全日本ラリー選手権第2戦新城ラリーはすべての競技日程を終えて、SUBARU WRX STIの勝田範彦/石田裕一がシーズン初勝利を獲得した。2位には三菱ランサーエボリューションXの奴田原文雄/佐藤忠宜、3位はSUBARU WRX STIの新井敏弘/田中直哉が入っている。
この日は前日にも行われた「県営新城総合公園」と「鬼久保」に、「雁峰西」を加えたステージ構成。それぞれを2回ずつ走行する計6SSで争われる。なかでも「雁峰西」は距離が14.84kmとラリーの中で最も長く、雁峰を得意とする勝田にとっては大きな勝負どころと言えた。天候は朝から晴れ時々曇り。ただし午後に向けて下り坂、場合によっては降雨の可能性もありという状況でラリーはスタートした。
JN1クラスは勝田、奴田原、新井による三つ巴のバトルに注目が集まった。前日のSS6までを終えた段階で、首位勝田と2番手奴田原の差は1.8秒、奴田原と3番手新井の差は3.7秒と、ひとつのミスで順位が入れ替わる状況だ。そして迎えたオープニングステージの「県営新城総合公園」では新井が渾身のベストタイム。奴田原が0.3秒差のSS2番手で続き、勝田は1.8秒差のSS5番手に甘んじた。総合順位に変化はないものの、これで勝田の奴田原に対するリードはわずか0.3秒に削られてしまうことに。続くSS8「雁峰西」ではこの林道を得意とする勝田が順当な一番時計。奴田原との差を4.3秒に拡大し、逃げ切りを図る。しかし奴田原もこのままでは終わらず、SS9「鬼久保」を制して勝田を逆転。勝田との総合タイム差1.4秒とし、今大会3度目の首位に返り咲いてみせた。
サービスを挟んだSS10「県営新城総合公園」では、タービンを交換した新井がベストタイムをマークするが、上位ふたりとの差は思うように縮まらない。一方の奴田原は勝田のタイムをしっかりと上まわり、リードを2.3秒に拡大した。ラリーは勝負どころと目されるSS11「雁峰西」へ。ここで勝田は爆発的なスピードを見せ、SS2番手の奴田原に17.4秒という大差をつけるベストタイムをたたき出した。総合順位でも奴田原に15.1秒の差をつけて首位を奪還。最終SSの「鬼久保」を前に大きなマージンを得ることとなった。その最終SSでは天候が崩れ、なんとフィニッシュ付近では雪が降り始めるコンディションに。勝田はこのSSを慎重に走り切って、地元ラリーでうれしい今シーズン初勝利を獲得。2位には奴田原、3位には新井という順位となった。4位には福永修/齊田美早子、5位は徳尾慶太郎/枝光展義と三菱ランサーエボリューション勢が続いている。
バラエティ豊かな車種が出場して注目を集めたJN2クラスは、トヨタ・ヴィッツGRMNの眞貝知志/安藤裕一が初日のリードをさらに拡げて今シーズン2勝目を獲得した。2位には大排気量エンジンを搭載するレクサスRC Fの石井宏尚/寺田昌弘が入り、3位は今シーズンからトヨタ・ヴィッツGRMNを駆る中村英一/大矢啓太という順位となった。4位はトヨタGT86 CS-R3の鷹野健太郎/ウシニナ・ヤナ、5位はフォルクスワーゲン・ポロGTIを初投入した竹岡圭/佐竹尚子となっている。眞貝は「マシンに課題が見つかり、全開というペースではない」と語るものの、クラストップを堅持して危なげなくフィニッシュまでマシンを運び、今季2勝目を獲得した。
「我慢のラリーになりましたが、それでも無事にフィニッシュまでクルマを持ち帰ることができて良かったです。JN2も今回から様々なエントラントが増えましたし、どんどん盛り上がってほしいですね」と眞貝。大柄なレクサスで2位に入った石井は「上出来で、皆さんに感謝という気持ちしかありません。こういった目立つクルマで出て、自分にプレッシャーをかけて走って、こうやって完走できて素直に良かったです」と、喜びを語った。
86勢のバトルとなったJN3クラスは、山本悠太/山本磨美が競り勝ってシーズン初勝利。2位には山口清司/竹原静香、3位には長﨑雅志/秋田典昭が入った。山本と山口は0.9秒という僅差でこの日をスタート。ほぼすべてのSSで1秒以内での接戦が繰り広げられたが、SS11の雁峰西で山本は渾身のベストタイムをたたき出し、バトルに決着をつけた。山本は「初日は今までにないくらいグリップのあるコンディションで走れて楽しかったんですが、最終日は雨が降ったり、雪もあって、誰も予想できなかった難しいラリーでした。それでも、シーズン初参戦のラリーで幸先良く勝つことができました。去年は非常に悔しい思いをしているので、今後もこの調子でいきたいです。タイヤが良く合っていたので、唐津も勝てるように頑張ります」と、ラリーを振り返り笑顔を見せた。また4位には曽根崇仁/木村裕介、5位には川名賢/梅本まどかが入賞した。
高橋悟志/美野友紀が大きくリードを築いていたJN4クラスは、スズキ・スイフトスポーツ勢の争いとなった。2日目は、初日首位の高橋がそのままリードをさらに拡げて逃げ切り優勝。2位には内藤学武/小藤桂一、3位には西川真太郎/本橋貴司が入っている。高橋は「すべてがうまくいったラリーで、何も言うことはありません。最初に逃げ切ったのが大きかったです」と、序盤のリードが勝ちにつながったと振り返った。2位の内藤は「マシンを乗り換えて臨んだラリーで走り切ることができ、しかも成績を残せたので良かったと思います。今後に向けて手応えを感じました。次に来る時は、もうひとまわりマシンを速くして戻ってきたいですね」とコメントしている。
JN5クラスは、初日首位に立っていた天野智之/井上裕紀子が危なげなくシーズン2勝目を獲得。2位にはマツダ・デミオの岡田孝一/廣田幸子、3位はトヨタ・ヴィッツ(NCP91)の佐藤光理/松井弘成が入っている。天野は「2本目の雁峰西でようやくペースを上げられて、良かったです。ターマックラリーの初戦ということもあって、初日はなかなか調子が上がらなかったんですが、2日目でペースを上げることができました。次に向けて、いいトレーニングになったと思います」とコメント。また全日本ラリー選手権初表彰台となった佐藤は「最後までブレーキが持たず危なかったんですが、後ろと差があったので、抑えつつなんとか走り切れました。この旧型で全日本を追うのはパフォーマンス的に厳しいので、次は新しいクルマを購入してからですね(笑)」とラリーを振り返った。
JN6クラスは、ヴィッツCVTを駆る大倉聡/豊田耕司が初日からのリードを活かして2勝目を挙げた。2位は、ポジションアップを果たした いとうりな/大西紗智、3位は板倉麻美/蔭山恵と、バラエティ豊かな車種のなかでヴィッツCVTが表彰台を占める結果となった。4位はATのマツダRX8で挑戦する中西昌人/福井林賢、5位はフィットRSのクロエリ/加勢直毅、6位は日産ノートe-POWER NISMO Sの水原亜利沙/中村理紗となっている。連勝を飾った大倉は「今回のラリーも何事もなく走り切れて良かったです。終始路面も安定していましたし、ギャラリーもいっぱい入っていて、イベントとしては大成功だったと思います。最終SSは雪が降ってノーショナルタイムとなりましたが、賢明な判断だと思います。次戦の唐津は昨年スキップしているので2年ぶりです。大好きなラリーですし、ステージもチャレンジングなので、この1年で一番楽しみにしています」とコメントしている。
次戦は第3戦ツール・ド・九州2019 in 唐津。佐賀県唐津市のワインディングを舞台とするターマックラリーは、4月12日~14日にかけて開催される。
新城ラリー2019 最終結果
1. 勝田範彦/石田裕一(スバルWRX STI) 1:03:46.9
2. 奴田原文雄/佐藤忠宜(三菱ランサーエボリューションX) +5.7
3. 新井敏弘/田中直哉(スバルWRX STI) +31.5
4. 福永修/齊田美早子(三菱ランサーエボリューションX) +1:31.2
5. 山本悠太/山本磨美(トヨタ86) +3:23.5
6. 山口清司/竹原静香(トヨタ86) +3:58.2
7. 高橋悟志/美野友紀(スズキ・スイフトスポーツ) +4:25.9
8. 眞貝知志/安藤裕一(トヨタ・ヴィッツGRMN) +4:34.1
9. 天野智之/井上裕紀子(トヨタ・ヴィッツ) +5:02.4
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17. 大倉聡/豊田耕司(トヨタ・ヴィッツCVT) +6:29.0