1月10日、東京オートサロン2020で、2020年WRCの参戦体制を発表したTOYOTA GAZOO Racing World Rally Team。千葉県幕張メッセの会場には、チーム代表のトミ・マキネンとともに、2020年をチームのドライバーとして戦うセバスチャン・オジエ、エルフィン・エバンス、カッレ・ロバンペラ、そして今季はWRC8戦をヤリスWRCで戦う勝田貴元が揃って登場した。新年早々、日本のラリーファンを沸かせたこのイベントで、各ドライバーから話を聞く機会を得た。その模様を、前後半に分けてお伝えしていく。
まずは、日本ラリー界の期待を担う勝田。初めてTGRのレーシングスーツに身を包んだ姿も披露し、初戦モンテカルロに向けて気合いも高まるなか、シーズンに向けての抱負を聞いた。
──お正月はどのように過ごしましたか。
「日本で、家族と一緒に過ごしました。以前は北海道に行ったりしていましたが、娘がまだ小さいので愛知県の自宅で家族と過ごしました」
──ドライビングスーツが初めてワークスと同じデザインになりましたが、感想は。
「ロゴなどは違いますが、同じようなデザインなので気持ちも引き締まります。いつかは同じロゴが入るチームメイトとして、一緒の場に立てるようになることが一番近い目標なので、そこを目指していきます。その後には、大きな目標もありますが、最初の目標はここですね。ですから、新たに気を引き締めて頑張ります」
──2020年は、あのスーツでいくのでしょうか。
「そうだと思います、その予定です。途中で何も起きなければ……どちらの意味でも!(笑)」
──2019年にヤリスWRCでの参戦を経験し、いよいよトップカテゴリーへの挑戦が本格的に始まります。プレッシャーを感じていますか? それとも楽しみですか?
「ほどよいプレッシャーもありますが、楽しみな気持ちが強いです。ラリーチャレンジプログラムも年々大きなものになってきましたし、多くの人にサポートをしていただいているので、僕自身もそれに応えなくてはいけない部分。そして、最終目標に向けて頑張っているのだということを忘れてはいけないという部分があるので、このほどよいプレッシャーのなかで今年、いまの自分に何ができるかというのが楽しみです」
──オフシーズンは、どれくらいヤリスに乗りましたか?
「1日だけです。WRCモンテカルロ向けのテストで、1、2年前のラリーモンテカルロで使用されたステージを使わせてもらってテストしました」
──テスト時のコンディションは?
「幸運なことに、とても良い天気でした。まずはドライの中で、アイスとスノーを経験できました。昼間にそれが溶けてウエットになり、本当のモンテカルロのようなミックスコンディションになりました。
クルマの挙動はもちろんですが、一番勉強になったのは、まだ明るかった4時くらいに、陽の当たっているエリアで溶けた雪が凍っていて、ブラックアイスのようになっていました。日陰になっていれば分かるのですが、まさか凍っていないだろうと思った部分が凍っていて。こうしたことは去年経験できなかったので、自分で体験できたことはよかったと思います。
夕方の時間帯で風もなかったのになぜ凍ったのだろうと思いますが、そういうことが起こり得るのだということを、自分の目で見ることができました。そういう経験が、必要なのだと思います。セブ(セバスチャン・オジエ)のような選手は、見た目が同じようであっても、凍っている場所を見分けることができるのでしょう。速度域も高いので、そこまで見ることができる場所は少ないのですが、野生の勘も大事なのかなと感じました」
──経験値を積むということですね。そうすると、モンテの準備は万端という感じでしょうか。
「正直な話、万端と言うにはまだまだ経験値も足りないですし、もっとテストができれば良かったという部分はあります。でも、自分がいま置かれている状況を考えれば、そのような状況でテストさせてもらえるだけでも、ありがたいこと。ですから、わがままを言うのではなく、いま自分が置かれた状況のなかで何ができるかという意味で、モンテに向けていい準備ができていると思います」
──今シーズンは、どういうアプローチで臨みますか。自分にとって山場と見据えるのはどのラリーでしょうか。
「もちろんレベルは違いますが、アプローチとしては2019年と同じで、ラリーによって取り組み方を変えていくつもりです。もちろんラリーフィンランドやスウェーデンなど、自分が得意と思っていたり、走り慣れているようなステージなどは多少頑張りたいと思っています。
でも、それ以外の場所、ドイツは去年出場しましたが、ウェールズも独特ですし、モンテなどはさらに特殊なラリーになるので、そういう場所では、経験値を積むことを最優先に考えていかないと。来年、再来年と続いていった時にそこで痛い目に遭うかもしれないので、いまは焦らずにそこを大事にしたいですし、メリハリのある走りを心がけようと思っています。確実にレベルが上がっているので、その状況でより高いところを目指していかなくてはならないと思っています」
(後編は近日公開 Interview/Keiko Ito)