WRCラリートルコのフィニッシュ後に行われたイベントカンファレンスの内容(抜粋)。波乱のトルコを生き抜いて今季2勝目をマークしたエバンス。ドライバーズ選手権である程度の差をつけての首位に立っているが、予測不能のシーズン、タイトル争いについての期待は禁物と見ているようだ。
●WRCイベント後記者会見 出席者
1位:エルフィン・エバンス=EE(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
2位:ティエリー・ヌービル=TN(ヒュンダイ・シェル・モビスWRT)
3位:セバスチャン・ローブ=SL(ヒュンダイ・シェル・モビスWRT)
トミ・マキネン=TM(トヨタ・ガズーレーシングWRT、チーム代表)
Q:エルフィン、実にドラマチックな1日だった。優勝したという点では最大の結果を得たが、今の気分は
EE: もちろん、すごくハッピーだ。ただ、自分の優勝の中では、心から喜べる勝利とは言えない。こうしたかたちで勝ちたいと思う人はいないだろう。もちろん高ポイントを獲得できたし、それがここにきた目標だ。ここでは、みんなも承知のとおり賭けの部分があり、自分は運が向いていた。過去には自分が不運組に入っていたこともあった。今回は、自分たちは喜んでいいのだと思う。
Q:最終日最初のステージは多すぎるほどのドラマが起きた。“自分は無傷で切り抜けたが、2ループ目ではパンクをしたかもしれないと思った”とコメントしていた。マシンやノイズでそう感じたのか
EE: いや、スタートの近くでリヤから何度かノッキングを感じた。数コーナーでリヤがスライド気味になっているのを感じたので、スコットにハッキリ感じると言った。そう言った時も、自分はパンクしているのかどうか、よく分からなかった。もちろん、走り続けて結局はパンクしていなかったから、問題なかったよ。
Q:選手権で首位に立ち、18ポイントのアドバンテージができた。シーズンのこの時点で、どれほど重要なことか
EE: いい状況だが、あまり考えすぎてはいない。ここからシーズンが終わるまでの間に何が起こるかなんて、誰にも分からない。1回のリタイアで状況はまた一変する。残りのラリーも、しっかり地に足をつけて続けなくてはならない。
Q:ティエリー、絶対あきらめない精神が今回、結果を引き寄せた。午前中のことはもちろん残念だったが、力強く挽回してパワーステージでの5ポイントも獲得した。いま、何を思っているか
TN:もちろん、今回は残念なことがたくさんあった。正直、今回自分たちは本当に強かった。速さは出ていたし大きなミスもなく、タイヤのマネージメントもクレバーだった。午前中は、残念ながらすべてがうまくは噛みあわなかった。あのステージでは慎重にドライビングすると決めていた。ほかのみんなと同じように、運が自分たちには向かず、パンクをした。これで順位が5番下がり、そこから2番手にまで挽回してパワーステージでも5ポイントを獲った。この点は今回、ポジティブに捉えていいと思う。選手権の首位にも少し近付いたし、それが自分たちの一番の目標だった。まだタイトル争いに残れている。選手権5番手なので、サルディニアではいい走行順でスタートできる。
Q:異例のシーズンで戦数も少ない。あと何戦行われるのか不透明な中で、プッシュを続けなくてはならないということか
TN:いずれにしても、自分は計算上でチャンスがなくなるまではあきらめない男だ。ハードにプッシュしていく。優勝もしたい。今まで以上に貪欲になっている。メキシコとエストニアのことがあったので、今回は本当にモチベーションを高めていた。自分たちは今回、優勝にもふさわしかったと思うが、もちろん自分たちには届かなかった。次のイベントを楽しみにしているよ。主催者とFIAは、今回のダストの状況について真剣に取り組むべきだと思う。誰にとっても好ましい状況ではないし、安全だと感じた人は誰もいない。風が吹いて視界が確保できるかは、運次第だったんだ。このコンディションの中で選手権を戦うのも、いいことではない。重要なポイントだが、今回は車内もすごく暑かったということも伝えておきたい。ほかのドライバーも同感だと思う。僕らはずいぶん前から、ウインドウのサイドフィルムを少なくとも少し遮光にしてくれと訴え続けている。特に、今回のように酷暑で低速なラリーでは車内に外気が入ってこない。実に深刻だよ。ほかのドライバーにも話してみたが、同じ意見が返ってきた。ステージの終盤ではめまいも感じてきたし、車外でもそうだ。復活するまでに10〜15分くらいかかった。自分は体力に自信はあるが、マシンの中がとにかく暑すぎるんだ。
Q:セブ、3位でポディウムに上がったが、ドラマチックな週末だった。最終的にはOKか
SL:終わってみればポディウムに上がったが、週末を通してアップダウンがあった。複雑なラリーだったよ。本当にラフで、タイヤにもすごくハードだった。だから、初日を終えて首位に立っていたのにはビックリだったが、ハッピーだったよ。最終日は全開で攻め始めたが、信じられないほどのダストだった。ステージのコンディションはドライブできたものではないようなところもあったし、上位のほとんどがストップしたと聞いた。自分はパンクしないようにリスクを負わない走りに努めていたが、それでもパンクしたんだ! 幸い、自分たちは走り続けてラリーをフィニッシュし、ポディウムに上がることができた。マニュファクチャラーズポイントを獲得するために来たのだし、ヒュンダイとしては悪くないリザルトだ。
Q:最終日午前のステージを終えて、オジエに5.2秒差で追っていた。オジエが止まったと聞いた時、力を緩めたか
SL:それほど緩めていない。ステージでリズムを変えたくなかったので、プッシュと石を避ける走りの間くらいだった。100%で攻めるにはラフすぎるコンディションだった。
Q:トミ、トヨタは勝利を収めたが、たくさんドラマが起きてタフなイベントだった。まず、エルフィンの内容については満足か
TM:もちろん、このコンディションに向けてマシンをプリペアしたチームを非常に誇りに思う。本当に集中していた。最終日は、エルフィンが今週末の主役であることを見せつけた。タイヤやすべてのことをコントロールしながら速さを見せていた。だからこそ、この過酷なサバイバル戦で結果を残すことができた。
Q:最終日、オジエには何が起きたのか。煙と炎も見えていた
TM:週末を通して彼はアンラッキーだった。彼はラリーを勝てたはずだ。とても速かったし、土曜日のパフォーマンスも非常によかった。どちらのループでもギヤシフトが不調でペースが落ちた。最終日は、ついにエンジンにトラブルが及んだ。この点は調査が必要だ。彼には申し訳なく思うが、サルディニアでは強さを取り戻してくれるはずだ。
Q:エルフィンはドライバーズ選手権で差をつけて首位につけ、マニュファクチャラーズ選手権ではトヨタが差を広げている。サルディニアに向けて両選手権についてどう感じているか
TM:まだどのドライバーにもチャンスがあるので、自分たちのラリーを続けなくてはならない。アドバンテージは握っているが、サルディニアは首位で迎えるにはベストのラリーではない。エルフィンは先頭、セブは2番手スタートだ。走行順がリバースになるまでの初日の距離がどれくらいになるのか、まだ分かっていない。いずれにしても、このコンディションに関しては自信を持っているよ。