6月9日、新型コロナウイルス(COVID-19)の世界流行に関連する現状を受けて開催キャンセルを決断したウェールズ・ラリーGB。10月29日〜11月1日に予定していたこのイベントでは、ジュニアWRC、英国ラリー選手権、それぞれの最終戦が併催されることになっていた。国内外から10万人もの観客が集まるWRCの名門イベントは、今回で76回目を迎える予定となっていた。
簡単に下した決断ではないと気持ちを吐露したのは、自身もウェールズ出身であるイベントの主催者であり英国のASNであるモータースポーツUKのチェアマン、デイビッド・リチャーズだ。
「ここ数年、現行型WRカーの訴求力が高いことに加え、2017年にこのイベントで自身初のWRC優勝を飾ったエルフィン・エバンスという地元のスタードライバーの存在も加わり、集客は記録を更新している。しかし、今は10万人規模の人々が国内外から集まるようなイベントやプロモーションの計画を立てるのにふさわしい時期ではない」とリチャーズ。
「英国のモータースポーツを運営する組織として、我々が最も責任を担い優先することは、コンペティター、オフィシャル、スペクテイター、我々が持つラリーへの情熱を共有する何千人ものボランティア、関係するすべての人々の安全だ。この厳しい状況にあっても支援や情熱を注いでくれるみなさんに感謝している。ウイルスに打ち勝つための対策は急速に進んでいるが、大人数が集まるイベントでのソーシャルディスタンスや渡航制限、さらに今年後半にウイルスの感染流行が再発生した際の責任などに関して不確定の要素がたくさんある」
「本当に胸が張り裂けるような思いだが、こうしたことに対して責任を持てる賢明な選択肢は、今年のイベントをキャンセルすることしかないという事実を受け入れなくてはならない。その代わり、2021年により盛大に充実したワールドクラスのイベントを作り上げることに専念していく」
1932年に初開催を迎えたラリーGBは、1973年のWRC創設時から現在も開催を続けるわずか2戦のうちのひとつ。WRCカレンダーに入る以前、開催が中止となったのは、第二次世界大戦の影響による1940年、第二次中東戦争とその影響により燃料配給制が採られた1957年、口蹄疫の流行による1967年と今年の計4回。2000年以降はウェールズで開催されており、2003年からはウェールズ議会政府がタイトルスポンサーとなって支援している。当初はウェールズ南部をベースとしていたが、2013年から北部に移った。
世界中から観戦に訪れる訪問者は10万人近くに及び、地元にもたらす経済効果は毎年900万ポンド(約12億3000万円)を超える。うち、25万ポンド(約3400万円)が地元に寄付されている。