1960年代を中心に、ラリーやレースなど幅広いカテゴリーで活躍した英国出身のビクトル・ヘンリー・エルフォードが3月13日、米国フロリダの自宅で逝去した。享年86。
エルフォードは1935年、英国のロンドン生まれ。ポルシェの名手として知られたエルフォードは、究極のモータースポーツ万能選手だった。最も有名なのは1968年、ラリーモンテカルロで優勝を飾った1週間後に、デイトナ24時間を制した偉業だ。この時についた愛称が “Quick Vic”。F1にも13戦参戦し、デイトナ500への参戦経験もある。ル・マン24時間では常連のドライバーであり、スポーツカーの長距離レースにも数多く参戦した。1966年のツール・ド・コルスをポルシェ911で制するなどラリーやサーキットレースでの活躍はもちろん、1967年には初めてのラリークロスの大会で優勝し、多才ぶりを発揮した。ERCには1983年のイープルラリーの参戦が最後となり、競技引退後はフロリダで過ごしていた。
2019年、英国出身ドライバーとしてエルフォード以来(1967年/ポルシェ911S)のERCチャンピオンとなったクリス・イングラムは資金不足に悩まされていたが、そのイングラムを支えたのがエルフォードだった。恩師とも言うべきエルフォードの逝去にイングラムは「本当に象徴的な存在だった。彼の、ERCタイトル獲得という足跡を同じようにたどっていけたことは、これまでの自分の人生の中で最高の瞬間だった」と追悼の言葉を捧げた。
「本当に残念なのは、彼と直接会って自身の経験について話を聞くチャンスを得ることができなかったこと。それでも、彼の存在は自分だけでなく、多くのドライバーにとってこれからも刺激になる。ご遺族にお悔やみ申し上げます」
(Graham Lister)