は何を語りかけてくるのか。
[PLAYBACK the Rally Scene 1987-1991] 傍流、侮るなかれ
体裁はあくまでもプロドライブその他の運用によるプライベーター。しかしシンプルだが考え抜かれたパッケージを持つBMW M3は、ヨーロッパ各国の国内ラリー選手権やWRCの舞台で活躍、素直な操縦性と高い信頼性は多くのドライバーに愛され、並み居るワークスマシンたちと互角以上の戦いを繰り広げた。
BMW Rallying History
国際ラリー黎明期の躍動
BMWがラリーで活躍したのはM3が初めてではない。第二次世界戦後の国際ラリーの発展に歩みを合わせるように歴代の主要車種がステージに登場。2002tiはWRC優勝も果たしている。
M3と歩んだプロドライブ創世記
逆風を越えて
世界チャンピオン獲得を契機に現役生活に区切りをつけ、自らのチームを立ち上げたデイビッド・リチャーズが、ポルシェに続いてパートナーに選んだのがBMWとM3だった。ラリーとレースで展開された活動はプロドライブに大きな成果とノウハウをもたらし、その後の飛躍の礎となった。
デイビッド・ラップワースが語る
M3ラリーカー誕生のストーリー
競技車両となるべく生を享けたM3。しかしそれはサーキットに向けてのことだ。そのマシンをラリーカーにすべく奮闘しそこから多くの学びを得たプロドライブ。今も昔も、その技術部門を率いる男に聞いた。
[Interview with Key Person]
ベルナール・ベガン
「これまでこんなことを聞かれたことなんてなかった」気さくなベルナール・ベガンは開口一番、ジョークを飛ばす。引退後、フランスモータースポーツ界の重鎮として働いた彼はプロドライブとFRスポーツでWRCを戦った日々、野心に燃えるデイビッド・リチャーズとの関係などその明晰な記憶力を駆使し、たっぷりと語ってくれた。