WRCギリシャのフィニッシュ後に行われたイベントカンファレンスの内容(抜粋)。2013年以来の開催となったシリーズの難関グラベルラリーで快勝を収めたカッレ・ロバンペラ。エストニアに続く今季2勝目を得た現役最年少ワークスドライバーの躍進ぶりに、同郷のチーム代表が目を細めた。
●WRCイベント後記者会見 出席者
カッレ・ロバンペラ=KR(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
マルティン・ヤルベオヤ=MJ(ヒュンダイ・モータースポーツ、オィット・タナックのコ・ドライバー)
セバスチャン・オジエ=SO(トヨタ・ガズーレーシングWRT)
ヤリ‐マティ・ラトバラ=J-ML(トヨタ・ガズーレーシングWRT、チーム代表)
Q:カッレ、優勝した気分はどうか
KR:とてもいいよ。本当にタフなラリーで、長い1週間だった。レッキをしなくてはならないステージがたくさんあったし、夜も長い時間、オンボードビデオを観ていた。この結果でフィニッシュラインを超えることができて、本当にハッピーな気分。
Q:違う次元の戦いをしていた時もあったようだ
KR:金曜日は本当に調子がよかった。ステージがまったく違う土曜日はセッティングを変えたが、さらにフィーリングがよくなった。自分自身のペースでドライブができたし、純粋にドライビングを楽しめた。
Q:土曜日の変更とは
KR:特に2ループ目の走行に向けての安全策みたいなものかな。トラクションは減ったが、それほどタイムはロスしなかったし、安全に走り切ることができた。
Q:ラリーに勝ったうえにパワーステージも獲ったが、ここはハードにプッシュする計画だったのか
KR:フィーリング次第だった。1回目の走行の時にとても良かったし、すごく楽しめた。ソフト4本だったので、いい走りができるはずだと思っていた。数コーナー走っていい感じだったので、プッシュできた。
Q:次は母国ラウンドのフィンランド。プレッシャーや期待も大きくなるか
KR:まだそれほどでもないと思うし、プレッシャーもない。母国ラリーはほかとは違うものだし、フィンランドの人がたくさん集まり、自分がいつも住んでいるフィンランドの町なのだから、特別だよ。いい雰囲気を感じられる場所だ。タイトなバトルになると思うし、週末を通して楽しみたいね。
Q:個人的な理由でオィットの代わりにマルティンが出席してくれた。アクロポリスは予想どおりのタフなチャレンジだったか
MJ:カッレも言ったとおり、1日が長く夜は短かった。いつもはもっと睡眠時間を取るのだけど。レッキは新しいノートを作るには難しいコンディションだったが、最終的にはノートはOKだった。幸い、ラリー中はタイヤチョイスがよかったし、だから2位でフィニッシュできたのだと思う。
Q:レッキはどれくらいタフだったか
MJ:2日目の午前は、少し暗くて大きな雲が出ていた。レッキを始めると1台が止まり、ほかのマシンが止まり、全車が止まってしまった。よくなりそうもないと気付いたので、このまま行くしかないのだと自覚した。2ループ目は日差しが出て霧がなかったので、格段によくなった。
Q:パワーステージの前、マシンをスタートさせる時について
MJ:彼は努力していたよ! ゲームオーバーになりそうに見えたが、その後スタートして、それが最後だった。スイッチを切ったら、もう二度とスタートしなかっただろうから、本当にあれが最後だった。スタートするまでに3秒かかり、それでも彼は何かのボタンを触っていた。リズムをつかむ点ではあまりいい状況ではなかったし、それによるタイムロスもあったかもしれない。
Q:予想していたとおりの象徴的なイベントとしてのアクロポリスだったか
MJ:このラリーに来る前、コ・ドライバー的にはタフになると予想していたし、そのとおりだったが、もっとタフになると予想していたかもしれない。道は本当に素晴らしくて、ラリーも良かった。
Q:セブ、このリザルトは選手権争いのうえで大きな後押しになるのでは
SO:それが、この週末全体の戦略だった。出走順が一番手の金曜日もとてもいい滑り出しができたし、首位とも僅差で予想以上だった。土曜日の午前は適切なリズムだったが、レッキで苦戦したセクションはすべてグリップ変化が激しく視界も悪かったから、安全圏内に保ちすぎた。同時に、カッレはノっていたし、オィットも本当に速かった。デイ2でティエリーとエルフィンがトラブルに見舞われたので、自分はクレバーになる必要があった。エゴは手放した「OK、自分には必要ない!」って。あまり楽しいことではないが、クレバーな戦いができたし、選手権争いでもポジティブな結果だ。本当に疲れた。若手のように夜どおし動画を観続けるのは慣れていないので、今はもうクタクタ。レッキは本当に大変で、動画で確認しなくてはならないことがたくさんあったから、夜は時間が足りなかった。今晩はゆっくり寝るよ。
Q:最終日の午前、カッレのタイムを見てどう思ったか
SO:フィニッシュラインは、高速のレッキだった。正直、自分はタイムをロスすると感じたが、1kmあたり1秒速かったのは相応のタイムだ。プッシュしていない時は、このステージでどこまでできるのかを予想するのは難しい。この時は、この争いに絡んでいなくてよかった、リスクを負わなくて済むと言ってしまったよ。とにかくフィニッシュを目指そうってね。
Q:次は秋のフィンランドだ。例年とはかなり違うラリーになりそうか
SO:いつもとは違うチャレンジになるかもしれないね。誰も予想できない。1年のこの時期がどうなのか、ヤリ(マティ・ラトバラ、チーム代表)は教えてくれると思うが、我々の世代では新しい経験だ。少しテストを行わなくてはならないし、いつもよりも涼しいコンディションになることも予想できる。少し湿っているとありがたいね。ここまで9戦開催されて、うち7戦で自分たちは先頭スタートの不利を被っているからね。もう今から、最後のターマックラリーが楽しみだよ。フィンランドは、ヤリスが生まれた土地なのでいいパフォーマンスが出せるはずだが、タフな戦いを予想している。カッレはここのところパフォーマンスと自信を高めているのでハードにプッシュしてくるだろうし、オィットとヒュンダイ勢もハードにプッシュしてくる。このラリーで自分たちがどんなアプローチをするのかはこれから考えるが、最も素晴らしいラリーの1戦を楽しみにしているし、この素晴らしいマシンに乗るのは、いつだって喜びだよ。
Q:ヤリ、秋のフィンランドについて話してくれないか
J-ML:8月の終わりにラリーを走ったことはあるが、10月は一度もない。1年のこの時期は道は違う感じになる。この20年間、ずっと夏に開催されてきた。7月か8月の初めはそれなりに暑く、ルーズなグラベルに覆われる。涼しくなると少しウエットになって湿気も出てくるが、天気は分からない。ドライバーは、いつもとは違うグリップレベルに挑まなくてはならないだろう。セブも言ったように、砂利掻きの影響は注目点になると思うが(湿ったコンディションでは後ろの走行順が)有利になるとは限らない。日暮れ後の走行も注目点だろう。1990年代以来、設定されたことがない。
Q:カッレのパフォーマンスは充実していたか
J-ML:最初のステージでトヨタチームのドライバーを見ていた時、ものすごくハッピーだった。みんなトップレベルだったからね。残念ながらエルフィンはトラブルに見舞われ一気に流れが悪くなってしまった。セブは王者らしい走りで、選手権の勝ち方を分かっている。カッレは素晴らしかった。エストニアで自分は、新しいフライングフィンが誕生したと言ったが、今回の彼はこれまで以上にかっ飛んでいた。
Q:最終日の最初のステージのタイムをどう思ったか。
J-ML:自分のことを振り返ると、今回のようなコンディションでは自信があれば差をつけられる。もちろん、彼がマシンを道の上に留めることができるのか、怖かった。でも、彼は自分よりもよほど冷静だった。彼はしっかり感情を抑えることができるね!
Q:見るのが怖かったか
J-ML:ベルギーはベストなラリーにできずヒュンダイが高ポイントを獲得したから、今回は大量ポイントを獲得しなくてはならないことは分かっていた。それができなければ、フィンランドを迎える上でプレッシャーになってしまう。とてもナーバスになって見ていたし、何も起きずに道の上に残っていてくれと願っていた。自分がドライバーだった時よりも大変だったよ。
記者席からの質問
トム・ハワード(オートスポーツ、英国)
Q:カッレはラリードライバーとして完成したか
J-ML:スノー、グラベル、ターマックでドライブができれば、ドライバーとして完成されている。カッレは、どの路面でもパフォーマンスを出せる。
Q:世界王者になれる資質があるか
J-ML:昨年のことはさておき、フル参戦の初年で2勝目を飾れば、王者になれる資質があるはずだ。でも、セブは分かっていると思うが、選手権を勝つというのは別の話。多少の運も必要だ。すべてが噛み合わなくてはならないが、間違いなくカッレはキャリアのステップをもう一段上がった。彼が今後もたくさん勝つことは期待できるが、プレッシャーはかけすぎずステップバイステップで進んでもらいたい。
Q:セブ、彼のパフォーマンスをどう見るか、彼はひとつレベルが上がったか
SO:昨年からすでに、ワークスドライバーになりたての頃から彼は好ペースやポテンシャルを見せていた。そして成長も続けてきたが、本当に急成長を始めた。ほとんどのラリーでコンペティティブに戦っているし、脱帽だよ。彼のタイムは素晴らしいし、優勝にふさわしいどころじゃない。選手権を制したり、多くのラリーで勝利を収めるためには、様々な要素が必要であることはみんな分かっている。彼はどんなラリーでも勝てると思うが、将来どうなるのかとても楽しみ。彼はこれから、何年も活躍できるからね。
Q:カッレ、エストニアよりもいい勝利だったか
KR:答えるのは難しいね。エストニアは自分でも少し期待していたし、みんなも自分たちがあそこで速いと分かっていてマシンもよかった。でも、今回は自分たちのペースについては疑問だったし、自分でも良く分からなかった。今年は、新しいイベントがあり、みんながステージの経験がないから新しいノートを作って1ループ目はそれで走らなくてはならないというのは、自分にとっては助けになった。自分たちは、ほかのみんなが過去の経験がないラリーで、最初のループから速く走れることを見せられた。