1月23日(木)から26日(日)にかけて、フランスのギャップを拠点に開催される2020年WRC開幕戦ラリーモンテカルロ。大御所WRCメディア、マーティン・ホームズによるラリー直前のWRCチーム近況をお届けしよう。
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ヒュンダイ
チームはニューカマーが1人、オィット・タナックと、 モンテカルロ通算7勝のセバスチャン・ローブ、ティエリー・ヌービルと非常に強力な布陣。世界チャンピオンのタナックが加入したことは、2020年のヒュンダイにとってビッグニュースとなった。さらにそのタナックは、FIAのポリシーであるチャンピオンナンバー1は希望せず、前年の8を選択したのだ!
2020年型i20クーペWRCには、外観にハッキリとした変更が見られ、エキゾーストパイプはリヤの右側からセンターに移動した。またリヤディフューザーの形も変更された他、ルーフのエアスクープのデザインは格段に平らになった。
タナックのマシンはシャシー21(ダニ・ソルドのスペイン車、グラベルクルーはマルティン・カングール)、ヌービルは22(ローブのスペイン車、グラベルクルーはブルーノ・ティリー)、ローブは新シャシーの23を使用(グラベルクルーはパトリック・マゴー)。
チームは初めてWRC2に公式参戦を開始。22歳のニコライ・グリアジンと、23歳のオーレ・クリスチャン・ベイビーの2人を、ヒュンダイ・モータースポーツNから少なくとも8戦に参戦させる。チームの運営は、オィット・タナックとマルッコ・マルティンが共同で率いるエストニア拠点のレッドグレイ。R5マシンの技術的な変更点は新型のピストンとライナーで、パワーとトルクがアップしているほか、ドアミラー、ギヤボックスからの冷却ダクト、ブレーキも新しくなっている。
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Mスポーツ・フォード
3台がポイント対象にノミネート。エサペッカ・ラッピはシャシー11(エルフィン・エバンスの2019年GB車、グラベルクルーはミッコ・ヘイッキラ)、テーム・スニネンはシャシー9(2019年サルディニアで使用、グラベルクルーはユッソ・ピカリスト)、ガス・グリーンスミスはシャシー4(スニネンの2019年GB車、グラベルクルーはアントワーヌ・エルスタージュ)。今季は、全車が昨年のマシンを完全リビルトしたもので、2019年と同じスペック。基本的に全車、同じだ。シーズンの第2四半期にはエンジンのアップグレードが見込まれている。
財政面ではカストロールからのサポートが増加されたが、それ以外の変更はない。リトアニアのデイビダス・ジョシウスもMスポーツからエントリーしているがWRCポイントの対象外。スニネンが2019年のスペインで使用したシャシー8を使用する。グラベルクルーはモデスタス・ヤカス。4台とも、カラーリングは新しくなっている。運営面では、ベルナルド・フェルナンデスがラッピのエンジニアとなるなどの変更が行われている。
モンテカルロ向けのテストは、ラッピとスニネンが1月第一週に3日間のテストをシェア、グリーンスミスは同時期に1日テストを行っている。
MスポーツはWRC2にもエントリーしており、アドリアン・フルモー(2019年スペインのヤン・ソランス車)、レイ・イエーツ(新車)、ペドロ(2019年スペイン車)の3台は全てMkIIバージョン。
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トヨタ
トヨタは今年、3人のドライバーが全て新加入。エルフィン・エバンスはMスポーツから、モンテカルロ通算7勝のセバスチャン・オジエは昨年末でWRC活動を停止したシトロエンから移籍。さらに、昨年のWRC2Pro チャンピオンのカッレ・ロバンペラは、WRCフル参戦デビューシーズンにチームのサードドライバーに抜擢された。唯一の残留組は、トヨタの育成ドライバー、勝田貴元で、TOYOTA GAZOO Racingのレギュラードライバーとなったが、モンテカルロではマニュファクチャラーポイントの対象にはなっていない。
元トヨタのドライバー、クリス・ミークは、ラリー活動から完全引退の予定で、ヤリ‐マティ・ラトバラは、独自に運営するチームからスポット参戦をオファーされており、スウェーデンが初戦となる。
技術面ではマシンは昨年とほぼ同じだが、軽量化されよりパワフルになった模様だ。
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PHスポール
シトロエン・レーシングは、2019年いっぱいでWRCプログラムの終了を決断。チームのマシンは、現在売りに出されている。WRC2には、マッズ・オストベルグのC3 R5、1台をPHスポールの名前でエントリー(マニュファクチャラーの名前での参戦と比較して、経済面でのアドバンテージがある)。
使用するR5マシンは、昨年のデュバールでヤン・クレアが使用したシャシー49で、昨年と同じスペック。またWRC3にはヨアン・ロッセルのR5もエントリーしている。グラベルクルーは、オストベルグ担当をモルテン・オストベルグ、ロッセルは弟のレオが務める。
(Martin Holmes)