新規定のラリー1マシンを導入、ハイブリッドの新時代を迎えた2022年のWRC。1月15日にオーストリアで華々しくローンチを行い、先週にはラリー1マシン初の実戦となるラリーモンテカルロも開催されたが、依然として第9戦の開催国が「TBA(発表待ち)」のままという異例の事態となっている。
これまで、ラリー北アイルランドが英国ラウンドとしての開催に向けて意欲を見せてきたが、先週、英国のASNであるモータースポーツUKが、その活動を断念することが明らかになった。主な理由として、北アイルランド行政府の経済局からの資金支援を得られないことを挙げている。一方で、2023年に再びWRCカレンダーを招致する計画を支援し、ラリー北アイルランドのプロモーター代表を務めるボビー・ウィリス、WRCプロモーターと協力して、2019年以来となるWRCの英国戦復活を目指すという。
北アイルランドでのWRC英国戦復帰に向けて後押ししてきた英国民主統合党のイアン・ペイズリー議員は、英国をラリーの世界戦に残すための長年の試行錯誤は、2023年の枠を確保することで実を結ぶと「確信している」と語っている。
「北アイルランド行政がWRCを誘致しないのは、まったく馬鹿げた話。ラリーの時代が頂点を迎えようとしているこの機会を逃したくはなかったが、同時に、国にとって適切な時期に開催することで、必要な政府の支援や国民の支持を得られるようにしなくてはならない」とペイズリー議員。
「自分は正直に、自分たちは負けた。2022年には実現できないと言えるが、同時に可能性はあるということ、2023年には実現できるとも言える。これは、実現できることであり、しなくてはならないことなのだ」
一方、2022年WRC第9戦の開催国を「TBA」としたまま開幕を迎えたことについてWRCプロモーターのイベントディレクター、サイモン・ラーキンは「我々は、必要な限りの追求を続け、ラリー北アイルランドに対しできる限りのサポートと時間、労力を提供したいと考え、カレンダーにTBAを残した」と語る。
「ラリー北アイルランドの2022年の招致は実現しなかったが、主要関係者が議論を重ね、将来の選択肢のひとつとして捉えていることは、ポジティブなこと。そのために、たくさんの人が尽力している。その実現を今年、果たせなかったのは、とにかく残念」
現在、FIAのスポーツ副総裁を務める2001年のWRCコ・ドライバーズチャのピオン、ロバート・レイドは、自身の母国でもある英国でWRCが開催されないことは「残念だ」と語ったが、「モータースポーツUKに次の一手を打てということなのだろう」と今後の可能性を否定しなかった。
「WRCプロモーターは、英国でWRC戦を開催することに対して非常に協力的であることは明言している。英国は、カレンダーに入るために、候補イベントの状況をどのように整えていけるのかを確認する必要がある」とレイド。
ラリー北アイルランドが2022年のWRC開催を断念したものの、ロジスティックの関係上、第9戦に関して会期だけは8月18〜21日と固定されているため、「TBA」枠に開催国を埋めるまでの時間はそれほど残されていない。代替となる13番目の開催国を確保するのはWRCプロモーターの任務。選択肢もカレンダー上の解決策も持っているが、複雑な事情がないとは言えないようだ。
現状、代替として有力視されているのは、昨年も代替として開催されたベルギーのイープルとイタリアのモンツァ、そしてコルシカ。情報筋によれば、キプロス、チェコのラリーズリン、ラトビアのラリーリエパヤも名乗りを挙げているという。さらに、12戦のカレンダーに戻すのも選択肢のひとつ。収入減につながるためWRCプロモーターにとっては避けたいところだが、チーム陣には歓迎される可能性もある。
開幕戦ラリーモンテカルロをFIAのスポーツ副総裁として訪れていたレイドは会期中「TBAの枠を埋めるかどうか、かなり早い時期に決定する必要がある」と語っている。
さらに「プロモーターはいくつかの案を示すと思うので、そこから絞り込んでどの案を進めて行くのか、話し合っているところだと思う」
(Graham Lister)