様々な変更が行われたWRCの2020年カレンダーだが、エストニアの隣国ラトビアはWRC開催が目前に迫っていながら、わずかな差で時間切れとなってしまったようだ。
新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによりWRC戦の開催中止が相次ぐ中、同国最大のラリーイベント、ラリーリエパヤ(グラベル)はWRCプロモーターからWRC開催のオファーを受けていたことを明言しており、8月にERCとの併催も濃厚と見られていた。
政府からの財政支援は形式的な手続きを必要とするのみ、イベントのフォーマットに関してもWRCプロモーター、ERCのプロモーターであるユーロスポーツ・イベンツ、FIAの間で合意に達していたが、チーム側で全会一致の合意には至らず、話し合いはここで止まってしまったという。
「あるSNSで、WRCがほかの選択肢を模索していると読んだ」とラリーリエパヤのイベントプロモーター、ライモンズ・ストロクスは語っている。
「それでメールを出して、何を模索しているのかを問い合わせた。彼らは、自分たち(ラリーリエパヤ)がリストに挙がっていると返答したんだ。実現は本当に目前まで迫っていた。チームの間ではラトビアはすでに予定に入っていて、ホテルの予約も始めていた」とストロクスは明かした。
ラリーリエパヤがWRCのカレンダーに昇格するためには62万ポンド(約8800万円)が必要だったと伝えられているが、ストロクスによればそれを確保する時間がわずかに足りなかったのだと言う。
「単純に時間の問題だった。ラトビアの政府は、その件を話し合うためのミーティングをその間に設定することができなかった。ミーティングができればいい結果が期待できた。数日待てば回答が得られるはずだったが、そこでWRCに話し合いを止めると伝えられた」
情報筋によれば、ヒュンダイが投票をしなかったことで、リエパヤをカレンダーに加える検討作業が進まなかったという。しかし、WRCがバルト海の港町に来ることはないだろうと思っていた理由について問われると、ストロクスは控えめに語った。
「すべての理由を把握しているわけではないが、自分ができることは全部努力した。WRCが自分たちのイベントに注目してくれたことはとても光栄なことだし、自分たちを良質な候補イベントだと見てくれた。ERCでも自分たちのイベントはそうであると信じているしユーロスポーツ・イベンツともいい関係を築いているので、(WRCが開催できなかったとしても)悲しむことは何もない」
ストロクスは、ラリーリエパヤがWRCカレンダーに加わるとすれば、今回のようなケース以外にはないだろうと認めている。
「冷静に考えれば、現実的ではないことに気づく。ほかにも大きなラリーイベントはたくさんあるし、大きなマーケットがWRCを開催したいと願っている。そして悲しいかな、ラトビアのような小さな国は、予想できないような状況、危機的な状況でもなければ(WRCを開催する)可能性は巡ってこない。でもいつか、そういった話し合いもまた持ってみたい」
「自分たちは、30日でWRC戦を主催しようという準備はできていた」とストロクスは強調する。
「やるべきではない理由をすべて書き出したリストを作り、スタッフの全員にイエスかノーか、署名をしてもらった。でも、やるべきではないと書いた者はひとりもいなかった。みんなが全開で臨むつもりでいた。10日間、イベントを併催するための作業に取り組み、みんなが沸き立っていた。信じられないような光景だったよ。ふたつのプロモーター、ふたつの会社、そしてFIAの間で、共通語もやり方も統一され、すべてのことが迅速に、効率的に進んでいた」とストロクス。
「すでにステージの設定はできていたし、シナリオもできていた。全員がこれを実現することで得るものがあると信じていた。WRCにとっても、安全なラリーをカレンダーにもう1戦、加えることができたのにね。その時はどうなるか誰も分かっていなかったが、今年のERCは安全に終了したよ」
2020年のラリーリエパヤは、ERC第2戦として8月14〜16日に開催。新鋭のオリバー・ソルベルグ(フォルクスワーゲン・ポロGTI R5)がイベント連覇を飾って閉幕している。
(Graham Lister)