ダカールラリーの2021年大会は1月12日、ネオム〜ネオム間に設定された第9ステージ、465kmの走行が行われた。
一瞬で戦況が一転することが起こり得るのがダカールラリー。このステージ9は、まさにそんな一日となり、ネオムのビバーク周辺をループするステージでは、優勝が視野に入ってきたコンペティターもいれば、砂漠で希望を追い続ける者もいたようだ。
カー部門では、ステファン・ペテランセル(MINI JCWバギー)とトヨタ・ガズーレーシングのナッサー・アル‐アティヤ(トヨタ・ハイラックス)との激しい首位争いが続いているが、この日は総合首位のペテランセルがステージウインをマークし、総合2番手で追うアル‐アティヤとの差を12分広げることに成功。総合タイムでのペテランセルのリードは17分50秒となった。ステージのフィニッシュラインでペテランセルは、トリッキーなナビゲーションで本領を発揮してこの日の成果に貢献したナビゲーターのエドワルド・ブーランガーを称賛した。
「いつも長い一日になるので、僕らは今日の朝、フルアタックではいかないようにしようと決めた。タイヤをしっかりマネージメントして、ナビゲーションをクリーンに行いたかった。そのおかげでステージ中にカルロスとナッサーを抜くことができた。今日は、速さよりも戦略が鍵だった。コ・ドライバーのエドワルドは、最高の仕事をしてくれたよ」とペテランセル。
一方のアル‐アティヤはこの日、3回のパンクに苦しんだが、明日の猛追を誓う。
「3回もパンクした。それでスペアタイヤがなくなってしまったので、安全にフィニッシュしようと決めたんだ。今日はできることはすべてやったので、残念には思っていない。残り3日間で、まだまだ何が起きるか分からないからね」
カルロス・サインツ(MINI JCWバギー)は、このステージの序盤でブレーキがなくなり、21分かけて修復を試みたが解決できなかった。サインツはそのままでの走行を余儀なくされたが、ベストタイムからの遅れは22分30秒に抑えた。
また、ジニール・ドゥビリエ(トヨタ・ハイラックス)、シリル・デプレ(プジョー3008 DKR)、クバ・ライゴンスキー(トヨタ・ハイラックス・オーバードライブ)もこのステージをフィニッシュした。
「タフな一日だった。465kmはずっと石や川床ばかり。信じられないような光景だった。フィニッシュまで数kmというところで石をひっかけて、ひどいパンクがあったが、走り切ったよ」とデプレはこの日のステージを振り返っている。
日本勢では、トヨタ車体がエントリーするチームランドクルーザーは、路面が多彩に変化する長丁場を三浦昂のトヨタ・ランドクルーザー200が粛々と走行。砂埃の中で視野に入り難い石にヒットするなどして2回のパンクや、岩場で下回りをヒットするなどのハプニングに見舞われたものの無事にゴールを果たした。チームメイトのロナルド・バソもパンクが2回。タイヤ交換中にパスされたペースの遅い車両を、巻き上げられたダストでなかなか抜くことができず、残り50kmの地点で日没を迎えたためさらにペースダウン。厳しい状況を耐えながらステージをフィニッシュし、市販車部門で1‐2をキープ、総合順位でも三浦が41番手、バソが42番手と前日の順位を維持してネオムのビバークに帰還した。
三浦は「一言で言えば我慢のステージ。先行車の掘った轍が深く、下回りをヒットしてしまうなど市販車には厳しい場所も少なくなかった。距離も長く疲れたが、無事に着いて良かった」と安堵を見せた。
日野チームスガワラの菅原照仁/染宮弘和/望月裕司組(日野レンジャー)も、耐える一日となり、1回のパンクに見舞われたものの、それ以外のトラブルはなく難関ステージをクリア。トラック部門総合10番手のタイムでフィニッシュし、累積順位でも13番手に留まってはいるが上位との差を縮めたほか、排気量10リットル未満クラス首位も堅守している。
「悪路と石、そして埃もひどいタフなステージだった。今日からタイヤをセミマッドタイプのXZLに替えたが、操安性が向上。コースに合っていたと思う。明日のアルウラへのルートは前回大会でも走ったが、今回は違う道を行くようだ」と菅原は語っている。
明日13日は、ネオム〜アルウラ間に342kmの第10ステージが設定されている。
ダカールラリー2021 暫定結果(ステージ9終了時点)
1 S.ペテランセル(MINI JCWバギー) 34:26:16
2 N.アル‐アティヤ(トヨタ・ハイラックス) +17:50
3 C.サインツ(MINI JCWバギー) +1:02:25
4 J.ライゴンスキー(トヨタ・ハイラックス・オーバードライブ) +2:16:30
5 N.ロマ(プロドライブ・ハンターBRX) +2:42:38
*日本勢の戦況を追記しました