WRCではローブの9連覇に向けて邁進するシトロエンだが、ヨーロッパ経済危機のあおりを受けて本社の市販車売り上げは大幅な落ち込みを見せており、関係筋では今季限りでWRCを撤退するのではという憶測が広がっている。英国AUTOSPORT誌が報じた。
シトロエンのWRCでのワークス活動は2013年までの契約だが、チーム代表のイブ・マトンと前任者のオリビエ・ケネルはいずれも、母体となるPSAグループの最上層部から、シトロエンが長期的なスパンでWRC活動を行う方針を示されていた。
しかし、2012年上半期のシトロエンの売り上げは、2011年の同時期に比べ25万台も減っている。
マトンは、WRC活動と売り上げの落ち込みには関連性はないと主張したものの、来季、シトロエンがWRCに残るかどうかの鍵は、シリーズ8連覇中のエース、セバスチャン・ローブがラリーを続けるかどうかにかかっていると語った。
「セブが続けることは我々にとって非常に重要。彼を説得するつもりだ」とマトン。
これまで12年間もシトロエンと関係を保ち続けてきたローブに対し、シトロエン側はこれまで以上の好条件をオファーしている。
ローブは現在、ドライバーズタイトル争いでは38ポイントのリードを築いての首位に立っており、9連覇達成の可能性は濃厚。WRC残留を検討している中、シトロエンのトップはローブに対し、PR活動やテスト量を減らしていく方向性を示したことが明らかになっている。そこには、ローブには自身の名を冠したレーシングチーム、セバスチャン・ローブ・レーシングでのレース活動に移行してもらいたい願望があるようだ。
ローブ自身は、今後の活動について、7月末にはシトロエンに決断を伝えるものと見られている。一方、シトロエン側は、7月12日にパリで役員会議を開いており、ここでの内容がWRCプログラムの行方に大きな影響を与えることになりそうだ。
PSAグループは「プジョーとシトロエン、両ブランドが伝統的に強さを誇ってきているフランス、スペイン、イタリアの市場は、深刻な危機に瀕している」と声明を出している。
日本でこそシトロエンの販売台数は大幅に伸びているが、全世界的には13.6%減。ヨーロッパではシトロエンの車両登録が12.6%減っており、フランス単独では13.3%減となっている。