2022年はラリーレイド界にとって大きな節目を迎える。FIA(国際自動車連盟)とFIM(国際モーターサイクリズム連盟)の両格式で世界選手権が始動、その初年となる2022年は、全5戦で構成される。FIA世界ラリーレイド選手権には、6コンストラクター(BAHRAIN RAID XTREME、MD RALLYE SPORT OPTIMUS、OT3 RED BULL OFF-ROAD JUNIOR TEAM、PH-SPORT ZEPHYR、TOYOTA GAZOO Racing、X-RAID MINI JCW TEAM)、53クルーがエントリーした。シリーズの開幕を務めるのは、ラリーレイドカテゴリー伝統の一戦、ダカールラリーだ。
第44回目を迎える今回のダカールラリーは、3年連続でサウジアラビアを舞台に開催される。カー部門では主要4チームが総合優勝を争うほか、独立チームの活躍も注目される。ダカールラリーの主催者が、カー部門の展望をまとめている。
優勝候補筆頭は、ステファン・ペテランセル。1991年にバイクで初優勝して以来、「ムッシュ・ダカール」の愛称で知られるペテランセルは、9回の出場で通算14勝。2021年の勝利を含めて成功率は50%をわずかに下回る程度という驚異の強さを誇っている。
しかし、今回はペテランセルの参戦体制が一変した。ドライビングの技術も魅力も何ひとつ失われてはいないペテランセルは、自分史上最大のチャレンジに挑もうとしている。アウディが中期的なビジョンとしてダカールでの優勝を目指して初のフル電動パワートレーンの製造・開発に乗り出し、RS Q e-tronのドライバーとしてペテランセルとカルロス・サインツを起用したのだ。初戦から新型マシンでの結果を出すことを目標に掲げてはいるものの、長いスパンでプロジェクトを捉えている。ダカールの歴史を振り返ってみても、極めて野心的なプロジェクトが従来の技術を前に洗礼を受けることがほとんど。むしろ、最近のフォルクスワーゲンやプジョーなどは、技術革命を起こす際の忍耐力の重要性を強調しているほどだ。
今回、アウディの性能と信頼性に不安が残る以上、長年ハイラックスを作り続け、技術の安定性で高い評価を得ているトヨタ勢に注目が集まるのは必然だ。とはいえ、ナッサー・アル‐アティヤ、ジニエル・ド・ヴィリエール、ヤジード・アル‐ラジの3人にとっても、決して楽なレース展開となることはないだろう。ルールの変更により、タイヤの幅が広くなり(アル‐アティヤがパンクに悩まされる場面も減るだろう)、サスペンションのストロークが大きくなったことで、マシンは大きく生まれ変わった。ドライバーたちが新しいマシンで実戦を経験したのは、モロッコでの数百km。その車両で今回のダカールをスタートすることになる。
前回大会から登場したライバルのBRXも状況は同じ。このT1+という新しいカテゴリーに対応するために、レースよりもテストに多くの時間を費やすことになった。それでも、ドライバーを務めるセバスチャン・ローブ、ナニ・ロマ、オーランド・テラノバは、前回の5位入賞を上回るリザルトを目指し、気合いが入っている。
そんな中、X-Raidのバギーのポテンシャルは、タイトル争いに有利に働くと思われる。カーレースに転向して以来トップ5の常連であるヤクブ・リジゴンスキー(2019年、2021年4位)にステアリングを委ねることだけが理由ではない。ロシアのシルクウェイラリーを制したデニス・クロトフ、アルゼンチンのセバスチャン・ハルパーン(2018年9位)も、アップグレードを果たしたバギーで表彰台を目指している。
不安定な状況が続くことでレースで上位に食い込むことは少なくなったが、トップ5入りの可能性が現実味を帯びてきたコンペティターの存在も侮れない。2019年に6位に入っているチェコのマルティン・プロコップ(フォード・プロト)は今では充分にダカールの経験を積んできているほか、マシュー・セラドーリ(センチュリーCR6バギー)もトップ5を狙っている。
ダカールラリー2022年大会は2022年1月1日、ジェッダでスタートを迎える。