2015年WRCはシーズン屈指の難関グラベルラリー、アルゼンチン戦を迎える。例年、不安定な天候の元で挑むロングステージでドラマが頻発するが、今年はルートの大半に修正が加えられ、前戦メキシコとはリエゾン距離も格段に長く、より耐久的な試練が強いイベントだ。
■プレビュー
ラリーメキシコのフィニッシュから6週間、WRCのコンペティターは今季第4戦をアルゼンチンで迎える。今年は開催時期が5月から4月に早まったが、それでも南米の初秋に当たるこの時期は相変わらず天候が変わりやすく、高地では深い霧に包まれることもある。
ラリーアルゼンチンは、カレンダーの中でも特色の強いイベントの一つで、様々な路面がミックスされるほか、高低差も天候の変化も激しい。ロングステージも特徴の一つで、50km超のステージが2本設定され、いずれも2回ずつ走行される。イベントのハイライトの一つは名物のウォータースプラッシュで、何千人ものファンがステージ沿いに集まり、週末の間、キャンプをしながら観戦するスペクテイターも多いため、あちこちにテントの花が咲き、バーベキューの匂いが立ちこめ、まるでカーニバルのような雰囲気になる。
今年は開催35回目を記念して、ルートを大幅に変更。サービスパークは例年通りヴィラ・カルロスパスに設定されるが、ラリーアルゼンチンとしては初めて、サンルイのメルロに設定されるショートのスーパーSSがアイティナリーに盛り込まれる。金曜日のラリールート周辺では先日、豪雨による水害に見舞われているが、主催者は全力で地域自治体の復興も支援を行っており、ラリーコースに変更はない。
名門ステージ、修正ステージ、新設ステージがミックスされる今年のラリーアルゼンチンは、これまで以上に見応えのある走りが期待できそうだ。
カルロスパスのスーパーSS(SS6)と、壮大なエルコンドール(SS12)は、国際映像による中継が行われる。
■2015年ルート
メルローサンルイ(SS1)はまったく新しいステージ。SS3/5、SS8/10の一部には2007年に使用したセクションが盛り込まれ、新しいチャレンジとなりそうだ。2014年とまったく同じステージはカルロスパスのスーパーSSと、月面のような光景と称されるエルコンドール-コピナの2本のみ。51.99kmのアグア・デ・オロ-アスコチンガは、今年は逆走の設定となっている。
■ラリーデータ
開催日:2015年4月23-26日
本拠地:ヴィラ・カルロスパス
時差:UTC −3
総走行距離: 1638.47km
総ステージ走行距離:345.70km (SS比率21.06%)
総SS数:12
■開催選手権
WRC
WRC2
WRC3
■主なマシンスペック
・グラベルサスペンション
・リピート走行では深い轍ができるため、車高を上げて対応
・タイヤにはハードとソフトコンパウンドが用意される
■歴史
・初開催は1980年。ラリーコダスールとして知られ、北部のタクマン地方で開催されていた。
・1982年の開催は、アルゼンチンと英国間によるフォークランド紛争のためにキャンセルとなった。
・1983年には南部のバリロケに移ったが、1984年はコルドバで開催された。
・アルゼンチンはサッカー大国としても知られ、2007年には名門タジェーレスのホーム、ブエノスアイレスのリバープレート・スタジアムで競技が行われ、2回のステージ走行とフィニッシュが実施された。
■見どころ
・高地ステージのエルコンドールのスタートで、コース脇の岩に人々がよじ登る光景が有名
・ビッグジャンプや見通しのいいパンパスを駆け抜けるアクションを見るために何万人ものファンが押し寄せる雰囲気は、まさにお祭り状態