今季のWRCカレンダーにラリーリエパヤを入れる案に反対姿勢を見せたヒュンダイ。その理由として、ラリーエストニアに続いてバルチックの高速グラベルラリーが増えるのは、トヨタにとってタイトル争いのうえで有利になる可能性を危惧したのではとみられている。しかし、リエパヤのカレンダー入りに関する議論では自らの意思を貫いたものの、ヒュンダイはWRCエストニアでは1-2フィニッシュを飾った。
速いだけでなくテクニカルなセクションもあり、特に2ループ目はラフな場所も続出したエストニア南部のステージで、ヒュンダイはトヨタを出し抜いてみせた。
開催国エストニアの英雄で世界チャンピオンとして母国でのWRC初開催を迎えたオィット・タナックは、トヨタから2020年に移籍したヒュンダイで初めての勝利をマークし、スポット参戦で今季2度目のWRCに臨んだチームメイトのクレイグ・ブリーンも自己ベストタイの2位でフィニッシュした。さらに、ティエリー・ヌービルも、SS7で轍の深い左コーナーで弾き飛ばされなければ、ヒュンダイ勢はポディウムを独占する勢いも見せていたのだ。
しかし、ヌービルの不運はセバスチャン・オジエを3位でフィニッシュさせ、1ポイントではあるがエルフィン・エバンスに対する選手権リードを広げることにつながった。今季は残り3戦となっており、エバンスはこれでオジエに9ポイント差。しかしそのオジエは、ラリートルコでも初日は先頭走行で砂利掃きを背負わなくてはならない。一方、タナックは選手権争いでは、オジエに13ポイント差の3位に浮上している。
エストニアでは、大いにチームに貢献したタナック。エストニア向けのセットアップを全面的に指揮し、i20クーペWRCを「自分好みのマシン」に仕上げ、「素晴らしい成長を見せた」と称賛した。しかし、最終2本目のステージでバンクに引っかけ、i20クーペWRCの外観にダメージを負う局面を凌いでいたことも認めた。
「あの場所では抑えていたが、それでも道に弾き飛ばされた」とタナック。
「この2日間、もっとすごいサプライズや場面があったんだ。でも、あの場面はテレビに映ってしまったから、危なかった、って言うしかないんだろうね」
地の利を活かして限界まで攻めたタナックだったが、そのすべてがアドバンテージになったわけではなかったとも語っている。
「ステージの大部分が新しくなっていたし、コンディションもこれまでに見たことのないようなものだった」と、日曜日午前中のスリッパリーな路面を例に挙げた。
それでも快走を見せていたタナックの後方で、ブリーンは最後のパワーステージでは2位をキープするために少し抑えすぎたかもしれないことを認めている。この最終ステージを終えた最終リザルトで、オジエは4.7秒差まで詰め寄ってきていた。
「自分たちは絶対にリザルトを残さなくてはならなかったし、それが自分やポール(ネーグル、コ・ドライバー)にとってとても重要であることも分かっていた」とブリーン。
「最後のハードルで転ぶわけにはいかなかったし、最後のステージではリスクは一切負わなかった。もう少しいい走りができたらもっとうれしかったかもしれないが、結果的にはうまくいったよ」
(Graham Lister)