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ラリージャパン実行委員会会長に聞く、決断の経緯と今後について

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8月19日に発表された2020年ラリージャパンの開催中止。収まる気配のない新型コロナウイルスの感染拡大、入国制限緩和の見とおしが立たない状況に鑑み、関係各所との協議を重ねた末の決断であったことは既報のとおり。F1日本グランプリ、WEC富士6時間、MotoGP、鈴鹿8耐と、軒並み国際格式イベントが延期や中止を余儀なくされるなか、最後まで開催実現に取り組んだラリージャパン2020実行委員会の高橋浩司会長に聞いた。


──具体的には、どのくらいの時期から中止について考え始めていましたか。

「6月にF1日本グランプリの中止が発表されたあたりから、国際的なイベントの開催について、徐々に雲行きが難しくなってきたと考えてはいました。感染も第2波が大きくなってきましたし、鈴鹿8耐開催の可能性を残していたモビリティランドさんなどとも、情報共有させていただきながら状況を見極めていました。一方で、大会名誉顧問に就いていただいている古屋圭司衆議院議員の事務所を通じ、ラリージャパン開催に向けた可否についての打診を7月頃から各省庁にしていただいています。それでも、7月16日にラリーガイド1を発行した段階では、全員が開催に向けて動いていたのは事実です。ただ、外国人の入国のハードルが非常に高いということも感じはじめていたので、水面下では入国に関する交渉や調査を進めさせてもらっていました」

──判断の時期は難しかったと思います。

「8月6日には古屋議員に、モータースポーツ振興議員連盟総会を臨時で開催していただきました。そこに参加していただいた議員から、公益性の高いスポーツイベントを実施する方法はないのかと各省庁に投げていただきました。ただ、外国人の入国が難しいとなった時点でさすがに世界選手権の開催はできないだろうと。会見でもお話ししたとおり、直接の理由は出入国制限ですが、WRCプロモーターやエントラントの負担など、様々な影響を総合的に判断した結果です。それに、開催できない可能性が高まって行くなかでチケット情報を出してしまうと、ファンの皆様にも迷惑をかけてしまいます。8月6日の総会を経て、翌日にはWRCプロモーターとのTV会議を行い、そうして開催断念を決心するに至りました。お盆休みを挟んで関係各所にきちんとお伝えし、正式発表と記者会見を行ったかたちです」

──2020年に実施予定だったプランについて伺いたいと思います。

「スタートゲートを愛知県庁前に設置し、その後、久屋大通方面を走るなど、いくつかのルートをリエゾンの候補として考えていました。ルートの確定には至りませんでしたが、市街中心部で多くの方に観ていただけるようなプランを詰めていたところです。セレモニアルスタートは無料で行い、偶然通りがかった人も含めて観ていただくことを目標にしていたのですが……ソーシャルディスタンスなどのことを考えると、1年後に同じ計画を実施できるのかという点は正直まだ分かりません。今年仮にWRCが開催できたとしても、ドライバーのサイン会やミート・ザ・クルーなどの実施も難しかったのではないかと思いますね」

──モリコロパークで8kmという長いSSも計画していました。

「8kmのコースは、サイクリングロードと場内のサービスロードを活用して走らせるという計画でいました。最終SSのパワーステージは、モリコロパークの観覧車前広場をフィニッシュポイントにしようと。そのほかには、パブリックビューイングも含めたサテライト会場をいくつか設けようというプランもありました。たとえば名古屋市内のほか、東京会場も設けたいと思っていましたし、色々な公園や道の駅でオフィシャルのサテライト会場をやりたいという開催地域の市町の意向も聞いていました。具体的な話が進んでいるところもあったんです。また、以前もお話しした豊田市駅前のリグループも、地域の方々との接点を増やすことをテーマとしていたので、豊田市側ともそういう機会を設けようと話し合いをしていました」

Hiroharu Sato


──ここまで準備していたとなると、経済的なダメージも大きいと思いますが。

「もちろん経済的ダメージはありますが、これで来年できなくなるような状況ではないと思っていますし、今年準備にかけてきたものは、コースの設定も含めて来年に活かせるものも多いです。今後も様々なアイデアが出てくるでしょう。これから2020年大会のレビューをしながら、2021年大会をより良いカタチにすることを考えています」

──2021年大会、コロナウイルスの感染拡大防止策はいかがでしょう。

「2021年の東京オリンピックをどのように開催するのかが、ひとつ大きな指標になると思っています。オリンピックが一定のガイドラインのもとに観客を入れて実施されるのであれば、それにならうようなかたちで考えなければならないと思います。ただご存じのとおり、ラリーは指定席があるわけではなく、ソーシャルディスタンスを維持するのが非常に難しい性質がある。我々も様々な方法を検討し、無策で望むつもりはありません」

──チケットの発売時期など難しい点もあると思いますが、今後の計画は。

「詳細な計画についてはこれから立てますが、チケットの販売はプロモーションのピークにもなりますし、コロナウイルスやオリンピックの状況を見ながら、臨機応変に考えていかなければならないと考えています。今年ここまで準備を進めるなかで培ってきたノウハウを使い、ファンの皆さんに楽しんでいただけるイベントを作り直す、そういうつもりでおりますので、1年後を楽しみにしていただければと思います」



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