11月20日に行われた『TOYOTA GAZOO Racing WRC2019シーズンエンド取材会』のあと、チーム代表を務めるトミ・マキネンにインタビューを行った。2020年のチーム体制について明言することはなかったが、受け答えをする彼の態度や言葉の端々には自信、あるいは余裕を感じとることができた。以下にインタビューの一部を掲載する(なお、このインタビューはシトロエンのWRC撤退発表前に行われたもの)。
──カタルーニャを終えて、オィット・タナック離脱という驚きの発表がありました。
「我々にとっても驚きの決断だった。彼にはチームに残ってほしかったからね。おそらく、リタイアにつながったトラブルを残念に思っていた点もあるかもしれない。それでも、その時も彼はマシンのことを信頼してくれていた。ただ、ドライバー個人がそれぞれにどう思うかは、分からない。もしかしたら、新しい世界を見てみたくなったのかもしれないし、別の世界が新鮮に見えたのかもしれない。我々はその決断を受け入れるしかないし、私もドライバーだったから理解はできる。ドライバーたちは、それぞれ自分のことを考えなくてはならない。ドライバー人生は短いからね。どんな時でも、何かを決断するには大変な覚悟がいるものだ。
同時に、ラリー界全体から見れば、とても興味深い展開だ。彼が新しい環境、新しいマシンに乗ったらどうなるか? ヒュンダイでどのように成功を収めるのか? 僕から見ても、とてもドラマチックな変化になるだろうからね。新しいシーズンを迎えて、モンテカルロはいったい誰が一番になるんだろう? オィットとティエリーが同じマシンになったら、どっちが速い? そして我々はどれだけの速さを見せられるだろうか? 選手権全体として面白みが高まるなら、注目も集まるしファンも増える。いま、我々にとって一番残念なことは、チャンピオンを狙えるドライバー3人のうち、ふたりがヒュンダイに行ってしまうことだ。最も理想的なのは、トップドライバーが4人いて、それぞれが別の4チームにいて競い合うことだね」
──あなたは、残るトップドライバーのひとりを獲得しているのでは?
「……(苦笑)。今年のように3人のトップドライバーが別々のチームにいれば、3チームがタイトルを争うことができるのに、チャンピオンがヒュンダイに行くことで残りの2チームがハッピーではなくなってしまう。でも、考え得る最悪の事態になった場合、必要なのはチームのまとまりだ。チームとして団結し、強くあらねばならない。チームにモチベーションがなければ、どんな可能性も生まれない。モチベーションはパフォーマンスに影響する。そういうことがもし起きてしまったら、本当に残念に思うだろうね」
──もしトップドライバーが加入したとしても、新しいマシン、環境に慣れるには時間がかかります。来年は厳しい戦いが予想されます。
「誰が加入したとしても多少の時間はかかるものだよ。でも、ひとつ重要なことがある。我々のヤリスWRCに乗ったことのあるドライバーは全員、すぐにクルマに順応し、ドライブしやすいマシンだと言ってくれていることだ。ハンドリングがとても扱いやすいと。これは、本当に重要なことなんだよ。我々のドライバビリティにおける哲学、つまり運転しやすいクルマであるということを、すべてのドライバーが指摘してくれているんだ。乗ってすぐに、みんな笑顔になる。R5から乗り換えた貴元もドライブしやすいと言ってくれている。だから来年、新しいドライバーを迎えることに、我々はとても自信を持っているんだ」