WRCドイツのフィニッシュ後に行われたイベントカンファレンスの内容(抜粋)。フィンランドで久しぶりにポディウムに上がり、続くドイツでも勢いを維持したラトバラ。チームのポディウム独占がかかる状況のなか、土曜日の夜はとにかく冷静になることが重要だった、と隣席のアンティラが冗談を交えて語った。
●WRCポストイベントカンファレンス出席者
1位:オィット・タナック=OT(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
1位:マルティン・ヤルベオヤ=MJ(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
2位:クリス・ミーク=KM(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
2位:セバスチャン・マーシャル=SM(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
3位:ヤリ−マティ・ラトバラ=JML(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
3位:ミーカ・アンティラ=MA(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
トミ・マキネン=TM(トヨタ・ガズーレーシングWRTチーム代表)
Q:オィット、まるで昨年のデジャブだ。フィンランドで勝ち、ここドイツでも勝った。ラリードイツはこれで3連覇。今回は、ほぼ完璧な流れだったようだ。完勝だったのでは。
OT:ほぼ、ね。唯一のターゲットは、あらゆるミスを避けることだった。かなり序盤から、ティエリー・ヌービルとの戦いは本当にタイトだった。金曜日はステージのたびにコンマ1秒か2秒は彼より速かったが、土曜日は逆だった。ティエリーの方が自分よりも速かった。厳しくなりそうだったので、もし同じ流れが続いていたら2位でも仕方ないと思った。もちろん、自分もずっとミスなく限界での攻めに挑み、最終的にそれができた。だから、もちろんフィニッシュできてハッピーだ。
Q:チームとしても素晴らしいリザルトで、トヨタが1−2−3。現在の世代のトヨタでは、初めてだ。トヨタの3台がポディウムに上がったのは、1993年のサファリラリーが最後。久しぶりのことだ。このチームの快挙にはどれだけ満足か。
OT:このようなリザルトを収めることは重要だ。ほんの少し前、サルディニアでは劇的な幕切れとなったが、あのような状況を経験するとチームには緊張が張り詰める。フィンランドでは2台がポディウムに上がり、今回は3台。だから、チームにとって重要なリザルトだ。特に、チームのメンバーひとりひとりのモチベーションになる。自分たちの努力が報われたと感じられるし、このモチベーションを高いままキープして前に進んでいきたい。
Q:パワーステージでは、これまで優勝が確実でもマキシマムポイントを狙ってきたが、今回、その前のステージを終えて、たぶん狙わないと言っていた。手応えがなかったのか、または最初から狙っていなかったのか。
OT:実は、1本前のロングステージでちょっとしたことが起きていた。終盤、ブレーキの安定感が失われ始め、それからフロントはブレーキが片方しか使えなくなっていた。リエゾンでいろいろ試したが、何が起きたのか把握できなかった。パワーステージでは最初の2コーナーは試してみたが、思い切りプッシュできるチャンスがなかったので、無事に走り切ることの方が重要だった。
Q:ドライバーズ選手権ではリードを広げ、満足のいくかたちでトルコを迎えることになるだろう。ここでも昨年勝っており、その時はシーズン3連勝だった。この再現を狙わない理由はないと思うが。
OT:そうだね、でもトルコはシーズンで最もハードなイベント。昨年も同じことが言えた。シーズンで最も苦手なイベントだ。あまりパフォーマンスは出せていなかったが、最終的に賢明な走りをした結果が1−2だった。今年は必死に取り組んできているので、もっといいレベルのパフォーマンスを出したい。チームは、このラフなイベントに向けて頑張って準備してくれている。このイベントには、今回と同じようなアプローチが必要なのだと思う。一貫性を持ってパンクをしないことだ。ステージで止まることのないように。それが、このラリーをフィニッシュするための、ベストの方法なのだと思う。昨年を同じ流れにしなくてはならないと思うが、もう少し速さがあるといいね。
Q:マルティン、今回の優勝、そしてラリードイツ3連覇、おめでとう。今年はコンディションがまったく違っていた。快晴で、完全にドライだった。グラベルクルーとの作業にどのような違いがあったか。情報は少なかったか。少し楽だったのでは。
MJ:そうだね、高速のフィンランドからここのターマックに来ると、スピードは同じように見えるが、ターマックではブレーキと加速がもっと早くなると思う。基本的に、自分もすべての作業を少し早く行わなくてはならなかった。グラベルクルーとの作業は、常に緊張がある。コミュニケーションを取る必要がたくさんあるからね。今年は天気がかなり安定していたので、少し楽だったよ。
Q:クリス・ミーク、今年の自己ベストリザルトは、トヨタでの初ポディウムでもあり、セブとも初めてだ。フィニッシュした時の気持ちは。
KM:いい気分だ。正直、1−2−3の一翼を担えたことは特別。滅多にできることではない。今回、僕らは明らかに強かった。フィンランドでも1−2−3は可能かもしれなかったが、そこでは達成できなかった。だから、ここに来た時は自信は完全ではなかった。でもスタートして、ペースが徐々に上がっていった。金曜日はセバスチャン・オジエとのバトルになり、土曜日の午前を迎えた。この時のステージはあまり経験がなく、2017年にウエットで1度走っただけだった。だから、彼を抑え切ることができて、うれしかった。それからパンツァープラッテでは差をつけられたし、彼はそこでパンクをした。
Q:昨日、パンツァープラッテの最後の走りでは素晴らしいタイムをマークした。自分にもマシンにも手応えがあったようだが、あれだけ速く走れると予想していたか。
KM:そうだね。パンツァープラッテの2回目は、いつも少しクリーンになっている。ヤリとの差を広げることはあまり意識していなかったが、セブとは差をつけたかった。マシンのフィーリングはよかった。そんな時に、それを活用しない理由はないよ。ティエリーやセブの例でも分かるように、あそこはパンクしやすいので、余計に慎重になる必要もある。クリーンなラリーができていいタイムが出せたので、2位にふさわしい内容だったと思う。
Q:セブ・マーシャル、走り終えた時の気分は。
SM:クリスやみんなが言うように、ポディウムに上がった気分はアメージング。それも、チームのみんなと一緒にね。みんなが週末を通して、素晴らしい努力を見せた。タフな週末だった。正直、ここにいられて、かなり安心しているよ。特にパンツァープラッテでは、すべてのバンプを感じた。やばい、パンクか? ってね。すごくミスをしやすいが、そんなステージであれだけの差をつけられた。この結果はうれしいよ。
Q:ヤリ‐マティ・ラトバラ、トヨタは1993年に1−2−3を達成している。ラリー博士の君に聞くが、その時、ポディウムの真ん中に立ったのは?
JML:ユハ・カンクネン、マルク・アレン、イアン・ダンカン
Q:博士に隙はないね。
OT:ダンカンって、誰?
JML:地元ケニアのドライバーだ。
Q:何でも知っているね。今回の話を聞こう。ラリー中、いろいろな性格の君を見ることができた。週末の間、考えすぎていることもあった。マキネン先生からは、リラックスをするようにとアドバイスしてもらい、それで気持ちを変えることができたか。
JML:そうだね。彼から電話をもらったのは、2回だ(笑)自分がドライビングに集中している時には、うまく行くのだと分かった。でも、ドライビングテクニックについて考えすぎ始めると、例えば、スムーズに行かなくてはとか、タイヤのことを考えたりとか、コーナー中のスピードを上げようとか。そうなると崩れてしまう。たぶん、自分は考えることができるほど、賢くないのかもしれない(笑)! 幸い、トミが電話をくれて、肩の力を抜くことができた。考えすぎずに、ドライビングに集中したら、よくなり始めた。
Q:1回目の電話がリラックスをすることで、2回目はスローダウンすることか。
JML:違う。2回目は、今日の午前。最初のステージの後だ。ドライビングはよかったと思うが、慎重すぎた。ダニがかなり迫ってきて、たぶん12秒差くらいまで詰まってきたと思う。トミは「パニックにならないで。大丈夫。力を抜きすぎただけだから。心配しなくていい」と言ってくれた。
Q:ミーカ、2戦連続でポディウムフィニッシュだ。ラトバラ−アンティラ戦艦が勢いを取り戻したということか。
MA:そうだね。この流れを続けていきたい。今年の前半のような感じではなくね。とてもよくなったし、気分もいい。
Q:彼が考えすぎているとTV画面でも分かる時があるが、そんな時は何と言うのか。「冷静になって」と言ったりする?
MA:言う時もあるが、土曜日の夜は、たぶん7000人くらいの人が、彼に落ち着けって言っていたと思うよ。で、自分が7001人目! もちろん、自分も同じことを言った。でも、同じことを言っていた人が他にもたくさんいたよ。
Q:なかでも、特に響いたのはマキネン先生からの言葉だっただろう。トミ、おめでとう。チームが1−2−3を達成して、誇らしいことだろう。今、とても満足しているのでは。
TM:そうだね、とても、とてもハッピーだ。みんな、ありがとう。歴史に残る快挙だ。チームのみんなや、彼らが成し遂げたことを、心から誇りに思う。
Q:これまでも何度か1−2−3を達成しそうな流れになったことがあった。今日、ドライバーたちを見るのは緊張していたか、それとも今日はやってくれると確信していたか。
TM:もちろん、タフな時間だった。自分はとても自信があった。幸い、オィットの件は深刻なものではなかった。ブレーキに何が起きたのか、慎重に調査する。テクニカル面で何かが起こるかもしれないということが、一番心配だった。