大御所WRCメディア、マーティン・ホームズが、長年の経験に基づく独自の視点で切り込むMartin’s Eye。まだ来年の去就についての発表を行っていないドライバーの一人が、ヘイデン・パッドンだ。英国ウェールズで開幕したラリーGBのスタートを前に行われたヒュンダイのメディア向けイベントで、今季をスポット参戦で過ごしているパッドンに、この一年、そして今後の可能性について聞いた。これまであまり触れてこなかった、2017年モンテカルロでのあのアクシデントについても言及している。
ウェールズ・ラリーGBに参戦している数々のドライバーの中で、来年のWRカーのシートが確定していない一人がヘイデン・パッドンだ。イベント前の記者会見では、2019年にドライブできる自信があると答えていたパッドン。まずは、ダニ・ソルドとヒュンダイのサードカーをシェアするプログラムを過ごした今年1年について聞いた。この状況はフラストレーションが溜まるものなのか、それともこの機会を好意的に受け止めているのだろうか。
HP: もちろん、フルシーズンを戦いたいと思うが、今年の初めにこの状況を僕らは受け入れた。今年は、この状況をできる限り活かすことにだけ努めてきた。今年は、リビルドの年になっていると思う。フル参戦に戻りたければ、再び安定感を取り戻し、手堅いリザルトを得られるようにならなければならない。ラリーやテストを思うようにできない状況は難しい。最終的に必要な力量の1-2%はロスすると思う。でも、何だかんだとそれを始めてしまったのだから、それを補填していくしかない。
MH: フィンランドで4位、トルコで3位という結果が得られたのは、悪くなかったのでは。
HP: 難しいラリーだった。自分たちにできることは、ラリーでできる限りいい仕事をしてチームのために確実にポイントを取ること。ここ3戦はそれができている。ヒュンダイというブランドが世界的な価値を維持し続けることは、自分にとってもかなり重要なことだ。全てが相互につながっている。とにかく、それをつなぎとめようと、がんばっている。
MH: フル参戦していないことによって、どのような形で感覚が鈍ると感じているか。
HP: そのことこそ、自分ができる限りWRC以外のラリーにも積極的に参戦している理由だ。感覚を研ぎ澄ませ続け、できる限り走り続ける。でも、最終的にはWRカーや、WRCレベルでのラリーを走ることが必要になる。このマシンは、世界の最高峰に君臨するものだからね。それをドライブする機会が減るということは、単純に前のように自然な形でドライブすることができなくなるということ。もちろん、ここ最近は舗装での走行が激減している。ターマックでも自分はまずまずの走りができると思っている。たぶんトップ5くらいはね。だから、今はその経験が不足している。この点は、今季の状況の中で、一番深刻に影響を受けている部分と言えるかもしれない。
MH:来季について、期待できることは。
HP: もちろん、今のチームに残る方向で話し合いを進めている。この状況はともかく、自分はとても満足している。このチームと一緒に働けてうれしいし、いい友達もたくさんいる。ブランドへの傾倒も自分にはとても重要だ。とにかく話し合いを続けて、来年にどうつながるか、様子を見ている。
MH: ヒュンダイ・ニュージーランドとのつながりは、WRC選手権への参戦次第になるのか。
HP: どのブランドも、それぞれにつながりを持っていると思う。ヒュンダイ・ニュージーランドは、自分たちの活動をとても支援してくれている。マーケティング面でも、自分たちの今の状況を作るための財政面でも、多大な投資を行っている。WRCの枠を超えて何年も何年も続けて行くことのできる関係だし、とてもうれしく思っている。でも、全てが一つにまとまらなくてはならない。最終的に、ラリーの商業的な側面を話し合うようになると、それがややこしくなることもある。
MH: ヒュンダイからWRCに参戦することだけが選択肢なのか。
HP: あまり視野を狭くしたくはないけど、それが一番の選択肢であることはもちろんだ。ここにいたいと思っている。でも、フル参戦をしたいとも思っているので、他の可能性を否定することはできないね。
MH: ヒュンダイ・ニュージーランドとの関係による先入観があったとしても?
HP: うーん、だからとても難しくトリッキーになっているとも言えるね。適切なチャンスを見極めるのは、5年、10年先の適切な選択肢を考えるのではなく、今この時の判断が求められている。もちろん、WRCキャリアの、その先5年、10年、20年のことも考えている。その時、自分は何をしているんだろうね。
MH: 今年を振り返って、最も素晴らしかった瞬間は。反対に、最悪だった瞬間は。
HP: ポルトガルは、最高であり最低でもあったと言えるかもしれないね。3カ月マシンに乗っていなくて、デイ1をリードしていたのは、明らかにいい瞬間。とてもよかったし、スムーズにその状況に至った。でも、デイ1の最終ステージでクラッシュしたのは、その時の順位を考えれば、もちろん最悪のことだ。そこからは、とにかく自分をリビルトしていた。昨年はとてもミスが多かった。自分はキャリア全体を通して、かなり安定してラリーをフィニッシュしていた。昨年は、それが全くなくなった。今年は、とにかく自分はミスをすることを恐れなくていいんだという自信を取り戻したかった。自分自身の一貫性と、いいリザルトを出せる走りができる自分を信じて。そして来年は、もっとポディウムや勝利を目指してプッシュを始めたい。
MH: ミスをするという話しについて、自分のミスはフル参戦のペースではないことが原因なのか。
HP: 去年は本当にたくさんの要素が理由にあった。ラリーに関することだけではなく、それ以外のところでも。長くやっていれば、そんな年もある。今年は、ミスを最低限に抑えるよう努めている。その点については、今年はまずまずの結果を出していると思う。無制限にリスクを負わないようにしている。もちろん、このレベルでの速い走りはするが、通常のようなレベルではリスクは負わない。これは、今の自分たちが置かれている現状の中で必要な要素だ。
MH: 昨年のモンテカルロでの件は影響しているか。
HP: もちろん、モンテの直後、数戦はあった。でも、4月か5月には気持ちを立て直して、通常のリズムをつかみ始めた。またラリーをリードできるようになって、ベストタイムも出していた。でも、昨年は完全には切り替えができなかった。それには、モンテのアクシデントだけではない、たくさんの理由がある。
MH: そして、今年の残りのプランは。
HP: もちろん、ラリーオーストラリアが残っているし、ニュージーランド選手権の最終戦にも参戦する。ラグラン・オブ・コーストラリーは、昔のラリーニュージーランドのワーンガコーストを始め、あのエリアの本当に素晴らしいステージを使うよ。その他にも、ニュージーランドの小さなラリーで数戦、走る。ターマックでのドライブ勘を取り戻すために、ニュージーランドで小さな舗装ラリーにも出ようと思っている。
(Martin Holmes)