2022年からハイブリッドの新規定ラリー1マシンと再生可能燃料が導入されるWRC。リエゾンは電動で走行し、SSでは再生可能燃料で走行するシステムだが、来季から導入されるこの100%再生可能燃料が、10月1〜3日に開催される今季のWRC第10戦ラリーフィンランドのSSで歴史的なデビューを飾ることになった。
イベントのタイトルスポンサーとなっているセクト・オートモティブのCEOで、自らもステアリングを握るマティアス・ヘンコラは、電動化はモータースポーツの持続可能性を高めるためのソリューションではないと主張する。
「ラリーが将来的にも継続する可能性を持つために、モータースポーツはサステナビリティの流れに追随しなくてはならない。だが電気自動車のパワーウェイトレシオはモータースポーツには最適とはいえず、特にラリーは、レーシングマシンに比べてダウンフォースが小さく、マシンには軽快さが求められる。炭素回収によって合成された燃料を使うことで、実質的にゼロエミッションで現在と同じようなラリーを楽しむことができる」とヘンコラ。
ヘンコラと自身が駆るミニ・クーパーR4は、10月1日、WRCフィンランドのSS1で世界初となるゼロエミッションでのエキシビション走行を行う。
「このマシンは技術的には何の変更も行わない。マシンのサウンドも変わらないし、排気ガスも発生する。だが、“大気中の二酸化炭素を回収し、これを太陽光や風力などのエネルギーを利用して精製された合成燃料”を使用することで、大気中の二酸化炭素量を増やすことなく、カーボンニュートラルの実現が可能になるというわけだ」
ヘンコラによれば、WRCで使用するために製造された世界初の100%再生可能燃料の缶がラリーフィンランド開催70周年の節目に合わせて納品されるのは、歴史的なイベントになるという。
「我々は、WRCフィンランドのタイトルスポンサーとしてのパートナーに、すぐに名乗りを挙げた。我々はすでに、数え切れないほどのフィンランド人がより簡単で持続可能な自動車に移行する手伝いをしているからだ。我々が目指すのは、モータースポーツでも同じような移行を導入し、私たちの住むESG(環境・社会・ガバナンス)の現実の中でモータースポーツ界が生き残るのを支援すること。我々にとって、ユバスキラで開催されるWRCは世界的に支持されている象徴的なイベントであり、我々フィンランド人は、100%カーボンニュートラルな方法でWRC初のSSを実施するという高いハードルを設定したいと考えている」
イベントプロモーターのAKKスポーツのCEO、リク・ビターも、このビジョンを共有しているという。
「セクト・オートモティブをパートナーに迎えるチャンスをいただいたことを、心から誇りに思っている。我々は、将来とサステナビリティに関して同じビジョンを持っている。ラリーフィンランドで設定されるステージの中の1本を、100%カーボンニュートラルのミニクーパーR4でオープンすることは、象徴以上の意味を持つ。これは、我々が一丸となって、我々のスポーツの環境面での課題をさらに高いレベルに引き上げる意志を持っていることを確証するものだ。なぜなら、これは将来にとって重要なことだから。この移行は始まっており、我々もそれに参加したい」