WRC第5戦サルディニア(6月3〜6日)では、ピレリにとって母国であるイタリアで初めて、グラベルラリー用タイヤ『スコーピオンKX WRC』が登場する。前戦ポルトガルで実戦デビューを飾ったワールドラリーカー用のスコーピオンKXグラベルタイヤだが、今季からの供給開始に向けて、昨年は開発テストのほとんどをこのサルディニア島で行っており、このタイヤにとってはまさに“母国凱旋”となる。ピレリは昨年からシトロエンC3 WRCを使用してアンドレアス・ミケルセンがこのタイヤのテストを展開。3カ月のうちに、WRC5戦分に相当する1400kmを走り込んできたという。
サルディニアで第一の選択となるコンパウンドはハードとなるとみられ、最も摩耗の激しい路面と距離の長いステージでの耐久性に対応できるような設計となっている。ソフトは気温が低い場合、あるいは湿ったコンディションで相応のグリップを得るための代替案となるほか、サンディでルーズなグラベルコンディションでの選択肢となる。特に1ループ目ではこのようなコンディションが想定されるため、ソフトコンパウンドを選ぶドライバーも多いだろう。
テレンツィオ・テストーニ(ピレリ・ラリーアクティビティマネージャー)
「ポルトガルでの実戦デビューを経て、スコーピオンKX WRCが再び過酷なグラベルラリーに挑むことを楽しみにしている。サルディニア島はこのタイヤにとってのホームであり、すでに昨年のテスト中に膨大な量のデータを収集してきた。また、ポルトガルで収集したすべての情報を分析することにも忙殺されており、この成果はサルディニアではチームへのアドバイスとして活用される。もちろん、サルディニアの気温はポルトガルよりも高くコンディションもよりタフになることもあるが、そうなればハードがより向いているはず。ソフトはその反対の要素を持っているので、供給数も抑えた。このため、トップ3チームでは、それぞれのタイヤ戦略が違ってくるかもしれないと我々は予想している。最終日に設定されている新ステージは非常にスリッパリーでサンディなので、ソフトタイヤが勝負に大きく影響するかもしれない」
ピレリが今回のサルディニアに持ち込むタイヤの本数は、約1800本。そのうちおよそ400本がWRカー用だ。各WRCドライバーがラリー中に使用できるタイヤ本数は24本で、シェイクダウン用には別途4本が供給される。
各マシンに用意されるタイヤの種類と本数は次のとおり。
ワールドラリーカー
Scorpion KX Hard:24本
Scorpion KX Soft:8本
※使用できる最大本数は24本。シェイクダウン用に別途4本が供給される。
またピレリは、WRC2、WRC3を含め、エントリーする4WDマシンにも1400本のタイヤを供給する。
4WDマシン(WRC2、WRC2を含む)
Scorpion K4A Hard:22本
Scorpion K6A Soft:8本
※シェイクダウン用に別途4本が供給される。
ラリーイタリア・サルディニアは、シーズン屈指の酷暑イベントで、気温は30度を超えることもある。さらに路面は摩耗が激しく石が多いため、タイヤにとって非常にタフな試練。これこそ、ピレリがWRカーのタイヤ供給復帰のためにテストの場所として選んだ理由だという。
今年のサルディニアには、新しいステージが登場する。イベントの拠点は、7年間設置された西海岸のアルゲーロから、今年は東海岸のオルビアに戻る。ステージの多くは例年と変わらず特に金曜日と土曜日はおなじみの構成だが、最終日の日曜日はオルビア北部に、現役ドライバーの多くが初めて挑むことになるステージが登場する。