2021年WRC開幕戦ラリーモンテカルロで、通算8度目のイベント制覇を果たしたトヨタのセバスチャン・オジエ。勝利を決めた鍵となったのは、2021年からWRカー勢に新たに導入されたピレリタイヤに、ライバルよりも早く対応できたことだ。
ピレリのラリー活動マネージャー、テレンツィオ・テストーニは独自の取材に対し、2020年の世界チャンピオンが最終日の4SSを同じ4本のタイヤでどのように対処したかを解説した。テストーニによれば、オジエが履いたスタッドタイヤは、フィニッシュ後も非の打ち所がないほどスタッドが維持されていたという。
ラリーモンテカルロでピレリが供給したスタッドタイヤ、STZ-B Studには200本のスタッドが埋め込まれているが、いずれもスタッドの突出量は最大2mm。イベント終了後のチェックでは、オジエが使用したタイヤは1本もスタッドが失われていなかったという。
「トヨタの4台は全車がスタッドタイヤ4本を履き、スペアもスタッドを2本積んでいた。モンテカルロでは通常、別の選択肢を確保するために全部同じタイヤを選ぶことはないので、珍しいチョイスだった」とテストーニは説明する。
「しかし、あの日の最初のステージは完全にアイス、2本目は5kmがスノーであると分かっていたので、グリップがとても低いからスタッド6本は正しい選択だった。(最終ステージ後)オジエに『スペアは使わなかったんだね』と言ったら、彼は『テレンツィオ、だってスタッドは1本もなくなっていないんだぜ』と言われたよ」
テストーニは、ピレリがスタッドタイヤの製造に関してどのように「3年前に大きなステップアップを果たした」かについても説明した。ピレリのモータースポーツタイヤの製造はすべてトルコで行われているが、スタッドタイヤについては、最終段階をスウェーデンにある会社を使っているという。
「スタッドの形状には強さが求められるものだが、接着方法とスタッドの取り付け方で違いが生まれる」とテストーニ。
1996年以来、ラリーモンテカルロに全戦帯同しているテストーニだが、今年のイベントの路面グリップは、これまで以上に低かったという。オジエの地の利と、グリップレベルやピレリタイヤがどのように反応するかに対する理解能力が、チームメイトのエルフィン・エバンスに競り勝った要因だとテストーニは考える。
「タイヤのフィーリングが感じられなかったと語っていたドライバーは、エバンスだけではなかった」とテストーニ。
「アイスがすごく多かったがバラつきのある氷だったし、コンディションはグラベルクルーが通過した後も常に変化していくため、どこでグリップするかを把握するのが難しかった。オジエが勝ったのは、すぐにタイヤを理解し、いつコンディションが変わるかを熟知していたからだ」
(Graham Lister)