世界ラリーレイド選手権(W2RC)第2戦アブダビ・デザートチャレンジ(ADDC)は3月10日にフィニッシュを迎え、アウディRS Q e-tronのステファン・ペテランセルが総合優勝を達成した。フル電動パワートレーンのアウディRS Q e-tronは今年のダカールで実戦デビューしており、わずか2戦目となるこのアブダビで29分49秒の差をつけて勝利で飾った。“ムッシュ・ダカール”の愛称で知られるペテランセルは、このADDCでも2002年に初めて勝利して以来、今回が7回目の勝利となった。
「荒れた砂丘では、適切なリズムをつかむのに苦労したこともあった」とペテランセルは振り返る。
「ペースはよかったし、リスクを負いすぎることもなかった。今回もRS Q e-tronで走るのは楽しかったよ。電動マシンでラリーレイドのイベントを勝利したことで、この短い期間でどれだけのことをやり遂げたのかを示した。自動車の新しい時代、ラリーレイドの歴史の新しいページだ」
ペテランセルはW2RCにノミネートしていなかったため、W2RC勢ではプロトタイプクラスのフランシスコ・ロペス・コンタルド(カンナム・マーベリック)が最上位フィニッシュ。これにより、コンタルドは選手権5番手に浮上した。
一方、W2RCのドライバーズ選手権でトップ3に立ってこのアブダビを迎えていたナッサー・アル‐アティヤ、セバスチャン・ローブ、ヤジード・アル‐ラジはメカニカルトラブルに悩まされる展開となり、1〜5位までに与えられる貴重なポイント(1〜5位まで)獲得に専念することとなった。
ダカールを制したトヨタ・ガズーレーシングのアル‐アティヤ(トヨタ・ハイラックス)は、ステージ1の砂丘で着地の際に強打し、このステージを続行することができなかった。しかし、そこから4ステージを連勝し、強さを証明。総合11位でのフィニッシュとなったが、選手権争いでのダメージは最小限に抑えてポイントを獲得、選手権2番手の座を死守している。
「ステージ1の後は、強い走りを取り戻し、残る4ステージをすべて獲った。まだ少し残念に思っているが、レースをやっていればこんなことも起こる」とアル‐アティヤ。
バーレーン・レイド・エクストリーム(BRX)のローブ(プロドライブ・ハンター)は選手権2番手でアブダビを迎えたが、今回は6位でのフィニッシュ。ここで28ポイントを獲得し、選手権争いではアル‐アティヤとの差はわずか1ポイントではあるものの、首位に浮上した。
「片側で着地で強打して2本パンクし、タイヤ交換のために3分をロスしたが、その後はすべて順調だった。初日にトランスミッションが破損して大幅にタイムをロスしたが、それを修復して走り切ることができた。その後の4ステージはいい走りができて、選手権ポイントも獲得できた。願っていたほどではないが、ステージ1でナッサーがリタイアしたことで選手権争いで首位に立てたので、ハッピーだ」とローブ。
「ADDCに参戦するのは初めてだったが、本当に特別で美しいイベント。どこにもないような砂丘に出会った。このようなコンディションの中で走るのはすごくエキサイティングだが、トリッキーだし大きなドロップがあるので簡単にクラッシュしてしまう。でも、経験を積むためには重要な日々だった」
世界ラリーレイド選手権スタンディングス(第2戦終了時点)
1 S.ローブ(BRX) 112
2 N.アル‐アティヤ(トヨタ) 111
3 Y.アル‐ラジ(トヨタ) 70
4 J.ライゴンスキー(ミニ) 71
5 F.ロペス・コンタルド(カンナム) 40