Mスポーツ・フォードのディレクター、リチャード・ミルナーは、もしイプルーラリーがWRCカレンダーに加わり、6週間で3ラウンドを行うことになった場合に、英国拠点のチームが直面する試練についての洞察を示した。
WRCの2020年シーズンは、9月6日にラリーエストニアで再開した後、9月17日にトルコ戦が開幕するマルマリスまで約3000kmの距離を移動。その後、10月2日に開幕するイプルーラリーが選手権に加われば、2175km北上してベルギーに向かうことになる。しかし、英国に戻るチャンスがないMスポーツ・フォード陣営は、この行程の合間を縫ってリビルトとプリペアを行わなくてはならない。
「開催地でマシンをプリペアし直さなくてはならない」とミルナー。
「エストニアの後はOKだが、トルコはカレンダーで最も過酷なラリーだ。その後、そのままイプルーのようなターマック戦に直行することになる。我々は、ドライバーひとりにつきひとつのシャシーしか持っていない。他のチームはラッキーにも、もっと台数が多い。でも、これは我々のチャレンジであり、まさにMスポーツ流に乗り越えていかなくてはならないことなのだ」
ミルナーによれば、Mスポーツ・フォードのトラックを運ぶ船は9月22日にトルコを出航し、3日後にイタリアに到着する。その後、36時間の陸送を経てイプルーに向かい、9月26日からは張りつめた時間が待っているという。
「火曜日と水曜日でセットアップをしなくてはならないので、土曜日、日曜日、月曜日で再プリペアを行わなくてはならない。木曜日には車検があり、金曜日はシェイクダウンだ。我々は幸運にも知り合いが多くワークショップを見つけることができるが、グラベルからターマックにコンバートしなくてはならない。グラベル用のホイールをトラックに100本積み、ターマック用に200本のホイールに交換しなくてはならない。ターマックではタイヤの選択肢が多いし、万が一のためにすべての選択肢を準備しておかなくてはならないから、英国から別の車両を送ってターマックのパーツを運び、グラベルのパーツを持ち帰らなくてはならなくなりそうだ」
「例えば、アップライトは通常、グラベル戦の後に外してチェックを行いリビルトして、それをターマック(スペック)にするが、その時間がないので、すぐに装着できるよう別のターマック用のセットを持ち込まなくてはならない。そうすれば対応は可能だが、簡単なことではない」
Mスポーツ・フォードは、WRCの再開戦はエサペッカ・ラッピとテーム・スニネンのみ、最小台数のフィエスタWRCで迎えることを希望しているが、ガス・グリーンスミスのプログラムは現状、まだ確定していない。
「ガスはできる限り多く参戦したいと思っているし、我々はアドリアン(フルモー)のWRC2プログラムに関しても、まだ模索を続けている。しかし、周囲の状況も我々の予算も毎週のように変化しているので、難しくなりそうだ」
一方、ラッピは、ラリーエストニアに向けての準備として今週、母国フィンランドのラリーに参戦する。ラッピは、3月のラリーメキシコ以来、実戦から遠ざかっており、エストニア前にテストを行えそうにない。ミルナーは、エストニア戦の前に走らせてあげることができないのは、予算面での制限によるものであることを認めている。
「ウチのドライバーをグレイストークに参戦させてスピードに慣れる機会を与えることも検討していたが、残念ながら今年の残りのイベントのための予算をかなり抑えなくてはならないんだ」
(Graham Lister)