WRCタイトル獲得記録を更新し続け、今季7度目のチャンピオンとなったセバスチャン・ローブだが、もうひとつの世界選手権であるF1へのチャレンジに関しては、その唯一のチャンスを逃したとして、それがもう2度と訪れることはないだろうと語っている。
わずか12カ月前には、その前年の2008年にレッドブルでのテストに参加し、他のドライバーと変らぬペースで走行をしていたローブが、ジュニアチームであるトロロッソからアブダビGPにデビューするのではないかとF1のパドックは騒然としていた。
このウワサの根拠は、アブダビGPが09年のWRCシーズン終了後であり、シトロエンが「何をしようと彼の自由」と言っていたこと、アブダビが初開催でドライバーによる経験差が少ないことで、“条件が整ったイベント”だったためだった。
しかしながら、事前のGP2テストに参加したものの、FIAはローブに対してサーキットレースの経験が少ないとスーパーライセンスの発給を行わなかったため、F1デビューは幻となった。
ローブは、トロロッソでのデビューのチャンスを逃したときに、F1転向の機会はすでに過ぎ去ったとして、以後は転向の可能性を探ることを諦めたとコメントしている。
「可能性だけの問題じゃないんだ。あの時はレッドブルによるアイデアだったけど、計画を最後までやり遂げることはできなかった。全ては終わってしまった」とローブ。
「テストで楽しみのためのドライブをする機会がもらえるならば、間違いなく参加するけど、レースに出ることはあり得ないと思う」
ローブがこう語る背景には、今年WRCでの1年目を過ごしたF1チャンピオンのキミ・ライコネンがシーズンを通して、12戦中5回のトップ10フィニッシュで25点を獲得するに留まったことがあるという。
「キミを見ればわかるように経験を積むのは難しく、逆(WRCからF1)も同じだ。F1にステップアップしてくるドライバーは20歳そこそこ。それに対して自分は36歳、もう、違うことを考えないといけないかもね」