2021年も英国でWRCは開催されるが、舞台はウェールズではなくなる見通しとなってきた。FIAが10月9日にワールドモータースポーツカウンシルで承認したカレンダーに入っていた「英国ラウンド」は、これまで開催地となっていたウェールズではなく、北アイルランド拠点のイベントとなる模様だ。
しかし、ラリーアイルランドのコースとして走行した2009年以来となるWRCの北アイルランド復帰は、資金が調達されWRCプロモーターとの合意に達するか次第となっている。
WRCプロモーターは、モータースポーツUKとの話し合いを行っている最中であることを認めており、さらにこの英国のASNは「必要となっている政府からの資金を確定させるために取り組み中」であり「まもなく発表が行われる見通し」としている。
モータースポーツUKのチーフ、ヒュー・チェンバースは、FIAが発表した2021年カレンダーに明記された8月19‐22日に、北アイルランドでWRC英国ラウンドを開催するための作業を行っていることを認めている。
「モータースポーツUKは、2021年のWRCカレンダーに英国が含まれたことを非常にうれしく思っており、来年のイベントを開催するための資金確保に向けてさらに注力を行っていく。もっと早く確保を決めておきたかったが、現在の情勢の中、必然的に時間がかかっている」とチャンバースは、FIAの発表後に語っている。
「できる限り早く発表したいと思っているが、ご想像いただけるとおり、政府の作業や資金はそのほかの緊急を要する優先事項に重点が置かれているのが現状だ」
今回、WRCの英国ラウンド開催地として最有力候補に挙がったこととは非常に対照的に、4月、英国では北アイルランドの観光局がラリーへの資金提供を退けたことが明らかになったと伝えられた。しかし、ベルファストのある北アントリム州の議会議員で北アイルランドのモータースポーツ作業部会のチーフも務めるイアン・ペイズリーをはじめとする政治家たちは、WRCを北アイルランドに復帰させる声を上げ続けてきた。8月には、英国政府が経済省からWRC開催候補の支援要請を受けたことを英国のモータースポーツ紙が伝えているが、広報はこの要請が検討中であることを認め、「政府は北アイルランドを世界に知らしめるためのイベントに対して支援的だ」としている。北アイルランドのロビン・ウォーカー国務大臣は「喜んでWRC誘致のために北アイルランドの行政を支援したい」と語っている。
モータースポーツUKは、ウェールズ政府との間で2021年のラリーGBを支援する契約を結んでいるが、新型コロナウイルス(COVID-19)のパンデミックによる影響がこの政府の資金繰りに大打撃を与えたことは想像に難くない。2019年のラリーGBは987万ポンド(約13億5000万円)の経済効果を生み出したが、2021年のラリーを支援するために公的資金を投入することに関しては、特にCOVID-19感染の第2波が押し寄せていることもあり、ウェールズ政府の継続的な投資が疑問視されている。また、ラリーGB自体も、ラリーを率いてきたグイラム・エバンスが9月に一線から退いており体制が弱まっている。
北アイルランドもウェールズと同様の難局に直面していることに変わりはないが、(アイルランド独立戦争が終了して英愛条約が締結から)100周年に向けて政治的な支援は強い。北アイルランドの状況が整えば、WRCの英国戦からラリーGBの名前が消え、代わりにラリー北アイルランド(Rally Northern Ireland)と呼ぶことになりそうだ。
ラリー北アイルランドを主導し、2007年のラリーアイルランド開催時にはストームント・スーパーSSの責任者を務め、サーキットオブアイルランドの復活も担当したボビー・ウィリスからは、コメントは得られなかった。
(Graham Lister)